損しない退去術!原状回復工事の費用相場はいくら?

2025年04月29日(火)

「原状回復工事の費用相場がわからず、予算が立てられない」

「契約内容の範囲が不透明で、どこまで負担すべきか悩んでいる」

賃貸物件やオフィス・店舗の退去時にこんな不安を抱えていませんか?

原状回復工事の費用相場を知ることは、不当な請求やトラブルを回避するための第一歩です。

この記事では、物件タイプ別の原状回復工事の費用相場から、経年劣化と使用損耗の線引き、オーナーや管理会社との交渉術、複数業者から見積もりを取るコツまで、工事費用を適正に抑えるための具体的な方法を解説します。

入居時の状態を証明する写真撮影の重要性や、指定業者以外の選び方も紹介。

あなたも、この記事の知識を活用すれば、納得のいく価格で原状回復工事を完了させ、余計な負担なく次の新生活をスタートできるでしょう。

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原状回復工事の費用相場とは

この章では、原状回復工事の費用相場の全体像について紹介します。

  1. 原状回復工事の費用相場は物件タイプによって大きく異なり、主に以下の要素に影響されます。
  2. 物件の種類(オフィス、店舗、住居など)
  3. 物件の規模と内装グレード
  4. 物件の使用状況と特殊設備の有無
  5. 契約内容と原状回復の範囲
  6. 地域差や指定業者の有無

オフィスの費用相場:3〜40万円/坪

オフィスの原状回復工事費用は、物件の規模や内装グレードによって大きく変動します。

オフィスの原状回復費用は、物件の立地(都心部か郊外か)、グレード(AグレードかB・Cグレードか)、内装仕様(造作の多さ)、契約条件などにより大きく変動します。

小規模オフィス(50坪未満)では4〜8万円/坪、中規模オフィス(50〜200坪)では5〜12万円/坪です。

大規模やハイグレードオフィス(200坪以上、特にAグレード)では内装解体・設備撤去の範囲により10万円/坪を超えるケースも多く、場合によっては30万円/坪近くになることもあります。

オフィスの規模

費用相場

(坪単価)

主な工事内容

小規模(50坪未満)

3〜7万円/坪

基本的なパーティション撤去と床材・壁材の修復

中規模(50〜200坪)

4〜10万円/坪

複雑な間仕切りの撤去や配線工事

大規模・ハイグレード(200坪以上)

8〜40万円/坪

高品質内装材の使用、広範囲の設備撤去

ただし、これらはあくまで一般的な目安であり、一例です。実際の費用は物件の状況や契約内容により大きく異なるため、必ず個別に見積もりを取得してください。

費用の差が生じる主な理由は、間仕切りや配線工事の複雑さと使用されている内装材の品質です。

小規模オフィスでは基本的なパーティション撤去と床材・壁材の修復が主な作業となりますが、大規模オフィスでは複雑な間仕切りの撤去や広範囲に及ぶ配線工事が必要になります。

特にハイグレードビルでは高価な内装材が使われているため、原状回復にも同等品質の材料が必要となり費用が高額になります。

退去を計画する際には、複数の業者から見積もりを取得し、契約書に記載された原状回復の範囲を確認することが重要です。

また経年劣化による損耗は借主負担ではないケースが多いため、契約内容を理解して不必要な費用を避けましょう。

店舗の費用相場:2〜50万円/坪

店舗の原状回復費用は業種による設備の違いで大きく異なります。

一般的な物販店(内装や造作が少ない場合)で4〜10万円/坪、美容室(給排水設備あり)で5〜15万円/坪が目安です。

一方、厨房設備、排気ダクト、グリストラップ等の撤去・清掃が必須となる飲食店では、工事範囲が広範囲に及ぶため15万円/坪から、重飲食やスケルトン返しが求められる場合は40万円/坪を超えることも珍しくありません。

この費用差の主な理由は、設置された特殊設備の種類と量にあります。

小売店の場合、規模によって効率化が進むため、30坪までの小規模店舗では6〜8万円/坪、31〜50坪の中規模店舗では5〜6万円/坪、50坪以上の大規模店舗では3〜5万円/坪と、規模が大きくなるほど坪単価が下がる傾向があります。

一方、飲食店では厨房設備や排気ダクト、グリーストラップなどの特殊設備の撤去・清掃が必要で、衛生面の基準も厳しいため費用が高額になります。

店舗の種類

費用相場

(坪単価)

特徴・備考

一般的な物販店(内装や造作が少ない)

4〜10万円/坪

店舗規模が大きいほど坪単価は下がる傾向

小規模店舗(30坪まで)

6〜8万円/坪

規模による効率化の影響が少ない

中規模店舗(31〜50坪)

5〜6万円/坪

ある程度の効率化が可能

大規模店舗(50坪以上)

3〜5万円/坪

規模による効率化が進む

美容室(給排水設備あり)

5〜15万円/坪

シャンプー台など特殊設備の撤去が必要

飲食店

15〜50万円/坪

厨房設備、排気ダクト、グリストラップ等の撤去・清掃が必須

店舗退去を計画する際には、「居抜き」での退去交渉が費用削減に効果的です。

特に飲食店の場合、次のテナントが同業種であれば設備をそのまま使用できる可能性が高く、原状回復工事の大部分を省略できることがあります。

また、契約時に預けた保証金から原状回復費用を充当できるか事前に確認しておくことも重要です。

居住用物件の費用相場

居住用物件の原状回復費用(主にクリーニング代、故意・過失による損傷の修繕費)は、地域や依頼業者、損傷の程度により異なります。

一般的な目安は以下の通りですが、ペット飼育や喫煙があった場合は、特殊クリーニングや壁紙交換費用が加算される可能性があります。

間取り

広さ

費用相場

(借主負担分)

