原状回復工事の業者選び|相場を知って安心できる優良業者を選ぼう!
賃貸物件の退去に伴う原状回復工事で、適切な業者選びに頭を悩ませていませんか?
東京をはじめとする各地域で、信頼できる原状回復工事業者を見つけることは、コスト面でもスケジュール面でも重要な課題です。
この記事では、原状回復工事の費用相場から業者選定のポイント、見積書の見方まで、賃貸物件オーナーや管理会社が知っておくべき情報を徹底解説します。
また、国土交通省のガイドラインに沿った施工ができる業者募集のコツもお伝えします。
安心して任せられる適切な原状回復工事業者と出会えれば、入居者との費用負担トラブルを避けながら、次の入居者募集までをスムーズに進められるようになります。

目次
原状回復工事とは?その基本解説
原状回復工事の費用負担や範囲で頭を悩ませた経験はありませんか?
この章では、原状回復工事の基本概念から法的根拠、国土交通省のガイドラインまで、不動産オーナーや管理会社が知っておくべき基礎知識を解説します。
原状回復工事を依頼する前に、まずはその本質と重要性を理解しましょう。
- 原状回復の正確な定義と誤解されやすいポイント
- 貸主・借主間の費用負担の法的根拠
- トラブル防止のためのガイドライン活用法
- 物件価値維持と収益向上の観点からの重要性
(1) 賃貸物件の原状回復とは
原状回復とは、賃貸借契約終了時に物件を「入居時の状態から経年劣化や通常損耗分を差し引いた状態」に戻すことです。
多くの方が誤解する「新品同様に戻す」ことではありません。
賃貸物件を使っていれば自然と古くなったり、通常の使用で損耗したりする部分は、基本的に大家さん(貸主)が家賃収入の中から対応すべきものとされています。
原状回復工事の対象となるのは、借主の責任による損傷のみです。
例えば、壁紙の日焼けによる変色や家具設置による床の軽微なへこみは、経年劣化・通常損耗であり原状回復義務の対象外となります。
一方、タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷や臭い、落書きなどは借主の責任による損傷であり、原状回復工事の対象です。
原状回復工事を依頼する際は、経年劣化と借主責任による損傷を明確に区別できる信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。
見積書に「原状回復対象範囲の根拠」が明記されているかを確認し、適切な判断ができる原状回復工事業者に依頼しましょう。
(2) 原状回復義務の範囲と根拠
原状回復義務の範囲は「借主の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗・毀損」に限定されています。
この考え方は民法や判例法理に基づいており、賃貸物件における費用負担の重要な指針となっています。
民法では借主の「善管注意義務」(第400条)が定められており、借主は通常の注意をもって物件を使用・管理する責任があります。
一方、通常使用による損耗は賃貸借の本質的な要素であり、貸主がその回復費用を負担するのが原則です。
具体的な例を挙げると、クロスの耐用年数は一般的に6年とされています。
3年居住の借主がタバコ以外の理由で張替えが必要な場合、負担割合は最大でも50%(3年÷6年)までとなります。
また、引越し作業で生じた深いキズは借主負担ですが、日照による床の変色は貸主負担です。
原状回復の範囲を正確に理解することで、適正な費用負担と公平な原状回復工事が実現します。
業者選定時は「国土交通省ガイドラインに準拠した見積もり」を提出できる原状回復工事業者を選びましょう。
これにより、入居者とのトラブルを未然に防ぐことができます。
(3) ガイドラインの重要ポイント
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、原状回復に関する費用負担の基準を示した重要な指針です。
このガイドラインの内容を理解していれば、原状回復工事を依頼する業者を選ぶ際にも、信頼できる業者かどうかを見極めるための一つの判断材料として大いに役立ちます。
法的拘束力はないものの、裁判の際の判断基準として参照されることも多く、実質的な影響力を持っています。
ガイドラインは原状回復の考え方を明確にし、貸主・借主間のトラブル防止に大きく貢献しています。
ガイドラインでは「経過年数を考慮した負担割合の考え方」が示されており、例えば「借主負担額 = 原状回復費用 × (1 – 居住年数/耐用年数)」といった計算式が参考になります。
また、「入退去時の物件状況確認リスト」も提供されており、これを活用した記録が重要です。
信頼できる原状回復工事業者を選ぶ際は、このガイドラインを理解し適切に運用できる業者を選定することが、後のトラブル回避に直結します。
見積もり依頼時に「ガイドラインに沿った費用負担区分の提案」を求め、専門知識を持った業者かどうかを判断する材料としましょう。
(4) なぜ原状回復工事が必要か
適切な原状回復工事は、物件の資産価値維持、次の入居者確保のスピードアップ、そして貸主・借主間の公平な費用負担を実現するために不可欠です。
単なる「修繕」ではなく、物件の資産価値を守るための重要な投資と考えるべきでしょう。
質の高い原状回復工事は物件の魅力を高め、入居者満足度向上や長期的なメンテナンスコスト削減にもつながります。
さらに、明確な基準に基づいた工事は賃貸トラブルの防止にもつながるのです。
専門的な知識を持つ原状回復工事業者に依頼することで、オーナーの負担を軽減できます。
適切な原状回復工事を行った物件は内覧時の第一印象が良く、空室期間が平均2週間短縮されるという声も聞かれます。
特に店舗やオフィスでは、原状回復の品質が次のテナント決定までの期間に直接影響し、物件の収益性を左右するのです。
原状回復工事は「コスト」ではなく「物件価値を維持・向上させるための投資」と捉えるようにしましょう。
信頼できる業者による適切な工事は、長期的な収益性向上につながります。
現地調査無料・見積書の項目明細化・保証書発行の3点を満たす業者を選定することをおすすめします。

原状回復工事の費用と相場はどれくらい?
