原状回復どこまで必要?賃貸・店舗・オフィス別に徹底解説!
「原状回復、どこまで必要?」
賃貸住宅や店舗、オフィス、事務所、テナント、飲食店、市営住宅、さらには土地やリース車まで、退去時に悩むポイントではないでしょうか。
- 掃除はどこまでする?
- 引っ越し前の作業範囲は?
- 孤独死が発生した物件では?
- 敷金はどこまで返還されるの?
この記事では、「原状回復」の正しい範囲と負担区分を、住居から商業施設まで幅広く解説します。
経年劣化・経年変化と故意・過失の違い、借主と貸主それぞれの義務、契約書の特約とガイドラインの関係、どこまで掃除すべきかなど、トラブルを未然に防ぐポイントを徹底解説。
様々なケースに応じた対応方法も具体的に紹介します。
これを読めば、退去時の不当な請求を回避し、納得のいく形で次の生活や事業をスタートさせることができるでしょう。

目次
賃貸の「原状回復 どこまで?」退去時の疑問を完全解説!
- この章では、賃貸物件からの退去時に必ず関わる「原状回復」について、どこまでが借主負担でどこからが貸主負担かという重要な境界線を解説します。
原状回復の範囲に関する情報には主に以下の内容があります。
- 原状回復の基本的な考え方と法的根拠
- 経年劣化・通常損耗と故意・過失による損耗の違い
- 民法改正(2020年)の影響と借主の権利
「原状回復」の基本ルールと「どこまで」が借主負担か?
賃貸住宅を退去する際に必ず直面するのが「原状回復」の問題です。
結論からいうと、借主が負担すべきは「故意・過失による損耗」のみで、「経年劣化」や「通常損耗」は貸主負担が基本原則です。
これは2020年4月の民法改正で法律上も明確になりました。
民法621条(賃借人の原状回復義務)では、借主は、通常の使用によって生じた損耗及び経年変化については、原状回復義務を負わないと明記されています。
ただし、賃借人の責めに帰すべき事由による、損耗については、原状回復義務を負います。
国土交通省のガイドラインでも同様の考え方が示されており、賃料には通常損耗のコストが含まれているという解釈です。
例えば、壁紙の日焼けや、通常の使用に伴う画鋲やピンの穴(下地ボードの張り替えが不要な程度のもの)、フローリングの家具設置によるへこみなどは、通常損耗として貸主負担となる場合が多いです。
一方、タバコのヤニ汚れ、壁の落書き、掃除を怠ったことによる水回りのひどいカビなどは借主負担となります。
特に壁紙やフローリングといった主要部分については、その経過年数に応じた減価償却も考慮されます。
たとえば、壁紙の耐用年数は一般的に6年とされており、入居期間が長ければ長いほど、借主の負担割合は減少していくのです。
賃貸契約書とガイドラインで「原状回復 どこまで」か確認する方法
原状回復の範囲を正確に把握するためには、「契約書の特約」と「国や自治体のガイドライン」の両方を確認することが重要です。
契約書に「通常損耗も借主負担」などと記載されていても、すべての特約が有効とは限りません。
特約が法的に有効となるためには、特約の必要性があり、借主に一方的に不利でなく、内容が具体的に明記され、借主が明確に合意していることが条件です。
例えば、「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」という特約があっても、通常損耗の範囲を超える清掃費用を、借主に負担させるものは、消費者契約法によって無効となる可能性があります。
また、壁紙張替え費用について、経過年数を考慮せず、借主に全額負担を求める特約も同様です。
地域によってもルールは異なり、「東京ルール」(賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明)では、経過年数による原状回復費用の負担割合の考え方などが示されています。
全国ガイドラインでは、壁紙の耐用年数は一般的に6年とされています。
契約前には特約内容を詳しく確認し、不明点は書面で説明を求めましょう。
東京都内の物件では「東京ルール」に基づき不動産業者から書面説明を受ける権利があります。
契約後でも不当な特約による請求には交渉の余地があるので、ガイドラインを根拠に話し合うことが大切です。
【ケース別】原状回復義務の範囲:「どこまで掃除」すればいい?