備考

1R・1K

30㎡未満

2〜5万円

経年劣化・通常損耗分は含まれない

1DK・1LDK

30〜50㎡

3〜6万円

ペット飼育や喫煙があった場合は加算

2DK・2LDK

50㎡前後

4〜9万円

主にハウスクリーニング費用と壁紙や床材の修復・交換費用

3DK・3LDK以上

50㎡以上

5〜12万円以上

部屋が広くなるほど作業量が増加

※これらは借主負担分の一例であり、経年劣化・通常損耗分は含まれません。あくまで一般的な目安・一例であり、ペット飼育や喫煙の有無、損耗の度合いで費用は大きく変動します。

これらの費用は主にハウスクリーニング費用と壁紙や床材の修復・交換費用で構成されています。

部屋が広くなるほど作業量が増えるため費用も高くなりますが、それだけでなく住んでいた期間やペット飼育・喫煙の有無によっても大きく変動します。

小さな間取りでも基本的なクリーニングと部分的な修復が必要で、間取りが大きくなるとキッチンや浴室などの水回りを含むクリーニングや広い面積の壁紙・床材の修復が必要になります。

居住用物件の退去時には、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を理解しておくことが大切です。

このガイドラインによれば、経年劣化や通常損耗は借主負担ではないとされています。

トラブル防止のためには入居時と退去時の写真撮影が有効で、ペット飼育や喫煙をしていた場合は特別なクリーニングが必要になることも考慮して予算を立てましょう。

飲食店の費用相場

飲食店の原状回復工事費用は他の業種と比較して非常に高額で、物件規模にかかわらず一般的に20〜50万円/坪が相場となります。

場合によってはさらに高額になることもあるため、計画的な準備が必要です。

費用が高額になる主な理由は、厨房設備の撤去、給排水設備の復旧、排気ダクトの清掃・撤去、油汚れの徹底清掃、床の防水層・防汚加工の撤去など、特殊な工事が多く必要になるためです。

一般的な飲食店では厨房設備撤去や給排水・ガス設備の復旧で20〜30万円/坪程度かかりますが、本格的な厨房設備がある場合は大型厨房機器の撤去や排気ダクト清掃で30〜40万円/坪、改装が多い高級飲食店になると内装の完全撤去や床・壁・天井の復旧で40〜50万円/坪以上になることもあります。

特にスケルトン渡し(※内装や設備をすべて撤去し、建物の骨組みだけの状態に戻すこと)が契約で求められているケースでは、解体範囲が広いため費用がさらに高額になります。

飲食店の種類・設備

費用相場(坪単価)

特徴・主な工事内容

一般的な飲食店

20〜30万円/坪

厨房設備撤去、給排水・ガス設備の復旧

本格的な厨房設備がある店舗

30〜40万円/坪

大型厨房機器の撤去、排気ダクト清掃

改装が多い高級飲食店

40〜50万円/坪以上

内装の完全撤去、床・壁・天井の復旧

スケルトン渡しが必要な場合

50万円/坪以上

建物の骨組みだけの状態に戻す作業

飲食店の退去を計画する際は、「居抜き」での退去交渉が費用削減に非常に効果的です。

次のテナントが同じ飲食業を営む場合、厨房設備やダクトをそのまま利用できる可能性が高く、大幅な費用削減につながります。

また余裕をもったスケジュール調整で複数業者からの見積もり取得と比較検討を行いましょう。

美容室やサロンの費用相場

美容室やサロンの原状回復工事費用は一般的に3〜6万円/坪が相場ですが、設備の多さや内装のグレードによってはより高額になることがあります。

特にシャンプー台や特殊な給排水設備の撤去が必要な場合は10万円/坪程度まで上昇する可能性があります。

美容室やサロンの原状回復費用が一般的なオフィスよりもやや高めになる傾向がある理由は、シャンプー台などの特殊設備の撤去や給排水設備の復旧、壁一面に設置された鏡の撤去、床材の修復などが必要になるためです。

基本的な美容室ではシャンプー台2〜3台、鏡、照明の撤去で3〜5万円/坪程度ですが、設備の多い美容室やエステサロンでは多数のシャンプー台、特殊な給排水設備、内装材の撤去で5〜8万円/坪になります。

さらに高級サロンになると高級内装材、特殊照明、防音設備などの撤去で8〜10万円/坪以上かかることもあります。

サロンの種類・規模

費用相場(坪単価)

主な撤去・復旧内容

基本的な美容室

3〜5万円/坪

シャンプー台2〜3台、鏡、照明の撤去

設備の多い美容室

エステサロン

5〜8万円/坪

多数のシャンプー台、特殊な給排水設備、内装材の撤去

高級サロン

8〜10万円/坪以上

高級内装材、特殊照明、防音設備などの撤去

また、化粧品やカラーリング剤などによる壁や床の汚れの除去に追加費用がかかるケースもあります。

美容室やサロンの退去を計画する際は、シャンプー台や給排水設備などの特殊設備を次のテナントに譲渡できないか交渉することが費用削減に効果的です。

さらに壁や床の汚れについても、通常の使用による経年劣化と区別して、本当に借主負担とすべきものかを契約書やガイドラインに照らして確認しましょう。

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原状回復工事の費用が高くなる理由

この章では、原状回復工事の費用が高額になってしまう要因について紹介します。


原状回復工事の費用は想定以上に高くなることが多く、その背景には様々な理由があります。

  1. 事前に以下の要因を理解しておくことで、適切な予算計画や費用削減の対策を講じることができます。
  2. 特殊な内装や設備による影響
  3. 入居ビルのグレードや築年数による違い
  4. 指定業者制度の影響
  5. 契約書に記載された工事範囲の広さ
  6. 時期や地域による資材価格や処分費の変動

理由

影響の度合い

具体例

特殊な内装や設備

★★★

飲食店の厨房設備(20〜50万円/坪)

美容室のシャンプー台

特殊な内装材の撤去・処分

入居ビルのグレードや築年数

★★★

ハイグレードビル(Aグレード)での高品質な内装材復旧(15〜40万円/坪)