原状回復工事は、どれくらい費用がかかるのでしょうか。
この章では、原状回復工事にかかる費用相場について詳しく解説します。
本章で取り上げる主な内容は、以下のとおりです。
- 物件タイプ・間取り別の標準的な費用相場
- 工事内容ごとの単価と費用目安
- 適正価格を見極めるための見積書チェックポイント
- 追加費用が発生するケースと対策方法
(1) 間取り別の費用相場
原状回復工事の費用は、物件の広さや間取りによって大きく異なります。
一般的なアパート・マンションの場合、1㎡あたり3,000〜8,000円が目安となり、1Kで約10〜15万円、2LDKで20〜30万円程度が標準的な相場です。
物件面積が広くなるほど、壁紙や床材などの使用量や作業工数も比例して増加するため、費用も高くなります。
地域によっても費用は変動します。
特に東京などの都市部では、原状回復工事業者の人件費が高いため、地方と比較して1〜2割程度高額になる傾向です。
物件タイプによる違いも大きく、アパート・マンションは3,000〜8,000円/㎡であるのに対し、オフィスは5,000〜12,000円/㎡、店舗は8,000〜15,000円/㎡と高額です。
特に飲食店の場合は、厨房設備の撤去や特殊な清掃が必要になることが多く、工事範囲や内容によって費用が大きく変動します。
例えば、本格的な厨房設備がたくさんあるような重飲食の店舗ですと、坪単価で20万円~50万円、あるいはそれ以上かかるケースも珍しくありません。
原状回復工事業者に見積もりを依頼する際は、最低でも3社以上から相見積もりを取得し、価格帯の相場観を把握することが重要です。
極端に安価な見積もりには、品質低下や後からの追加請求といったリスクが潜んでいる可能性があるため注意しましょう。
(2) 工事種類別の費用目安
原状回復工事は複数の工種に分かれており、それぞれに費用相場が異なります。
特に頻度の高いクロス張替え、フローリング補修、ハウスクリーニングなどの工種別費用を把握しておくことが、見積もりの妥当性を判断する上で重要です。
工事種類によって必要な材料費、人件費、技術レベルが異なるため、費用相場に差が生じます。
同じ工種でも使用する材料のグレードによって価格が2〜3倍変わることもあるので注意が必要です。
主な工事種類別の費用目安としては、壁紙(クロス)張替えが平米あたり800円〜1,500円、床クッションフロア張替えが平米あたり2,800円程度〜、フローリング張替えが畳あたり2万円〜6万円です。
また、ハウスクリーニングは1K・1Rで25,000円〜40,000円、畳表替えは帖あたり3,500円〜4,500円程度、壁の穴補修(小)は箇所あたり1万円〜3万円程度が相場です。
ボード交換が必要な大きな穴の場合は6万円程度になることもあります。
原状回復工事業者に依頼する際は、工事内容を細分化して見積もりを取得し、各工種の単価が相場内に収まっているか確認しましょう。
また、将来の入居者募集を考慮し、壁紙は「防汚加工」、床材は「耐磨耗性」など、入居者募集に有利な材料選定も検討するとよいでしょう。
(3) 見積書で確認すべき項目
原状回復工事の見積書では、工事範囲の詳細、単価と数量、材料のグレード、追加費用の発生条件など、あいまいな表現を排除した具体的な明細が必須です。
「一式」表記が多い見積書は後からのトラブルにつながりやすいため要注意です。
見積書の曖昧さは後からの追加請求や認識の相違によるトラブルの原因となります。
詳細な見積書は、原状回復工事業者の透明性と専門性を示す重要な指標であり、工事の質を左右する要素です。
見積書をチェックする際の具体的なポイントは以下のとおりです。
- 工事範囲と材料の明確さ: 「一式」ではなく、具体的な範囲・材料名・数量が記載されているか
- 費用の内訳: 材料費、施工費、廃棄物処理費などが区分されているか
- 追加料金の条件: 発生条件と承認手続きが明示されているか
- ガイドライン準拠: 国土交通省ガイドラインに基づいた費用負担が反映されているか
原状回復工事業者を選定する際は、「見積書の項目明細化」を必須条件とし、複数業者の見積もりを「同一条件で依頼」することで適切な比較が可能になります。
また、見積書の説明時に専門用語をわかりやすく解説してくれる業者は、コミュニケーション能力が高く信頼できる傾向があります。
(4) 費用が高くなるケースとは
原状回復工事では、特殊な汚れや破損がある場合、緊急性が高い場合、築年数の古い物件などで予想外の高額費用が発生するリスクがあります。
これらのリスク要因を事前に把握し、対策を講じておくことが賢明です。
通常の使用を超えた損傷や特殊な状況では、追加作業や特殊技術、高額材料が必要となるため費用が増加します。
また、短納期の工事は人員を集中配置する必要があり、割増料金が発生することがあります。
原状回復費用が予想より高額になりやすい代表的なケースとしては、次のようなものがあります。
- ペットによる損傷・臭い: 柱の傷、カーペットのシミ、ペットの臭い、タバコのヤニ汚れ
- 水漏れ・カビ: 床下腐食、広範囲のカビ発生
- 厨房の重度な汚れ: 飲食店の頑固な油汚れ
- 緊急案件: 退去期限間近の特急工事
- 隠れた損傷: 工事開始後に発覚する壁内配管の破損など
費用増加のリスクを回避するためには、原状回復工事業者による現地調査を必ず実施してもらい、潜在的な問題点を事前に把握することが重要です。
契約書には「追加料金の発生条件と上限」を明記し、事前承認手続きを定めておきましょう。
また、可能であれば余裕を持ったスケジュールで工事を計画し、急ぎ対応による割増料金を避けることも有効です。

優良な原状回復業者を選ぶポイントは?
