店舗の「原状回復」「内装解体」「スケルトン」の違いとは?

2018年04月26日(木)

店舗として利用するテナント物件を契約されている方、あるいはこれから契約を検討されている方は、「原状回復」「内装解体」「スケルトン」という工事について、またそれぞれの違いについて、正しく理解しておく必要があります。

テナント物件を借りるとき、退去するときに「知らなかった」「間違っていた」では、後々予想外のトラブルが発生する可能性もありますので、事前にしっかりと理解を深めておきましょう。

原状回復、内装解体、スケルトンの違いは?

閉店や移転に伴って、テナント物件をオーナーや管理会社に明け渡す際、借主は契約内容に従って「借りていた物件を契約当時の状態に戻す」義務が発生します。

しかし、ひとくちに「契約当時の状態に戻す」と言っても、何を撤去・処分するのか、どこまでの状態に戻すのかで、工事の方法や見積もりが異なります。

ここでは、混同しやすい「原状回復」「内装解体」「スケルトン」の違いについて解説していきます。

原状回復とは

店舗やオフィスとしてテナント物件を契約する際、退去時に借主側で原状回復をおこなうことが条件となっていることがほとんどです。

原状回復を簡単に言うと「借りていた物件を契約当時の状態まで回復する」となります。

テナント物件を借りる場合、店舗で使い勝手がいいように壁紙を貼り替えたり、テーブルやイスなどを設置したり、カーペットを敷いたりというような、さまざまな工夫を施されることが大半でしょう。

このように、新設・増設・移設したものを解体工事業者などに依頼して撤去してもらい、賃貸契約を結んだ当時の状態に戻してオーナーや管理会社などの貸主に明け渡すことを、一般的に原状回復と呼んでいます。

内装解体とは

内装解体とは、原状回復工事において店舗やオフィスの内装を撤去するための工事を指します。

たとえば、照明器具、インテリア、什器などを店舗の雰囲気に合わせて設置していた場合、退去時にはこれらを内装解体工事によって撤去・処分して、テナント物件を契約当時の状態まで回復する必要があります。

通常の原状回復工事の内容には、内装解体の工事が組み込まれていることが一般的です。

スケルトンとは

スケルトンには「人間や動物の骨格」や「骨組み・構造」という意味があり、転じてスケルトン工事とは、建物の構造部分以外をすべて取り除く工事のことを指します。

たとえば、壁と床の基本構造しかない状態のテナント物件を借りて、壁紙を貼ったりカーペットを敷いたりして内装工事をした場合、退去時にはこれらをすべて撤去する必要があります。

一方、居抜きで借りたテナント物件は、契約時に設備や什器、家具などが付いた状態がほとんどなので、スケルトン工事をおこなうことはありません。

つまり、物件の契約時の状態によっては原状回復=スケルトンを指すこともあり、契約書にも「退去時にスケルトン工事をおこなうこと」を条件とする場合があるので注意が必要です。

トラブルを避けるためのポイント

契約時・退去時に貸主や工事の業者との間で発生するトラブルを避けるために、次のようなポイントに注意しておきましょう。

1.契約書の特約を確認すること

契約書は文字も多く、聞き慣れない不動産用語がたくさん並んでいるため、隅々まで読むのが面倒なものです。

しかし、借主にとって不利な条件になっている契約に署名・押印してしまうと、のちにトラブルの原因となる場合もあります。

契約書には「特約」が設けられていることがあり、たとえば退去時に照明やエアコンなどの設備を新品に交換したり、カーペットのクリーニング代や畳張り替え費用などを借主負担としたりなど、借主に原則以上の原状回復の負担を求めるケースも多いようです。

無用なトラブルを避けるためには、契約時に特約の内容をしっかりと確認して、原状回復の負担が大きすぎると感じたら、すぐに契約内容を見直すようにしましょう。

2.原状回復を行う業者について確認すること

退去時の原状回復工事の費用を負担するのは借主側です。できれば「業者は自分で選びたい」「安く工事を請け負ってくれるところにしたい」というのが借主側の本音ではないでしょうか?

しかし、テナント物件を明け渡す際は、貸主側が指定する業者が原状回復工事をおこなうのが一般的で、契約書にもその旨が記載されている場合がほとんどです。

退去時になって、原状回復の資材の数量が水増し請求されていたり、人員が必要以上に手配されていたりといったケースも少なからずあります。

無用なトラブルを避けるためにも、どのような業者が工事をおこなうのか、工事の内容や範囲はどこまでか、契約前にしっかりと確認しておきましょう。

3.業者、貸主と三者間の立会いを行うこと

原状回復に関するトラブルを避けるためには、契約書の内容をしっかりと確認することと併せて、立ち会いによって実際に目で見て確認しておくことも重要です。

入居前は貸主の立ち会いのもと「契約時の建物はどのような状態か」を確認します。最初から破損している箇所があれば、その部分について借主側に原状回復の義務はありません。

原状回復工事をおこなう前には、見積もり作成の立ち会いが必要です。

このタイミングでは、修繕の必要がある箇所を確認したり、貸主や業者から原状回復工事の内容について説明を聞いたりします。どのような工事がおこなわれるのか、本当に必要な工事なのか、立ち会いによってしっかりと確認します。

しかし、実際は聞き慣れない原状回復の工法など専門用語が飛び交い、意味が理解できないままなんとなく聞き流してしまうことがほとんどです。そのため、専門的な知識を持つ業者に立ち会いの同行・代理をお願いする方法もあります。

入居前・原状回復の見積もり作成前の立ち会いは必須ですが、原状回復のトラブルを回避するためには、最後に原状回復完了後の立会いもやっておきたいところです。

退去後に貸主から「原状回復工事が不十分」などと言われてトラブルが発生することを防ぐために、工事終了後にもう一度、借主、貸主、業者の三者による立ち会いをおこないます。

まとめ

似ているようで異なる「原状回復」「内装解体」「スケルトン」について、それぞれの意味や違いについてご理解いただけたでしょうか?

3つの工事の違いをしっかりと理解していないと、思わぬところで余計な費用がかかってしまうことがあります。

原状回復のトラブルを回避するためにも、原状回復工事について理解した上で、契約前には契約内容・特約に目を通し、退去前には工事の見積もりが適切かどうか、実際に立ち会って確認することが重要です。

  |