新築・築浅物件での「新品同様」復旧要求

指定業者制度

★★

一般相場より10〜30%高額な見積もり

必要以上の工事範囲提案の可能性

工事範囲が広い契約内容

★★★

特約による通常損耗・経年劣化の借主負担

「全面張替え」などの過剰な復旧条件

資材価格や処分費の高騰

★★

ウッドショックによる木材価格30〜50%上昇

都市部での処分費(郊外の1.5〜2倍)

人件費の上昇(10〜20%)

繁忙期(2〜3月)の費用上昇(5〜10%)

特殊内装や設備がある場合

飲食店の厨房設備や美容室のシャンプー台など、特殊な内装や設備がある物件は原状回復工事の費用が高くなる傾向にあります。

これは、特殊設備の撤去や処分には専門的な技術が必要となり、通常の内装工事よりも手間とコストがかかるためです。

例えば、飲食店の場合、厨房設備の撤去だけでなく、油汚れの清掃、排気ダクトの撤去、グリストラップの処理など特殊な工程が必要で、坪単価が20〜50万円と非常に高額になります。

美容室でもシャンプー台の撤去や給排水設備の復旧が必要で、一般的なオフィスより費用が嵩みます。

また、特殊な内装材を使用している場合も、撤去や処分に特別な配慮が必要となり、費用増加の原因になります。

こうした特殊設備がある場合は、「居抜き」での退去交渉が効果的です。

次のテナントが同業種であれば設備をそのまま利用できる可能性が高く、大幅な費用削減になります。

また、オーナーへの設備譲渡交渉や、複数の専門業者からの見積もり取得で適正価格を見極めることも重要です。

将来の原状回復費用も考慮した上で設備投資を行うことで、退去時の負担を軽減できるでしょう。

入居ビルのグレードや築年数

入居するビルのグレードや築年数も原状回復費用に大きく影響します。

一般的に、ハイグレードビルや新築に近いビルほど原状回復の基準が厳しく設定されており、費用が高額になる傾向があります。

高級オフィスビル(Aグレード)では、高品質な内装材が使用されているため、同等品質での復旧に多額の費用がかかります。

こうしたビルでは坪単価が15〜40万円にも達することがあります。

また、新築や築浅物件では「新品同様」の状態への復旧を求められることが多く、わずかな傷や汚れでも修繕対象となりやすいのです。

一方、築年数が経過したビルでは、壁紙や床材の耐用年数(通常6〜8年)を考慮した負担割合の調整が適用されることがあります。

例えば、築8年のビルで退去する場合、壁紙の張替え費用が借主負担ではなく貸主負担とされる可能性が高まります。

入居前には契約書の原状回復条項を注意深く確認し、特にグレードの高いビルでは詳細な取り決めを行うことが重要です。

また、入居時と退去時に物件の状態を写真や動画で記録しておくことで、経年劣化や通常損耗の証拠として活用できます。

国土交通省のガイドラインを参照し、適切な負担区分を理解しておきましょう。

指定業者しか選べない契約

賃貸借契約において、ビルオーナーや管理会社から原状回復工事を依頼する業者を指定されている場合、費用が高くなることがあります。

指定業者制度では、借主が自由に業者を選べないため競争原理が働きにくく、一部の調査や専門家の指摘によれば、相場とされる価格よりも割高な見積もりが提示される傾向があると言われています。

その差はケースバイケースですが、10%~30%程度高くなる可能性も指摘されています。

指定業者はビルオーナーや管理会社との関係維持が優先され、借主よりもオーナー側の意向を重視する傾向があります。

また、ビルの構造や設備に精通している反面、「ビルの標準仕様」に合わせた工事を前提とするため、必要以上の工事範囲を提案するケースも見られます。

例えば、市場相場では坪単価8万円の工事が、指定業者だと10〜12万円になるケースや、飲食店の原状回復で一般業者の見積もりが坪25万円に対し、指定業者は坪35万円という事例もあります。

このような状況に対処するには、契約締結前に原状回復工事の業者選定権について確認し、可能であれば自由に選べる条件での契約を検討することが重要です。

すでに指定業者が条件となっている場合でも、見積書の内訳を細かくチェックし、不明点や高額な項目について質問・交渉することで、10〜20%程度の値下げが可能なケースもあります。

オーナーとの良好な関係構築も費用交渉で重要となります。

工事範囲が広い契約内容

賃貸借契約書に記載された原状回復の範囲が広いほど、退去時の費用負担は大きくなります。

標準的な契約では、借主の故意・過失による損耗(特別損耗)のみが借主負担とされますが、契約内容によっては通常使用による損耗や経年劣化まで借主負担とされることがあります。

特に「特約」として「クロスの張替え費用は借主負担」「設備機器の経年劣化も借主負担」などの条項が含まれていると、本来は貸主が負担すべき費用まで借主が支払うことになります。

国土交通省のガイドラインでは、経年劣化や通常損耗は貸主負担が原則とされています。

しかし、賃貸借契約書に「特約」として、例えば「ハウスクリーニング費用は一律借主負担」「畳表替え・襖の張替え費用は退去時に借主負担」など、通常損耗に該当する可能性のある修繕費用を借主負担とする条項が具体的に記載されている場合があります。

これらの特約が、以下の要件を満たす場合、有効と判断される可能性があります。

  1. 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること、
  3. 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

そのため、契約前の特約内容の確認と理解が極めて重要です。

このような不利な契約を避けるためには、契約締結前に原状回復条項を注意深く確認し、特に「特約」の内容については明確に理解しておくことが重要です。

不利な条件がある場合は契約前に交渉し、修正を求めましょう。

すでに契約している場合でも、退去時には経年劣化や通常損耗と特別損耗を区別し、不当な請求には根拠を示して交渉することが大切です。

国土交通省のガイドラインを参照しながら適切な負担区分を主張し、必要に応じて弁護士や敷金診断士などの専門家に相談することも検討しましょう。

資材価格や処分費の高騰

原状回復工事の費用が高くなる理由として、資材価格や処分費の高騰も見逃せません。

建築資材の価格は需給バランスや原材料費、物流コストなどに影響されます。

建築資材の価格は、ウッドショックやウクライナ情勢、円安などの影響を受け、建設物価調査会などのデータによると、2022年以降、品目によっては従来の相場と比較して一時的に20%以上高騰する状況も見られました。