原状回復工事をスムーズに進め、満足のいく結果を得るためには、信頼できる業者選びが欠かせません。
この章では、信頼できる原状回復工事業者の選定方法について詳しく解説します。
優良な原状回復業者を選ぶポイントは以下の5つです。
- 業者の許認可・資格・実績などの客観的判断基準
- 適切な見積もり比較の手法と陥りやすい落とし穴
- 施工実績と口コミ情報の効果的な確認方法
- 迅速な対応が期待できる業者の特徴
- アフターフォローと保証内容の重要性
(1) 業者選定で見るべき箇所
信頼できる原状回復工事業者を選ぶ際には、いくつかの重要な側面から総合的に評価することが不可欠です。
業者選定は、最終的な工事の品質、費用、そしてスケジュール通りに完了するかどうかといった、原状回復工事の成否を大きく左右する最も重要な判断となります。
具体的にチェックすべき項目として、まず公的な許認可や資格の有無が挙げられます。
例えば、一定規模以上の工事(500万円以上)であれば建設業許可が必要で、解体材などを運搬するには産業廃棄物収集運搬許可が求められます。
また、建築士や施工管理技士といった専門資格を持つスタッフが在籍しているか、万が一の事故に備えて請負業者賠償責任保険に加入しているかも、業者を選ぶ上での安心材料となるでしょう。
さらに、原状回復工事特有のポイントとして、国土交通省が定めるガイドラインへの理解度も重要です。
このガイドラインに精通し、適切な知識と豊富な経験を持つ業者を選ぶことが、後々のトラブルを回避につながります。
業者を選定する際には、以下のようなポイントを「信頼できる業者選定チェックリスト」としてまとめ、複数の業者を客観的な視点で比較検討することをおすすめします。
各項目について5段階評価などを設けるのも良いでしょう。
- 許認可・資格: 建設業許可、産業廃棄物収集運搬許可、関連資格保有者の在籍、賠償責任保険の加入状況
- 実績と専門性: 豊富な施工実績(特に類似物件)、国土交通省ガイドラインへの深い理解
- 対応力と透明性: コミュニケーション能力の高さ、現地調査の丁寧な実施、見積書の詳細さと明瞭さ
特に、「現地調査を丁寧に行うか」「見積書が詳細で分かりやすいか」「国土交通省ガイドラインを理解し、それに沿った提案ができるか」といった点は、業者を見極める上で必須の確認事項といえます。
これらの項目をしっかりと満たしている原状回復工事業者であれば、不動産オーナーとしても安心して工事を任せることができるでしょう。
(2) 見積もり比較時の注意点
見積もりを比較する際は、単純な合計金額だけでなく、工事範囲や材料のグレード、保証内容といった複数の視点から総合的に評価することが重要です。
見積書は、その原状回復工事業者の仕事の透明性、専門性、そして誠実さを映し出す鏡と言えるでしょう。
複数業者から提出された見積書を比較検討する際には、特に以下のポイントを重点的に確認してください。
- 工事範囲と数量の具体性: 「工事一式」といった曖昧な表記ではなく、「壁紙張替え(6畳分)」のように具体的な作業範囲と数量が明記されているか
- 費用の内訳: 材料費・施工費・廃棄物処理費などが明確に区分されているか
- 追加料金の条件: どのような場合に追加料金が発生するのか、その際の承認手続きは明確か
- ガイドラインへの準拠: 国土交通省のガイドラインに基づいた、適切な貸主・借主間の費用負担区分になっているか
複数業者から見積もりを取る際は、標準化された見積もり依頼書を作成し、全ての業者に同じ条件で依頼することが、正確な比較を行うための条件です。
もし見積もり内容に大きな価格差がある場合は、その理由を各業者に確認し、不当なコストカットや手抜き工事のリスクがないかを見極めることが重要です。
極端に安い見積もりには、品質の低下や後からの追加請求といったリスクが潜んでいる可能性もあるため、常に価格と品質のバランスを考慮した総合的な判断を心がけましょう。
(3) 実績と口コミの確認方法
原状回復工事業者の実績や口コミを確認する際は、単に数だけでなく内容の質や具体性、情報源の信頼性を重視することが重要です。
インターネット上の情報だけでなく、直接的なコミュニケーションや紹介・推薦情報も積極的に活用しましょう。
効果的な確認方法としては、業者のウェブサイトやパンフレットで自社物件と同種のビフォーアフター写真付き実績事例を確認することが挙げられます。
特にアパート、マンション、店舗、オフィスなど、自分の物件タイプに合った施工実績があるか注目しましょう。
Google評価などの口コミサイトでは、特に施工品質やコミュニケーション、トラブル対応に関する評価を確認します。
口コミの真偽を見抜くコツとしては、悪評に具体的なエピソードが含まれているかどうかに注目し、Google評価よりも不動産管理会社からの紹介実績を重視するとよいでしょう。
また、業者への直接的な質問を通じて、専門知識や対応力を見極めることも効果的です。
信頼できる知人や不動産管理会社からの紹介があれば、それは業者選定における貴重な情報源です。
(4) 対応が早い業者の特徴
対応の早い信頼できる原状回復工事業者は、以下のような特徴があります。