退去時の掃除について、「どこまでやればいいの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
重要なのは「通常の使用による汚れ」と「管理不足による汚れ」を区別することです。
日常的な清掃を怠ったことによる著しい汚れやカビは借主負担ですが、通常の生活で発生する程度の汚れは貸主負担となります。
例えばキッチンでは、通常の料理による軽度の油汚れは貸主負担ですが、換気扇の重度の油汚れや焦げ付きは借主負担です。
浴室の場合、定期的に掃除していても発生する軽微なカビは貸主負担ですが、掃除を怠ったことによる頑固なカビは借主負担となります。
床については、通常の生活での汚れは貸主負担ですが、飲み物をこぼして放置したシミなどは借主負担です。
カーペットの場合も同様で、通常の使用による摩耗は貸主負担ですが、染み込ませた汚れや破損は借主負担となります。
特殊なケースとして、孤独死が発生した物件では、通常の清掃では対応できない特殊清掃費用が発生することがあります。
この費用は、原則として借主(または相続人)の負担となりますが、契約内容や状況によって異なる場合があります。
退去前の掃除では、日常的に行うべき清掃レベルを確実に実施しましょう。
特にキッチン周りや水回りは重点的に掃除し、エアコンフィルターやメラミンスポンジで落とせる軽度の壁の汚れなどは自分で対応することで費用削減が可能です。
引っ越し時の原状回復費用を抑える!入居前からできる対策
原状回復費用を最小限に抑えるためには、入居時からの計画的な対策と退去時の適切な交渉が不可欠です。
入居時には物件の全室を写真や動画で撮影し(クローゼット裏や排水口まで含む)、既存の傷や汚れをチェックシートに記録しておきましょう。
在住中は定期的な掃除を行い、小さな不具合は早めに管理会社に報告することで、大きな損傷を防ぐことができます。
退去時には複数業者(最低3社)から見積もりを取得することが重要です。
クリーニング代金は、業者によって価格差があるため、比較検討が必須です。
見積もりを受け取ったら、減価償却計算書の提示を求め、民法621条を根拠に交渉しましょう。
適切な交渉により、費用を減額できた実例もあります。
交渉がうまくいかない場合は、消費者ホットライン(電話:188)や、お住まいの地域の消費生活センターに、相談するという選択肢もあります。
また、敷金返還のトラブルがある場合は、民法改正で明確化されたルール(敷金は、賃貸借契約が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに返還する義務を負う)も活用できます。
オフィス、店舗、テナント、飲食店などの事業用物件では、スケルトン戻しの範囲や工期を含めて、契約書の特約を早めに確認することが特に重要です。

【状況別】原状回復「どこまで」?特殊ケースの疑問を解決!
この章では、一般的な賃貸住宅とは異なる特殊なケースにおける原状回復の範囲と費用負担について解説します。
特殊ケースの原状回復に関する情報には主に以下の内容があります。
- 事業用物件(店舗・テナント・オフィス)の原状回復ルール
- スケルトン戻しの定義と費用負担の考え方
- 孤独死や市営住宅など特別な状況における原状回復の取り扱い
店舗・テナント・事務所の原状回復は「どこまで」?住宅との違い
事業用物件の原状回復は、住宅用とは大きく異なります。
まず基本的な違いとして、国土交通省のガイドラインは住宅の賃貸契約にのみ適用され、店舗やオフィスなどの事業用物件では契約内容がより重視されます。
一般的に事業用物件では、賃借人が退去時に物件を入居前の状態に戻す義務を負うことが多く、自分で設置した内装や設備をすべて撤去することが求められます。
例えば店舗では看板や固定棚の撤去、テナントでは間仕切り壁の撤去、事務所ではOAフロアの撤去など、住宅よりも範囲が広くなります。
また「居抜き」で借りた場合は、前テナントの設備について原状回復義務も引き継がれることがあるため注意が必要です。
事業用物件の原状回復費用は一般的に賃借人が全額負担することが多く、住宅のような経年劣化の考慮が少ない傾向にあります。
契約前には「スケルトン」の具体的定義を確認し、将来の退去を見据えて内装工事の記録や写真を残しておくことが重要です。
「原状回復 どこまで?」飲食店やオフィスのスケルトン戻しの基礎知識
「スケルトン戻し」とは、物件を骨組み(躯体)だけの状態に戻すことを指します。
特に飲食店では義務付けられることが多く、内装の壁や床、天井の撤去はもちろん、電気配線、給排水管、空調設備なども全て撤去することが求められます。
スケルトン戻しの範囲は契約書や特約に明記されているはずですが、物件によって「スケルトン」の定義は異なることもあるため、事前確認が重要です。
飲食店特有の項目としては、グリーストラップの清掃、排気ダクトの撤去、ガス配管の撤去などがあります。
オフィスでも、ネットワーク配線やセキュリティシステムの撤去が必要になることも。
費用目安は、飲食店の内装や設備の状況、物件の広さによって大きく異なりますが、一般的に高額になる傾向があります。
工期については、内装や設備の撤去、廃棄物処理、電気配線などの復旧工事など、様々な作業が必要となるため、物件の規模や状況によって大きく異なります。
移転計画の数ヶ月前から業者選定を始めるのが理想的です。
次の入居者の都合によっては、スケルトン戻しの範囲について交渉できる可能性もあるため、早めに賃貸人に相談することをおすすめします。
孤独死があった物件…原状回復義務と費用の負担は「どこまで」?