2024年時点では一部落ち着きも見られますが、依然として高止まりしている資材もあり、工事費用に影響を与えています。

出典:建設物価調査会2025年3月の建設資材物価指数

例えば「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰では、フローリング材やパーティション用の木材が30〜50%値上がりしました。

また、産業廃棄物の処分費用も環境規制の強化や処分場の逼迫により年々上昇傾向にあります。

特に都市部では郊外に比べて1.5〜2倍の処分費がかかることもあります。

さらに、建設業界の人手不足による人件費の上昇も工事費用を押し上げています。

熟練工の減少により、技術者の日当が10〜20%上昇しているケースも少なくありません。

季節的な要因も影響し、年度末(2〜3月)は引っ越しや移転の需要が集中するため、工事費が5〜10%高くなる傾向があります。

このような状況に対応するには、可能であれば資材価格の安定している時期や、工事需要の少ない時期(6〜8月、10〜12月など)に工事を計画することが効果的です。

また、複数の業者から見積もりを取得し、資材や処分費の内訳を細かく確認することで適正価格を見極めましょう。

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原状回復の範囲と負担区分

この章では、原状回復の範囲と費用負担の区分について紹介します。

原状回復をめぐるトラブルを避けるためには、契約内容や法的ガイドラインを正しく理解することが重要です。

以下の内容を把握することで、不当な請求を避け、適切な負担区分を実現できます。

  1. 賃貸借契約書における原状回復条項の重要ポイント
  2. 経年劣化と使用損耗の違いと線引きの考え方
  3. 国土交通省のガイドラインの内容と実務上の適用
  4. 貸主と借主それぞれの負担範囲の具体例

契約書の確認ポイント

原状回復の範囲と費用負担を明確にするためには、賃貸借契約書の原状回復条項や特約部分を入居前に詳細に確認することが不可欠です。

契約書には「原状回復」の定義と範囲、「通常損耗」「経年劣化」の負担区分、特約条項の有無などが記載されています。

これらの条項は国土交通省のガイドラインと異なる場合でも、契約書の内容が優先されることが多いため、契約前の確認が重要です。

特に注意すべきは「特約」として通常損耗まで借主負担とするような条項です。

このような借主に著しく不利な条項は、消費者契約法などにより無効とされる可能性もあります。

また、保証金・敷金の返還条件と清算方法、退去時の立会いや検査の手順なども確認しておきましょう。

契約締結前に条項を丁寧に読み、不明点は貸主や管理会社に質問することが大切です。

契約書のコピーは必ず保管し、入居時に物件の状態を写真で記録しておくことで、退去時のトラブル防止に役立ちます。

契約内容に不安がある場合は、弁護士や消費者センターなどの専門機関に相談することも検討しましょう。

経年劣化と使用損耗の線引き

原状回復費用の負担区分を理解する上で最も重要なのは、「経年劣化」「通常損耗」「特別損耗」の違いを明確に区別することです。

物件は使用していなくても時間の経過により自然に劣化します(経年劣化)。

例えば、日焼けによる壁紙の変色、畳の自然な劣化、設備の経年による故障などが該当します。

また、通常の使用方法で生じる損耗(通常損耗)も避けられないもので、家具の設置による床のへこみや跡、少数の画鋲やピンの穴、冷蔵庫裏の壁の黒ずみなどがこれにあたります。

これらは賃料に含まれていると考えられ、原則として貸主が負担すべきものとされています。

一方、借主の故意・過失や通常の使用方法を超える使用によって生じた損耗(特別損耗)は、借主が負担する必要があります。

タバコのヤニ汚れ、ペットによる傷や臭い、飲みこぼしによるシミ、壁への落書き、不注意による破損などがこれに該当します。

入居期間が長い場合は経年劣化の割合が高くなるため、借主負担は軽減される可能性があります。

貸主負担(経年劣化・通常損耗)

借主負担(特別損耗)

日焼けによる壁紙の変色

タバコのヤニ汚れ

家具の設置による床のへこみや跡

ペットによる傷や臭い

少数の画鋲やピンの穴

飲みこぼしによるシミ

冷蔵庫裏の壁の黒ずみ

壁への落書き

畳の自然な劣化

不注意による破損

設備の経年による故障

水漏れ被害

ガイドラインの解釈と適用

国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン1)」は、賃貸借契約における原状回復の基本的な考え方を示す重要な指針です。

ただし、このガイドライン自体に法的な強制力はありません。裁判では重要な判断材料とされますが、最も優先されるのは当事者間で合意した賃貸借契約書の内容です。

ガイドラインでは、経年劣化や通常損耗は賃料に含まれるものとして貸主負担、借主の故意・過失による特別損耗は借主負担という原則が示されています。

しかし、契約書に「特約」として通常損耗の修繕費用を借主負担とする旨が合理的かつ明確に記載されている場合、その特約が有効と判断される可能性もあります(消費者契約法に反しない範囲で)。

そのため、契約内容の確認が非常に重要です。

具体的には、経年劣化・通常損耗・特別損耗の定義と区分、損耗事例と負担区分(壁、床、設備など)、経過年数を考慮した負担割合の考え方(壁紙の耐用年数は6年など)、原状回復義務の範囲と「通常の使用」の解釈、特約の有効性に関する考え方などが記載されています。