- 初期対応の目安: 問い合わせ後、概ね24時間以内に現地調査の日程調整を提案する
- 見積もり提出の速さ: 現地調査後、概ね48時間以内に詳細な見積書を提示する
- 施工体制: 自社施工チームを保有し、外注に頼りすぎない体制である
- 計画性: 工事の工程表を日単位で具体的に作成し、共有できる
- 連絡手段の確保: LINEやメールなど、状況に応じた複数の連絡手段を用意
特に店舗やオフィスの原状回復工事では、テナントの退去から次の入居者募集や事業開始までの期間が限られているため、業者の対応スピードは極めて重要です。
業者を選定する際には、初期対応の速さだけでなく、実際の工事スケジュールについても具体的な工程表の提示を求め、その計画が現実的かつ詳細であるかを確認しましょう。
また、契約書に「工事完了予定日」や「遅延時のペナルティ条項」を明記することで、期限を守るという業者側の意識を高めることも有効な手段です。
「退去立会いから48時間以内の着工」や「7日以内の完工」といった明確なスピード基準を持つ業者は、信頼性が高いといえるでしょう。
(5) 保証内容を必ずチェック
原状回復工事を依頼する際、業者の保証内容は選定における非常に重要な判断材料です。
万が一、工事後に不具合が発見された場合の対応は、不動産オーナーや管理会社にとって大きな懸念事項であり、しっかりとした保証があるかどうかで安心感が大きく変わってきます。
保証内容を確認する際には、以下のポイントをチェックしましょう。
- 工事保証書の有無: 正式な保証書が発行されるか
- 保証期間: 一般的には1年程度が目安。短すぎる場合は注意が必要
- 保証範囲: 何が保証の対象となるか(例:施工不良、使用材料の欠陥など)
- 免責事項: 保証対象外となるケース(例:経年劣化、天災、使用者の過失によるものなど)
- アフターフォロー: 定期点検の実施有無、不具合発生時の連絡窓口や対応体制
- メーカー保証との区別: 設備や材料自体のメーカー保証と、工事業者による施工部分の保証(自社保証)を明確に区別して理解
これらの保証内容を比較検討する際には、「保証・アフターサービス比較表」などを作成し、各業者の条件を一覧で比較できるようにすると評価しやすくなります。
少なくとも、以下の基本的な条件を確認しましょう。
- 工事完了から6ヶ月以上の瑕疵保証
- 施工不良に対する無償での修理対応
- 万が一の際の24時間以内程度の緊急対応窓口の設置
これらの保証内容を必ず契約書に明記することが、後のトラブルを防ぐために非常に重要です。

次期募集を有利にするには?
原状回復工事は、物件の魅力をさらに高め、価値を向上させる絶好のチャンスでもあるのです。
この章では、原状回復工事を単なる修繕として捉えるのではなく、次の入居者募集を成功させるための戦略的な投資という視点から解説します。
次期募集を有利にするためには以下の方法があります。
- 入居希望者の目を引く現代的な設備の選定方法
- 物件の魅力を最大化するデザインと素材選択の基準
- 内覧時の第一印象を決める清潔感と安心感の演出方法
- 空室期間短縮によるオーナー収益向上の具体的手法
(1) 入居者ニーズを反映した設備
原状回復工事は単なる「元通りに戻す」作業ではなく、物件の価値を高める絶好の機会です。
入居者の最新ニーズを反映した設備選定を行うことで、物件の競争力が大幅に向上し、空室期間の短縮と家賃維持・向上に直結します。
住宅設備のトレンドは5年程度で大きく変化するため、退去のタイミングで設備更新を検討することは賢明な選択です。
特に人気が高い設備として、住宅では以下が挙げられます。
- 宅配ボックス
- オートロック
- 浴室乾燥機
- ウォシュレット
- 掃除のしやすいキッチン設備
- 高速インターネット環境
店舗やオフィスでは、「高速通信環境」「省エネ設備」「セキュリティシステム」などが差別化ポイントとなり、テナント決定までの期間短縮に貢献します。
原状回復工事業者選びでは、単なる修繕だけでなく「入居者目線でのバリューアップ提案」ができる業者を選ぶことがポイントです。
施工実績が豊富な業者ほど市場感覚が鋭く、「この設備を更新すると次の入居が決まりやすい」という提案ができます。
費用対効果の高い設備更新は、通常6ヶ月〜1年の投資回収期間を考慮しても十分にメリットがあるでしょう。
(2) 魅力を高めるデザイン・素材選び
原状回復工事における素材選びは、物件の魅力を最大化する重要な要素です。
単に「元通りに戻す」という発想から一歩進み、現代のデザイントレンドと耐久性・機能性のバランスを考慮した戦略的な選択が求められます。
物件の第一印象は内覧時の成約率に大きく影響し、特に壁紙(クロス)や床材、照明などの基本的な内装要素が果たす役割は極めて大きいものです。
最近のトレンドとしては、「ナチュラル」「北欧風」「モノトーン」などのデザインが人気を集めています。
床材は温かみのあるフローリング、特に耐久性の高いフロアタイルが主流です。
壁紙については、単色だけでなく一部にアクセントクロスを採用することで、空間に深みと個性を演出できます。