孤独死が発生した物件では、通常の原状回復に加えて「特殊清掃」と呼ばれる専門的な清掃・消毒作業が必要になります。
この費用は原則として借主(または相続人)の負担となりますが、発見までの期間や物件の状態によって大きく異なります。
特殊清掃の内容には、消毒・脱臭作業、汚染された床材・壁材の交換、害虫駆除などが含まれ、費用は状況によって大きく異なります。
注意すべき点として、相続放棄をした場合でも清掃費用の債務は別途発生する可能性があります。
単身世帯の方は、「孤独死保険」や「特殊清掃費用特約」付きの家財保険、家賃保証サービスへの加入を検討するとよいでしょう。
また、定期的な安否確認サービスを利用することで、早期発見による費用軽減も可能です。
大家や管理会社としては、入居者の長期不在や異変に気づいた場合の立ち入り調査権限について、契約時に明確にしておくことが重要です。
万が一の場合には、自治体の福祉課や消費生活センターに相談できる制度もあります。
市営住宅の退去時、「原状回復 どこまで」費用がかかる?
市営住宅(公営住宅)の原状回復は、一般の民間賃貸とは異なる独自のルールが適用されます。
市営住宅は「公営住宅法」に基づいて運営されており、退去時の原状回復についても各自治体が定めた条例や規則によって基準が設けられています。
ただし、基本的な考え方として「経年劣化や通常損耗は家賃に含まれている」という原則は民間賃貸と共通しています。
一般的に免除される項目としては、壁紙の自然な劣化、設備の経年変化、床材の通常摩耗などがあります。
一方、入居者負担となるのは、故意・過失による破損、許可なくペットを飼育した場合の損傷、無断改造などです。
自治体によっては畳の表替え費用の一部負担やハウスクリーニング費用の定額負担を求められることもあります。
敷金(保証金)は民間より低額で設定されていることが多く、通常1~3か月分程度です。
退去する際は、まず管理している自治体の住宅課や管理センターに問い合わせ、退去に関する手引きを入手することをおすすめします。

原状回復トラブルを回避!「どこまで」費用負担で損しないために
この章では、賃貸物件やオフィスなどの退去時に発生する原状回復費用について、適切な負担範囲の見極め方と、不当な請求から身を守るための知識を紹介します。
原状回復トラブルを回避するための情報には主に以下の内容があります。
- 原状回復費用の適正価格と見積もりの確認方法
- 不当な請求への対応法と効果的な交渉術
- 2020年民法改正による原状回復ルールの変更と借主の権利強化
原状回復費用の見積もりで「どこまで」が適正?確認ポイント
賃貸物件を退去する際、原状回復費用の見積もりが提示されますが、その内容は本当に適正でしょうか。
見積もりを確認する際は、まず詳細な内訳が記載されているか確認しましょう。
「一式いくら」という大雑把な表記ではなく、人件費、材料費、各修理項目ごとの費用が明確に記載されているべきです。
特に注意すべきは、壁紙(クロス)やフローリングの交換費用です。
これらには経過年数に応じた減価償却が適用されるため、例えば、壁紙の耐用年数は一般的に6年とされており、6年経過した壁紙の残存価値は1円となる考え方もありますが、具体的な負担割合は個別の契約内容や物件の状態によって異なります。
また、経年劣化や通常損耗(壁紙の日焼け、小さな画鋲の穴など)が含まれていないかもチェックしましょう。
信頼性を高めるため、必ず複数業者(最低3社)から見積もりを取ることをおすすめします。
同じ内容でも業者によって最大2倍の価格差が発生することもあります。
見積もりを受け取ったら、減価償却計算書の提示を求め、不明点はすぐに質問しましょう。
原状回復の「どこまで」が自己負担?交渉と相談窓口
原状回復費用で不当な請求を受けた場合、諦めずに交渉することが大切です。
交渉の際は感情的にならず、賃貸契約書の内容、国土交通省のガイドライン、民法の規定などを根拠に、冷静に自分の主張を伝えましょう。
入居時や在住中に撮影した写真・動画は、物件の状態を証明する重要な証拠となります。
交渉内容は可能な限り書面(メールや手紙)に残し、直接話し合う場合は録音や第三者の同席も検討しましょう。
交渉がうまくいかない場合は、専門機関に相談することができます。
主な相談窓口としては、消費者ホットライン(188)、お住まいの地域の消費生活センター、法テラスなどがあります。
状況に応じて、弁護士や司法書士などの専門家に相談することも検討しましょう。
これらの機関では、専門的なアドバイスや紛争解決のサポートを受けられます。
実際に、適切な交渉により壁紙の変色に関する高額請求が撤回されたり、フローリングの傷による敷金全額没収が減額されたりした事例も多数あります。