原状回復に関するトラブルを避けるためには、このガイドラインを理解し、退去時の交渉材料として活用することが効果的です。

貸主から請求された費用が妥当かどうかを判断する際の根拠となるでしょう。

ガイドラインは国土交通省のウェブサイトで閲覧できるので、退去前に内容を確認しておくことをお勧めします。

貸主負担と借主負担の違い

原状回復費用の負担区分は、原則として「貸主負担」と「借主負担」に明確に分けられます。

貸主負担となるのは経年劣化と通常損耗、借主負担となるのは特別損耗(故意・過失による損耗)です。

貸主負担の具体例としては、日照による壁紙の変色、家具の設置による床のへこみ、通常使用による設備の経年劣化、少数の画鋲やピン跡などが挙げられます。

一方、借主負担となる例としては、タバコのヤニによる壁紙の変色、ペットによる傷や臭い、落書きや壁の穴、不注意による水漏れ被害などがあります。

賃貸借契約において、借主は物件を社会通念上要求される程度の注意をもって適切に使用・管理する義務(善管注意義務 )を負います。

しかし、この義務には通常の使用による損耗(経年劣化や通常損耗)まで元通りに修復する義務は含まれていません。

これは、通常損耗や経年劣化のコストは賃料に含まれているという考え方に基づいています。

また、入居期間の長さも考慮され、長期間入居していた場合は経年劣化の割合が高くなるため、借主負担は軽減される傾向にあります。

退去時には請求された費用が本当に借主負担すべきものかを精査し、不明な点があれば交渉しましょう。

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原状回復工事の費用を抑える方法

この章では、原状回復工事の費用を効果的に抑えるための方法について紹介します。

原状回復工事は予想以上に高額になることが多いですが、適切な対策を講じることで費用負担を軽減できます。

以下の方法を理解し実践することで、無駄な出費を避け、スムーズな退去を実現できます。

  1. 次のテナントへの「居抜き」交渉による工事範囲の縮小
  2. 複数業者からの見積もり取得による適正価格の見極め
  3. 契約時に預けた保証金・敷金の効果的な活用方法
  4. オーナーや管理会社との工事範囲に関する交渉術
  5. 余裕を持ったスケジュール計画による交渉の余地確保

居抜きでの退去交渉

「居抜き」での退去交渉は原状回復費用を大幅に削減できる最も効果的な方法です。

通常、退去時には物件を入居前の状態に戻す必要がありますが、次のテナントが同業種または類似業種であれば、既存の設備や内装をそのまま活用できる形で引き渡せる可能性があります。

特に飲食店の厨房設備や美容室のシャンプー台など、撤去に多額のコストがかかる特殊設備がある場合、大きなメリットがあります。

例えば、飲食店の原状回復費用は通常20〜50万円/坪ですが、居抜きでは0〜10万円/坪に削減できるケースも少なくありません。

居抜き交渉を成功させるためには、まずオーナーや管理会社に早めに意向を伝え、次のテナント候補を探すことが重要です。

自社の設備や内装の状態・価値を写真や図面でまとめた資料を準備し、業界のネットワークを活用したり、居抜き物件専門のマッチングサービスを利用したりするのも効果的です。

次のテナントにとっても新たに設備投資する必要がなくなるため、双方にメリットがある点を強調しましょう。

交渉では柔軟な対応を心がけ、必要に応じて部分的な原状回復と組み合わせることも検討してください。

複数業者から見積もりを取る

原状回復工事の費用を適正化するには、複数の業者から見積もりを取ることが不可欠です。

同じ工事内容でも業者によって20〜40%もの価格差が生じることがあり、3社以上から見積もりを取得して比較することで、市場相場を把握し大幅なコスト削減が可能になります。

特にビルオーナーや管理会社から指定された業者は、競争原理が働かないため割高になりがちです。

実際に、指定業者の見積もりが150万円だったのに対し、独自に探した業者から110万円の見積もりを取得し、それを基に交渉した結果、最終的に120万円まで費用を抑えられたという事例もあります。

ただし、必ずしも交渉が成功するとは限りません。

見積もりを取る際は、詳細な現地調査を依頼し、同じ条件・同じ項目で比較できるようにしましょう。

見積書には「工事項目」「数量」「単価」「金額」「諸経費の内訳」を明記してもらい、項目ごとに精査することが重要です。

指定業者しか選べない契約の場合でも、他社の見積もりを参考資料として価格交渉に活用できます。

見積もり依頼は退去予定日の1〜2ヶ月前から始め、特に高額な項目(壁紙交換、床材修復、特殊設備撤去など)は詳細に検討し、必要に応じて部分補修や代替工法の提案を求めましょう。

保証金・敷金の活用方法

入居時に預けた保証金や敷金を原状回復費用に効果的に充当することで、追加の出費を抑えられます。

まず、保証金と敷金の違いを理解することが重要です。

「敷金」は原則として原状回復費用を差し引いた残額が返還されるのに対し、「保証金」は契約によって償却(返還されない)部分がある場合もあります。

例えば、家賃10万円×3ヶ月分(30万円)の敷金を預けていた場合、原状回復費用20万円を差し引き、10万円が返還されるといった形です。

ただし、敷金は借主の故意・過失による損傷の修繕費用にのみ充当すべきもので、経年劣化や通常損耗の費用は差し引かれるべきではありません。

退去前には、契約書で規定されている返還条件や清算方法を確認し、原状回復費用の見積もりを取得して、どの項目がどれだけ差し引かれるか事前に把握しましょう。

特に経年劣化や通常損耗に関する費用が不当に差し引かれていないか注意深くチェックし、不明点があれば国土交通省のガイドラインを根拠に交渉することが効果的です。

入居期間が長い場合は、壁紙や床材の耐用年数(一般的に6〜8年)を考慮した負担割合の調整を求めることも検討しましょう。

工事範囲の交渉テクニック

原状回復工事の範囲を適切に交渉することで、費用を大幅に削減できる可能性があります。

国土交通省のガイドラインでは、経年劣化(時間経過による自然な劣化)や通常損耗(通常の使用による損耗)は貸主負担と定められていますが、実際の請求では、これらが借主に請求されるケースも少なくありません。