素材選びのポイントとして、壁紙は「防汚加工」「消臭機能」、床材は「耐磨耗性」「防音性」を備えたものが入居者に好まれる傾向があります。
原状回復工事業者を選ぶ際は、「防汚・防臭・調湿機能」などの付加価値を持つ高機能素材の提案ができるかどうかも確認しましょう。
コストは通常の素材より2〜3割高くなりますが、入居者にとっての魅力は大幅に向上し、募集期間短縮による空室損失の減少で十分にカバーできます。
定番色に加え、トレンドを取り入れたアクセントの部分的な採用も効果的です。
(3) 清潔感と安心感を与える仕上げ
原状回復工事における「仕上げ」の品質は、入居希望者の心理に強く影響します。
丁寧な仕上げが施された物件は清潔感と安心感を与え、内覧時の成約率を大きく向上させる決定的な要素です。
入居希望者は内覧時、無意識のうちに「この物件は丁寧に管理されているか」を細部から判断しているのです。
特に重視すべきポイントとして、水回りやキッチンなどの衛生面に直結する箇所、壁と床の接合部や窓枠などの細部の仕上がりが挙げられます。
これらの細かい部分は、物件全体の管理状態とオーナーの姿勢を表すバロメーターとして機能します。
清潔感を高める具体的な作業としては、以下が重要です。
- 水回りの目地や隙間の黒ずみ・カビ完全除去
- キッチン設備の油汚れ・水垢の徹底除去
- 壁紙の継ぎ目やコーナー部分の丁寧な施工
- フローリングの傷・凹み修復
原状回復工事業者選定時には、完工前の「仕上げ確認リスト」の有無や、ハウスクリーニング専門スタッフの配置状況、過去の施工事例で「仕上げの細部」がわかる写真の提供ができるかを確認しましょう。
コスト削減のために仕上げの品質を犠牲にすることは、結果的に募集期間の長期化や家賃の値下げ交渉につながるため避けるべきです。
最終検査時には入居者目線で細部まで確認することが重要です。

原状回復工事の費用削減術とは?
原状回復工事の費用をできるだけ抑えたい、でも品質は落としたくないと考えるオーナー様は多いでしょう。
この章では、賃貸物件の原状回復工事において、必要な品質を確保しながらも賢く費用を抑える方法について解説します。
原状回復工事の費用削減術には以下の内容があります。
- 業者に依頼すべき工事と自己対応可能な範囲の見極め方
- 複数業者からの相見積もりで適正価格を実現する手法
- 過剰工事や不必要な範囲の判断基準と回避方法
- 契約前の確認事項と追加費用を防ぐ契約書の作成方法
(1) 自分でできるDIY補修範囲
原状回復工事の費用を効果的に削減するには、専門業者に依頼する範囲と自分でDIY対応できる範囲を見極めることが重要です。
特に軽微な補修や汚れの除去などは、ホームセンターで手に入る材料と基本的な道具でも十分対応可能です。
例えば、壁の釘穴やピン穴のパテ埋め、クロスの軽微な汚れ清掃、フローリングの浅い傷の補修、設備機器の表面的な汚れ除去、網戸の張替えなどは比較的容易に自分で行えます。
こうした作業を原状回復工事業者に依頼すると、材料費だけでなく人件費や諸経費が加算されるため、費用が想像以上に高くなります。
一方で、壁紙の全面張替え、床材の交換、設備機器の取り付け・取り外し、水回りの配管工事、構造に関わる補修、電気工事などは専門知識と技術が必要なため、必ず信頼できる原状回復工事業者に依頼すべきでしょう。
DIYと業者依頼を適切に組み合わせるには、まず退去時に物件の状態を詳細に確認・記録し、補修が必要な箇所をDIY可能範囲と業者依頼範囲に分類します。
DIY作業の質は物件価値や次期入居者募集に影響するため、自信がない場合は無理せず専門業者に依頼することも検討しましょう。
(2) 複数業者へ相見積もり取得
原状回復工事の費用を適正化する最も効果的な方法は、複数の業者から同一条件での相見積もりを取得することです。
業者によって経営方針、得意分野、原価構造、外注比率などが異なるため、見積額に15〜30%以上の差が生じることも少なくありません。
相見積もりを取得する際は、最低でも3社以上の原状回復工事業者に依頼し、業界の相場感を把握することが大切です。
その際、全ての業者に同じ工事範囲と仕様を伝えるため、標準化された見積もり依頼書を作成するとよいでしょう。
材料のグレード、施工方法、工期なども統一して依頼し、現地調査も同条件で実施してもらうことがポイントです。
見積書を比較する際は、総額だけでなく項目ごとの単価と数量を確認します。
「一式」という曖昧な表記が多い見積書は詳細の明示を求め、材料費・施工費・廃棄物処理費などの内訳比率(理想は5:3:2)を確認しましょう。
極端に安い見積もりには、材料グレードの低下や手抜き工事、後からの追加請求などのリスクがある可能性も考慮する必要があります。
業者選定では価格だけでなく、見積書の詳細さ、提案内容の質、対応スピード、アフターサービスなども評価に含めて総合的に判断することで、コストパフォーマンスの高い原状回復工事が実現できます。
(3) 不要な工事の見極め方
原状回復工事の費用削減で最も効果的なのは、「必要のない工事」を発注しないことです。
国土交通省の原状回復ガイドラインを正しく理解し、経年劣化や通常損耗と借主責任による損傷を適切に区別することが重要です。