【2020年民法改正】原状回復ルールの変更点と「どこまで」影響があるか
2020年4月に施行された民法改正は、原状回復に関するルールを大きく変えました。
改正後の民法621条では、賃借人は「通常の使用及び経年の変化によって生じた損耗」については原状回復義務を負わないことが明文化されました。
これにより、「経年劣化や通常損耗は貸主負担」という従来の判例やガイドラインの解釈が、法律上も明確に定められたのです。
具体的な変更点としては、まず特約の有効性が整理されました。
「通常損耗も借主負担」などの特約は、借主が明確に理解して合意していた場合のみ有効となります。
また、敷金返還に関しては「退去後1ヶ月以内」という明確な期限が設定されました。
さらに、損害の立証責任が貸主側に移り、貸主が損害額を証明する義務を負うことになりました。
最新の裁判例でも、5年居住でフローリング全面張替えを要求された事例で、入居者負担は30%のみと認められるなど、借主に有利な判断が増えています。
2020年以降に契約・更新した方は、この新ルールが適用されるため、不当な請求には毅然と対応しましょう。

リース物件(車・土地)の原状回復「どこまで」?契約時の注意点
この章では、賃貸住宅に限らず、車や土地などのリース物件における原状回復義務について紹介します。
リース物件の原状回復に関する情報には主に以下の内容があります。
- リース契約における原状回復の基本的な考え方
- 車のリース返却時の原状回復義務と費用負担
- 土地のリース契約終了時の原状回復範囲と注意点
車のリース返却時、「原状回復 どこまで」求められる?
車のリース契約を終了する際も、賃貸住宅と同様に「原状回復」が求められます。
ただし、車特有の基準があるため注意が必要です。
基本的に「通常の使用による損耗」と「過度の損傷」は区別され、後者のみがペナルティの対象となります。
基本的に「通常の使用による損耗」と「通常の使用の範囲を超える損耗」は区別され、後者のみが原状回復費用を請求される可能性があります。
通常の使用として一般的に許容されるのは、洗車で落ちる程度の汚れや軽微な傷などです。
一方、ドアのへこみ、大きな傷や凹み、煙草のヤニ汚れ、シートの焦げ跡や破れなどは原状回復費用が発生する可能性が高いでしょう。
また契約時に設定した走行距離の上限(年間1万kmなど)を超えた場合は、別途超過料金が発生することも多いです。
社外パーツの取り付けなどカスタマイズをした場合は、原則として純正状態に戻す義務があります。
車を借りる際には「正常な使用状態」の定義や返却時の検査基準を明確に確認し、受け取る時点で既存の傷や不具合をチェックシートに記録し、写真も撮っておくことが重要です。
土地のリース契約終了時、「原状回復 どこまで」が義務?
土地のリース(借地)契約終了時には、原則として「更地」状態への復帰が求められます。
これは建物の賃貸借と大きく異なる点です。
土地の賃貸借では、借主が土地上に建物を建てて使用するという特殊性があります。
そのため、契約終了時には建物の解体・撤去、舗装やコンクリートの撤去、樹木の伐採、場合によっては地下埋設物の撤去まで必要になることがあります。
特に注意が必要なのは土壌汚染で、事業用地として使用していた場合、汚染物質の除去や土壌入れ替えといった高額な費用が発生する可能性もあるでしょう。
ただし、借地権の種類(普通借地権、定期借地権など)や契約内容によって義務範囲は大きく変わります。
例えば定期借地権では、契約満了時に建物を取り壊して土地を返還する義務が明記されていることが多い一方、借地権の種類によっては地主に建物の買取りを請求できる場合もあります。
土地をリースする際は、契約終了時の原状回復義務について具体的に確認し、契約書に明記しておくことが重要です。

まとめ
原状回復の範囲は「通常の使用による経年劣化」と「故意・過失による損傷」を区別することが基本です。
2020年の民法改正により、経年劣化部分は貸主負担であることが明確になりました。
壁紙の日焼けや小さな穴、軽度のフローリングの傷は経年劣化として借主負担にはなりません。
事前に入居時の写真を撮影し、退去時のトラブルに備えましょう。
不注意による汚損や破損は借主負担となる場合が多いため、日常の使用には注意が必要です。
見積もりは複数取得し、不当な請求には、ガイドラインなどを根拠に交渉を。
店舗やオフィスなど用途や、契約書の内容によっても原状回復の範囲は異なります。
正しい知識を持ち、無用な費用負担や敷金トラブルを避けて、スムーズな退去を実現しましょう。

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