例えば、退去時に壁紙全面張替えを要求されても、6年間の入居期間を根拠に経年劣化として交渉した結果、借主負担が50%に減額されたケースや、床全面張替えの請求に対して、家具の設置跡は通常損耗であることを主張し、部分補修のみで対応することに合意したケースなどがあります。

交渉を成功させるためには、入居時と退去時の物件状態を写真や動画で記録しておくことが重要です。

これにより、どの損傷が入居前からあったもので、どれが入居中に生じたものかを明確にできます。

また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を熟読し、経年劣化や通常損耗の具体例を理解しておきましょう。

退去時の立会いには必ず参加し、その場で損傷の原因や修繕方法について話し合うことが効果的です。

交渉では感情的にならず、ガイドラインや法的根拠に基づいた冷静な対応を心がけましょう。

ゆとりあるスケジュール計画

原状回復工事の費用を抑えるためには、退去日から逆算した余裕のあるスケジュール計画が非常に重要です。

退去が迫った状況では、高額な見積もりを受け入れざるを得なかったり、十分な交渉ができなかったりと、様々な不利益が生じます。

理想的なスケジュールとしては、退去予定日の3ヶ月前に契約書の確認と退去予告を行い、居抜きの可能性を探り始めます。

2ヶ月前には複数業者への見積もり依頼と現地調査、1.5ヶ月前に見積もり比較と価格交渉、1ヶ月前に最終見積もりの確定と工事日程の調整を行います。

そして退去予定日の2週間前には引っ越しを完了させ、現状確認のための立会いを実施するとよいでしょう。

時期

(退去予定日から逆算)

やるべきこと

3ヶ月前

・契約書の確認と退去予告

・居抜きの可能性を探り始める

2ヶ月前

・複数業者への見積もり依頼と現地調査

1.5ヶ月前

・見積もり比較と価格交渉

1ヶ月前

・最終見積もりの確定と工事日程の調整

・オフィスの場合:IT機器の移設計画と業務継続計画の策定

2週間前

・引っ越しを完了

・現状確認のための立会い実施

また、繁忙期(2〜3月、9〜10月)は避け、比較的空いている時期(6〜8月、12〜1月)に退去を計画できると、業者の価格設定も柔軟になる傾向があります。

スケジュール表を作成する際は、見積もり取得、居抜き交渉、引っ越し、立会いなど、各ステップの期限を明確にし、予期せぬ遅延に備えて予備日も設けておきましょう。

早めの計画と行動が、結果的に大きな費用削減につながることを忘れないでください。

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原状回復工事のトラブル回避策

この章では、原状回復工事におけるトラブルを未然に防ぐための効果的な方法について紹介します。

原状回復工事は費用面でのトラブルが発生しやすい分野ですが、適切な知識と準備によって多くの問題を回避できます。

以下の対策を理解し実践することで、退去時の不安を軽減し、納得のいく形で物件を引き渡すことができます。

  1. 見積書の内容を詳細に確認するためのチェックリスト
  2. 退去立会い時の重要確認事項と交渉のポイント
  3. 入居時における物件状態の記録方法とその活用法
  4. 専門家に相談すべき状況と適切なタイミング
  5. 不当な請求に対する効果的な対応策と交渉術

見積書のチェックポイント

原状回復工事の見積書を受け取ったら、必ず詳細な内容確認を行いましょう。

まず、工事内容、数量、単価、金額、諸経費の内訳が明記されているか確認します。

これらの情報がないと適正価格かどうか判断できません。

次に工事範囲が契約書に記載された原状回復義務の範囲内かチェックします。

実際の物件面積と見積書の数値が一致しているか、特に壁紙の面積や設備数などを照合しましょう。

使用予定の材料が入居時と同等のグレードであるか、単価が市場相場(例:壁紙張替え1,200〜2,000円/㎡)と比較して適正かも確認が必要です。

諸経費や処分費は全体の30%を超えていないかもチェックポイントです。

さらに重要なのは、経年劣化や通常損耗にあたる項目が借主負担として含まれていないかを精査することです。

国土交通省のガイドラインでは、通常の使用による損耗や時間経過による劣化は貸主負担と定められています。

不明点や疑問がある場合は、遠慮せず業者に説明を求め、必要に応じて見積書の修正や再見積もりを依頼しましょう。

複数業者からの見積もりを比較検討することで、適正価格の目安をつかむことができます。

退去立会いでの確認事項

退去立会いは原状回復工事の範囲と費用を決定する重要な機会です。

必ず借主本人が参加し、立会いには入居時の写真や契約書、国土交通省のガイドラインのコピーなどを持参して臨みましょう。

立会い前に物件をきれいに清掃し、自分でできる簡単な補修(小さな穴の修復など)を行っておくと印象が良くなります。

立会い時には、まず入居時からある傷や汚れと入居中に生じた損傷を明確に区別することが重要です。

壁や床の傷、汚れの程度と原因(通常使用によるものか特別な使用によるものか)を確認し、経年劣化や通常損耗に該当する損傷については、その場でガイドラインを根拠に貸主負担であることを主張しましょう。