例えば、クロスの日焼けによる変色は経年劣化として貸主負担であり、全面張替えが不要な場合もあります。
また、家具設置によるフローリングの軽微なへこみは通常損耗として貸主負担です。
高所や死角の天井・壁の塗装、部分交換で済むものの全体交換、居住年数が長い場合の減価償却未考慮の工事なども、見直しの余地があります。
不要な工事を見極めるには、物件の築年数と設備・内装材の耐用年数を確認し、居住期間中の経年劣化分を考慮しましょう。
また、「通常の使用方法」の範囲内か否かの判断や、次の入居者募集に実質的に影響するかどうかの検討、部分補修で対応可能な範囲の特定も重要です。
適切な原状回復工事範囲を判断するためには、退去時の立会い検査を丁寧に行い、経年劣化・通常損耗と借主責任による損傷を明確に区別して記録しましょう。
また、原状回復工事業者に「ガイドラインに沿った見積もり」を依頼する旨を明示し、見積書に「経年劣化分の控除」が反映されているか確認することが大切です。
(4) 契約書内容の事前確認
原状回復工事の追加費用や想定外の出費を防ぐためには、契約前に契約書の内容を詳細に確認することが不可欠です。
適切な契約書作成は、費用オーバーランの防止と工事品質の確保に直結します。
契約書で特に確認すべき項目は以下のとおりです。
- 工事内容・範囲の詳細記述
- 使用材料の具体的な品番・グレード・数量、工事期間と完了予定日
- 追加工事発生時の承認手続きと費用算定方法
- 支払い条件
- 完工検査の方法と基準
- 保証期間と保証範囲
注意すべき契約条項は、以下が挙げられます。
- 「現場の状況により金額変動あり」などの曖昧な表現
- 「追加工事は実費請求」という無制限な追加費用条項
- 発注者側に過度に不利な免責事項
- 契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)の期間が極端に短い場合
適切な契約書を作成するためには、見積書の内容をそのまま契約書に反映させ、両者の整合性を確保することが大切です。
追加工事に関しては「書面による事前承認」を必須とする条項を入れ、工事完了の定義と検査方法を明確にしましょう。
また、使用材料のグレードダウンがないよう、具体的な製品名・品番まで明記することも重要です。
契約書の読み合わせを丁寧に行い、曖昧な表現や不明瞭な点は質問・修正しておくことで、後々のトラブルを防げます。

原状回復工事の流れと期間は?
退去が決まってから次の入居者募集まで、時間は限られています。
この章では、原状回復工事の進め方と各工程にかかる期間について詳しく解説します。
この章で解説する主な内容は以下のとおりです。
- 原状回復工事の依頼から完了までの標準的な手順
- 物件タイプ別の標準工期と工程表の見方
- スムーズな工事進行のための退去立ち会いのコツ
- 工事の品質を確保するための中間・最終確認ポイント
(1) 依頼から工事完了までの手順
原状回復工事は入居者の退去から次の入居者募集までを円滑に進めるための重要な手順です。
一般的な流れは、「退去予告→業者選定→見積り取得→契約締結→退去立会い→工事着工→中間確認→完工検査→引き渡し」という段階を踏みます。
まず退去予告は、賃貸借契約に基づき通常3〜6ヶ月前に行います。
次に原状回復工事業者選定と見積もり取得を行いますが、この際は複数の業者から相見積もりを取るのが賢明です。
特に東京などの都市部では多くの原状回復工事業者があり、比較検討が可能です。
業者決定後は工事請負契約を締結し、退去立会いで物件の状態を確認します。
工事着工は通常、退去後1〜3日以内に始まります。
工事中は必要に応じて中間確認を行い、特に大規模な原状回復工事では重要です。
完工後は発注者による検査を実施し、問題がなければ物件の引き渡しと工事代金の精算を行います。
円滑な進行のためには、事前に詳細なスケジュール表を作成し、原状回復工事業者との連絡方法を複数確保しておくことが大切です。
各段階での確認事項をチェックリスト化し、工程表を共有して進捗を定期的に確認することで、予定通りの完了を実現できます。
(2) 一般的な工事期間の目安
原状回復工事にかかる期間は物件タイプや規模、工事内容によって大きく異なります。
アパートやマンションなどの住居用物件では比較的短期間で完了しますが、オフィスや店舗など商業施設では長期化することが多いため、適切な計画が必要です。
住居用物件の場合、1K・1DKで3〜7日程度、2LDKで5〜10日程度、3LDK以上で7〜14日程度が一般的な目安です。
一方、商業施設では100坪未満のオフィス・店舗で約2週間〜1ヶ月、100坪以上では約1ヶ月〜2ヶ月程度かかります。
特にスケルトン解体工事は約1ヶ月程度、居抜き物件の清掃・軽微な補修は約1週間程度を見込んでおくとよいでしょう。
工期に影響する主な要因としては、工事範囲の広さや内容の複雑さ、物件の損耗度合い、原状回復工事業者の人員体制や繁忙期かどうか、ビル管理会社による工事時間の制限などが挙げられます。