設備や備品の動作確認も忘れずに行い、クリーニングの範囲と方法についても確認します。

立会い結果は必ず書面で残し、双方が署名することで後日のトラブルを防止できます。

貸主や管理会社との交渉では感情的にならず、冷静かつ論理的に対応することがポイントです。

不安がある場合は友人や専門家に同席してもらうことも効果的です。

立会いでの合意事項は後の工事や費用請求の基準となるため、曖昧な点は必ず明確にしておきましょう。

入居時の証拠写真の重要性

入居時に物件の状態を詳細に写真や動画で記録しておくことは、退去時のトラブルを防ぐための最も効果的な対策の一つです。

入居直後に部屋全体を隅々まで確認し、すべての壁、床、天井の状態(傷、汚れ、色あせなど)を撮影しましょう。

ドアや窓枠、ベランダなどの建具の状態、キッチン・浴室・トイレなどの水回り、備え付け家具・設備の状態と動作確認、エアコンなどの電気設備も忘れずに記録します。

特に傷や汚れ、不具合がある場合は、複数のアングルから撮影し、大きさがわかるようにメジャーや硬貨などを置いて撮影するとよいでしょう。

スマートフォンなら撮影日時が自動記録されるため、日付の証明にも役立ちます。

撮影した写真や動画はクラウドストレージに保存するなど、紛失しないよう管理することが重要です。

同時に入居時チェックシートにも発見した不具合をすべて記入し、管理会社やオーナーに確認印をもらいましょう。

チェックシートのコピーも必ず保管しておきます。

これらの記録があれば、退去時に「この傷は入居前からあった」と主張する際の客観的な証拠となり、不当な請求から身を守る強力な武器になります。

入居後も定期的に物件の状態を記録しておくと、経年変化の証拠として役立つでしょう。

専門家への相談タイミング

原状回復工事に関するトラブルが発生した場合、早い段階で適切な専門家に相談するようにしましょう。

特に高額な請求(30万円以上)を受けた場合や、明らかに経年劣化・通常損耗と思われる項目が請求に含まれている場合には専門家の力を借りるべきです。

また、貸主や管理会社との交渉が平行線をたどっている場合や、敷金が返還されず理由も明確に説明されない場合も相談を検討しましょう。

原状回復の範囲や費用負担については専門的な知識が必要となることが多く、一般の借主だけでは対応が難しいケースがあります。

まずは消費生活センターに相談するのがおすすめです。

無料で相談でき、専門的なアドバイスを受けられます。

より専門的な判断が必要な場合は、敷金診断士の診断を受けることも効果的です。

敷金返還や原状回復に特化した専門家で、適正な費用負担について診断してくれます。

法的な対応が必要な場合や高額な請求に対しては、弁護士の助言を受けることも検討しましょう。

相談の際は、契約書、重要事項説明書、入居時・退去時の写真、見積書、請求書など関連する書類をすべて準備し、経緯を時系列でまとめたメモを作成しておくとスムーズに状況を説明できます。

不当請求への対処方法

原状回復工事において不当な請求を受けた場合、冷静かつ論理的に対応することが重要です。

まず請求内容の詳細な明細書を要求し、内容を精査しましょう。

居住年数が6年以上なのに壁紙全面張替え費用を全額請求された場合や、家具の設置跡や画鋲の穴など通常損耗の修繕費用を請求された場合は、不当請求の可能性が高いケースです。

設備の経年劣化による故障の修理費用や、入居前からあった傷や汚れの修繕費用を請求されるケースも同様です。

このような不当と思われる項目を特定したら、国土交通省ガイドラインを根拠に反論する文書を作成し、入居時の写真や動画などの客観的証拠と共に、内容証明郵便で貸主や管理会社に異議を申し立てましょう。

交渉では感情的にならず、事実と法的根拠に基づいた冷静な対応を心がけ、すべてのやり取りは文書で残すことがポイントです。

電話での会話も後から内容を文書で確認するなど、記録を残しましょう。

交渉が難航する場合は、消費生活センターや専門家への相談も視野に入れ、場合によっては少額訴訟や調停など法的手段の検討も必要です。

根拠を示して適切に交渉することで、多くの場合、請求額の減額や適正化が可能になります。

最終的な合意内容は必ず書面化し、今後のトラブル防止に役立てましょう。

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業種別・物件別の注意点

この章では、業種や物件タイプごとの原状回復工事における特有の注意点について紹介します。

原状回復工事は物件の種類や使用状況によって大きく異なり、それぞれに特有の課題や対応策があります。

以下の内容を理解することで、自身の状況に合った適切な対策を講じることができます。

  1. オフィス移転における退去手続きの流れと重要ポイント
  2. 飲食店特有の設備撤去と清掃に関する対応策
  3. 小売店舗の内装・什器撤去と費用削減のコツ
  4. ペットを飼育していた住居の特別な対策と費用相場

オフィス移転時の手続き

オフィス移転に伴う退去手続きでは、電気・通信設備の復旧、パーティションの撤去、床・壁面の原状回復など、複雑な工程が必要になります。

計画的な準備と専門業者の適切な選定が、スムーズな移転と費用削減に必要です。

オフィスは居住用物件と異なり、テナント独自のレイアウトや通信・電気工事が施されていることが多く、原状回復の範囲が広くなる傾向があります。

特にOAフロア下の配線、パーティション設置による床・壁の加工、セキュリティシステムなどは専門的な知識を要する設備です。

効率的に進めるためには、退去予定日の3ヶ月前から契約書確認と管理会社への退去通知を行い、2ヶ月前には現地調査と複数業者からの見積もり取得、1.5ヶ月前に業者選定と工事範囲確定、1ヶ月前にIT機器の移設計画と業務継続計画の策定といったスケジュールで進めるとよいでしょう。

オフィス退時には、まず契約書の「原状回復条項」を詳細に確認し、実際の義務範囲を把握しましょう。

複数の業者から見積もりを取得し、価格と工事内容を比較検討することが重要です。

可能であれば、次のテナントが決まっている場合は「居抜き」での引き渡しを交渉することで大幅な費用削減が期待できます。

飲食店特有の原状回復

飲食店の原状回復工事は他業種と比較して最も高額になりやすく、厨房設備・給排水設備・排気ダクトの撤去や、油汚れ・臭いの除去など、特殊な工程が必要になります。

坪単価で20〜50万円と他業種の2〜5倍の費用がかかることが一般的です。

特に厨房内に設置されたグリストラップ(※排水に含まれる油脂分を分離・収集する装置)の専門的な清掃や撤去、油が付着した排気ダクトの清掃・撤去、ガス配管の閉栓・撤去などは、専門技術と法令遵守が求められ、高コストになる要因です。