特に1月〜4月、9月、12月は多くの原状回復工事業者が繁忙期となるため、この時期は工期が延びる可能性を考慮しておくべきです。
工期遅延のリスクを減らすためには、余裕を持ったスケジュール設定と、契約書への完了予定日やペナルティ条項の明記が有効です。
特に次の入居者が決まっている場合は、工期厳守の重要性を業者と共有しましょう。
(3) 退去立ち会いのポイント
退去立会いは原状回復工事の範囲と費用を大きく左右する重要なステップです。
この段階で物件の状態を正確に把握し、必要な工事内容を明確にすることで、適切な費用見積りと円滑な工事進行が可能になります。
退去立会いでは、貸主(オーナーまたは管理会社)と借主の双方が立ち会い、壁紙(クロス)の傷や汚れ、フローリングのキズ、設備の動作状態など細部にわたって確認します。
特に重要なのは、経年劣化・通常損耗と借主の故意・過失による損傷を区別し、国土交通省のガイドラインに沿って費用負担を明確にすることです。
退去立会いをスムーズかつ効果的に行うためには、まず時間に余裕を持つことが大切です。
例えば1Kのお部屋でも、隅々まで確認するには30分~1時間程度は見ておくとよいでしょう。
そして、国土交通省のガイドラインでも提供されている「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト」のようなチェックリストを活用し、漏れがないように体系的に確認作業を進めることをおすすめします。
デジタルカメラやスマートフォンで損耗状況を写真記録し、日付・時間が残るよう設定することも重要です。
確認した内容は書面にまとめ、修繕箇所と費用負担区分について借主と貸主の双方が納得できる形で合意し、署名・押印を交わします。
この記録は原状回復工事業者への正確な発注内容の根拠となるため、丁寧かつ詳細に行うことで、後のトラブルを防ぎ、適正な工事実施につながります。
(4) 工事中の確認事項リスト
原状回復工事の品質とスケジュールを確保するためには、工事中の定期的な確認が欠かせません。
特に「後から見えなくなる部分」や「修正が難しい部分」については、適切なタイミングでの現場確認が重要です。
確認のポイントとしては、まず着工時に工事範囲・内容の最終確認と使用材料・設備の現物確認を行います。
次に解体・撤去工事後は隠れていた損傷の有無を確認し、下地処理段階では壁・床の処理状態のチェックです。
特に水回りの防水処理は入念に確認しましょう。
仕上げ材施工前には使用する壁紙や床材が契約通りのものか確認し、仕上げ工事後には継ぎ目やコーナー部分の処理状態をチェックします。
完工前の最終確認では、全体的な仕上がり状態、傷・汚れ・施工ミスの有無、設備の動作確認、ハウスクリーニングの完了状況などを入居者目線で細部まで確認しましょう。
これにより、次の入居者募集時に良い印象を与える高品質な仕上がりを実現できます。
効果的な確認のためには、事前に「工事中確認チェックリスト」を作成し、信頼できる原状回復工事業者に定期的な報告を求める体制を構築しておくことがポイントです。
写真や動画での進捗報告を受け、問題発見時の連絡方法と判断を明確にしておくことで、迅速な対応が可能になります。

原状回復で起こりやすいトラブルと対策は?
どんなに気をつけていても、原状回復工事には思わぬトラブルがつきものです。
この章では、原状回復工事において発生しやすいトラブルの実例と効果的な対策方法について解説します。
原状回復でのトラブルと対策には主に以下の内容があります。
- 実際に多発している原状回復工事トラブルの種類と事例
- 国土交通省ガイドラインを活用した費用負担の適正化方法
- 修繕範囲をめぐる認識の相違を未然に防ぐ手法
- 契約段階での重要チェックポイントと問題回避策
(1) よくあるトラブル事例
原状回復工事では様々なトラブルが発生します。
最も多いのは「費用負担区分」に関するもので、壁紙の変色が経年劣化か借主責任かをめぐる争いやタバコのヤニ汚れの清掃費用負担割合、ペットによる傷や臭いの除去費用などが典型例です。
これらは貸主・借主間で見解が分かれやすい問題です。
次に「工事品質」に関するトラブルも頻発します。
クロスの継ぎ目の仕上がりが粗い、部分補修の色合いが元の壁紙と合わない、ハウスクリーニングが不十分など、原状回復工事業者の施工品質に起因する問題です。
「工期」に関するトラブルも見逃せません。
約束した完了日を過ぎても工事が終わらない、次の入居者が決まっているのに間に合わないといった事態は、特に東京などの都市部で物件の引き渡しが遅れると大きな問題になります。
さらに「追加費用」のトラブルも多く、見積もりになかった項目の追加請求や「現場の状況により」という理由での費用増加、工事中に発見された隠れた損傷の修繕費用など、予想外の出費に関する問題が挙げられます。
これらのトラブルを防ぐには、入居時・退去時の物件状態を写真や動画で詳細に記録し、国土交通省ガイドラインに沿った費用負担区分を明確にすることが大切です。
複数の原状回復工事業者から相見積もりを取得し、契約書に工事内容や期間、追加工事発生時の手続きを明記しておくことも効果的です。
(2) 高額請求を避けるには?
原状回復工事で高額請求を避けるためには、オーナー自身が明確な意思を持ち、業者と毅然とした交渉を行い、そして全てのやり取りを記録として徹底的に残す必要があります。
受け身の姿勢ではなく、主体的に関わることで、不必要な費用の発生を防げます。
なぜなら、業者の提案を鵜呑みにしたり、費用や工事範囲について曖昧な合意をしてしまうと、気づかぬうちに不必要な工事が含まれたり、不当な費用が上乗せされたりするリスクが高まるからです。
また、口頭でのやり取りだけでは、後になって「言った言わない」のトラブルに発展し、不利な状況に立たされる可能性もあります。
まず、工事範囲や予算上限は具体的に伝え、「お任せ」は避けましょう。
追加工事の提案には、必ず書面での詳細な説明と見積もりを求め、安易に口頭で承諾しないことが肝心です。
費用交渉では、ガイドラインや相場などの根拠を示し、建設的な話し合いを心がけます。
そして、費用や工事範囲に関する重要なやり取りは、全てメールや書面で記録を残しましょう。
疑問点は遠慮なく質問し、納得いくまで契約しない姿勢も大切です。
したがって、原状回復工事で不本意な高額請求を確実に避けるためには、オーナー自身が主体的に情報を収集・判断し、業者とは対等な立場で明確なコミュニケーションを取り、そして全てを証拠として記録するという姿勢を貫くことが不可欠です。
これらの心構えと交渉術を実践することで、適正な価格での工事実現に繋がり、安心して原状回復工事を進めることができるでしょう。
(3) 修繕範囲に関する見解の相違
修繕範囲に関する貸主と借主の見解の相違は、入念な事前準備と明確なコミュニケーションによって未然に防ぐことができ、万が一発生した場合でも、冷静かつ客観的な対応で円満な解決が可能です。
感情的な対立を避け、建設的な解決を目指す姿勢が重要です。
なぜなら、見解の相違の多くは、入居時の物件状態の記録不足、契約内容の曖昧さ、そしてお互いの原状回復に対する理解不足から生じるからです。
これらが原因で、退去時にどちらの責任で修繕すべきか、どこまで修繕すべきかという点で意見が食い違い、トラブルに発展しやすくなります。
まず、契約時に原状回復の基準や特約を具体的に説明し、入居時には物件状態を双方で確認・記録します。
例えば、「ペットによる傷は借主負担」など具体的なケースを契約書に明記し、入居時の写真記録を徹底しましょう。
万が一、退去時に見解が分かれた場合は、感情的にならず、記録やガイドラインを基に冷静に話し合いましょう。
解決が難しい場合は、消費生活センターなど第三者の専門機関への相談も有効な手段です。
したがって、修繕範囲に関する見解の相違を効果的に防ぎ、万が一発生した場合でも適切に対処するためには、契約段階での明確な取り決めと入念な記録、そしてトラブル発生時の冷静かつ客観的なコミュニケーション、さらには必要に応じた第三者への相談が有効です。
これらの準備と対応を徹底することで、貸主・借主双方にとって公平で納得のいく原状回復を実現できるでしょう。
(4) 契約前に確認すべき重要事項
原状回復工事の契約締結は、全ての合意事項を法的に固める最終段階であり、抜け漏れがないか「契約書最終チェックリスト」を用いて徹底的に確認することが、将来のトラブルを未然に防ぐ最も確実な方法です。
この最終確認が、安心して工事を任せるための最後の砦となります。
なぜなら、一度契約書に署名・捺印すると、記載された内容が双方の合意事項として法的な効力を持ち、後から異議を唱えることが極めて困難になるからです。
チェックリストによる機械的な確認は、見落としや思い込みを防ぎ、契約内容の正確性を担保します。
契約書に署名する直前には、以下の「契約書最終チェックリスト」の項目を一つ一つ指差し確認するように、業者担当者と共に最終確認を行いましょう。
これにより、認識の齟齬をなくし、安心して契約を進めることができます。
チェック項目 | 確認内容例 | チェック欄 |
1. 工事範囲の明確性 | 見積書通りの範囲か、図面等で具体的に特定されているか、「一式」表記はないか | □ |
2. 使用材料の具体性 | メーカー名、品番、グレードが見積書通りか、サンプル確認済みか | □ |
3. 総費用と内訳 | 見積もり総額と一致しているか、材料費・施工費・諸経費の内訳は妥当か | □ |
4. 支払い条件・時期 | 支払いのタイミング、方法(着手金、中間金、完了払いなど)は合意通りか | □ |
5. 工期(着工日・完了予定日) | スケジュールは現実的か、遅延時のペナルティ条項は明記されているか | □ |
6. 追加工事の取り扱い | 追加工事発生時の事前承認手続き、費用算定根拠は明確か | □ |
7. 保証内容・期間 | 保証範囲(施工不良、材料欠陥)、期間(1年以上推奨)、免責事項は納得できるか | □ |
8. アフターフォロー体制 | 不具合発生時の連絡先、フォロー体制は整備されているか | □ |
9. 契約解除条件 | やむを得ず契約解除する場合の条件、違約金等は明記されているか | □ |
10. 紛争解決条項 | 万が一の紛争時の協議方法、管轄裁判所等は明記されているか | □ |
11. 見積書・関連書類との整合性 | 契約書の内容が、これまでの見積書や合意書面と全て一致しているか | □ |
12. 担当者の署名・押印、会社情報 | 契約当事者双方の正式な署名・押印があるか、会社情報は正確か | □ |
このチェックリストで一つでもチェックがつかない場合や不明な点があれば、契約締結を一旦保留し、業者に説明を求め、納得できるまで修正や確認を行いましょう。
必要であれば、弁護士などの専門家に相談することも検討してください。
したがって、原状回復工事の契約書にサインする前には、必ずこのようなチェックリストを活用して最終確認を徹底し、全ての項目に納得した上で締結することが、後々のトラブルを防ぎ、安心して工事を完了させるための最も重要なステップです。
特に初めて取引する業者との契約は、より慎重な確認を心がけましょう。

まとめ
原状回復工事を依頼する際は、複数業者から見積もりを取得し、工事内容や費用の透明性を確認することが重要です。
料金設定が明確で、国土交通省のガイドラインを理解している業者を選ぶことで、借主・オーナー間のトラブルを未然に防げます。
また、実績や口コミだけでなく、対応スピードの早さや丁寧なコミュニケーションを行うスタッフの質も信頼性の指標となります。
適切な原状回復工事は次の入居者募集をスムーズにするだけでなく、物件価値の維持・向上にもつながるのです。
事前の退去立ち会いや工事中の確認を怠らず、契約内容を明確にすれば、後々のトラブルを回避できるでしょう。
これにより、質の高い仕上がりで満足のいく結果を得ることができます。

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