また、床・壁・天井に浸透した油汚れや臭いの除去も大きな課題です。

主な費用項目としては、厨房設備の撤去が5〜10万円/坪、給排水設備の撤去・修復が3〜7万円/坪、排気ダクト・換気設備の撤去が3〜8万円/坪、グリストラップの撤去・清掃が10〜30万円程度かかります。

工事項目

費用相場

備考

厨房設備の撤去

5〜10万円/坪

専門的な技術が必要

給排水設備の撤去・修復

3〜7万円/坪

配管の撤去・閉栓など

排気ダクト・換気設備の撤去

3〜8万円/坪

油汚れの清掃も含む

グリストラップの撤去・清掃

10〜30万円(一式)

法令遵守が求められる

床・壁・天井の油汚れ除去

2〜5万円/坪

特殊な清掃が必要

スケルトン渡し(完全撤去)

40〜50万円/坪以上

建物の骨組みだけの状態に戻す

費用を抑えるためには、「居抜き」での退去を最優先に検討しましょう。

同業種の次のテナントが決まれば、厨房設備や排気ダクトなどをそのまま引き継ぐことで、撤去費用を大幅に削減できます。

居抜き物件を探している事業者とマッチングできるサービスや、不動産業者に相談することも効果的です。

居抜きが難しい場合でも、厨房機器など再利用可能な設備は買取業者への売却を検討することをお勧めします。

小売店舗の撤去費用

小売店舗の原状回復工事では、店舗什器・陳列棚の撤去、看板・サイン類の撤去、特殊照明の復旧など独自の課題があります。

物件規模によって費用が変動し、30坪以内の小規模店舗では3〜8万円/坪、大型店では効率化により3〜5万円/坪程度が相場となります。

固定された什器や重量のある陳列棚の撤去、床・壁面の加工部分の補修、店舗イメージに合わせた特殊照明や内装の復旧など独自の工事が必要になります。

特にブランドイメージを重視するアパレル店などでは、内装材のグレードが高く、原状回復も同等品質での対応が求められることがあります。

小売店舗撤去の主な費用項目としては、固定什器・陳列棚の撤去が2〜4万円/坪、看板・サイン類の撤去と補修が10〜50万円、特殊照明の撤去・復旧が1〜3万円/坪、床材の原状回復が1〜3万円/坪などがあります。

費用項目

費用相場

備考

固定什器・陳列棚の撤去

2〜4万円/坪

固定度合いや重量によって変動

看板・サイン類の撤去と補修

10〜50万円(一式)

規模や設置方法による

特殊照明の撤去・復旧

1〜3万円/坪

ブランドイメージに合わせた照明ほど高額

床材の原状回復

1〜3万円/坪

特殊加工がある場合は高額に

小規模店舗(30坪以内)の総額目安

3〜8万円/坪

内装のグレードによる変動あり

大型店舗の総額目安

3〜5万円/坪

規模による効率化で坪単価は下がる傾向

原状回復費用を削減するためには、まず物件契約時に原状回復の範囲を明確に定めておくことが重要です。

入居前の店舗状態を写真で記録し、自社で加工・改装した部分を明らかにしておきましょう。

退去時には、可能な限り「居抜き」での引き渡しを検討し、次のテナントが決まっている場合は什器や内装の一部を引き継いでもらえるよう交渉することが効果的です。

ペット飼育物件の対応

ペットを飼育していた物件の原状回復では、臭い・汚れ・傷への対応が重要課題です。

ペットの種類や飼育状況、物件の状況により費用は大きく異なりますが、賃貸住宅サービス会社の事例報告などを見ると、壁紙の広範囲な張り替えや特殊な消臭・消毒作業、床材の修復・交換などが必要となります。

結果的に通常の原状回復費用と比較して、総額で1.5倍から、場合によっては2倍以上の費用が発生するケースもあるようです。

ペット飼育物件では、毛や爪による傷、尿やよだれなどの汚れ、特有の臭いが壁・床・建具に染み込むことが多く、通常のクリーニングでは対応できないケースが少なくありません。

特に尿の臭いは壁紙だけでなく下地材(石膏ボードなど)にまで浸透することがあります。

その場合は表面的なクリーニングや壁紙張替えだけでは臭いが取れず、下地材の交換や、専門業者による特殊な消臭・消毒作業が必要になることもあります。

主な原状回復費用としては、通常の壁紙張替えが1,200〜2,000円/㎡なのに対し、ペット物件では下地処理込みで1,800〜3,000円/㎡、フローリング修復も部分的なものが3,000〜5,000円/㎡なのに対し、全面張替えだと8,000〜15,000円/㎡になることがあります。

退去費用を抑えるためには、入居中からの対策が非常に重要です。

ペット用トイレの下に防水シートを敷く、壁に保護シートを貼る、傷つきにくい素材のカバーを使用するなど、物件を保護する工夫をしましょう。

定期的に専門業者によるクリーニングを行うことで、汚れや臭いの蓄積を防ぐことも効果的です。

退去前には、ペット臭への対応実績がある専門のハウスクリーニング業者に依頼することをお勧めします。

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まとめ

「原状回復工事の費用相場」についての記事では、オフィスや店舗、住居など物件タイプ別の費用目安と、費用が高額になる理由を詳しく解説しました。

費用削減には居抜き退去交渉や複数業者からの見積もり比較、契約書とガイドラインの正確な理解が効果的です。

原状回復範囲の線引きや経年劣化への対応、賢い交渉術を身につけることで、不当請求を防ぎながら適正価格での工事実現が可能です。

特に入居時の証拠写真保管や退去立会いでの確認事項など、ケース別のトラブル回避のポイントを押さえることで、余計なコストや負担なく、スムーズな退去を実現できます。

出典:

1):国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

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