賃貸物件の原状回復特約とハウスクリーニング特約について

2018年04月18日(水)

賃貸物件の原状回復に関するトラブルで最も多いのがハウスクリーニングの費用を借主・貸主のどちらが負担するかという問題です。通常、ハウスクリーニングは新たに貸し出すために貸主が行うものとされていますが、借主との間に特約が締結されていれば、適切な金額の範囲内で費用を請求することができます。

ここでは、原状回復やハウスクリーニング特約の内容と、原状回復が必要な範囲、借主が負担するべきケースについて解説します。

ハウスクリーニング費用を借主負担にできる?

賃貸借契約特約とは

国土交通省のガイドラインは、賃貸契約を締結するにあたり、貸主は借主に「一般的な原状回復の範囲を超えた一定の修繕等の義務を負わせることができる」としています。つまり、ハウスクリーニングの費用を借主負担とすることは契約上可能なのです。

しかし、消費者の利益を一方的に害する契約は無効(消費者契約法第10条)となるため、特約を設け、有効とするには、賃借人に特別な負担を課するために必要な要件を満たさなくてはなりません。

  • 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
  • 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること
  • 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

要約すると、特約が適切な内容であり、賃借人がその内容を了解していなくてはならないということです。借主側が「原状回復義務を超えた」部分に関する契約であることを認識していないと、退去時のトラブルに繋がるため、契約書にもその旨を明確に記載する必要があります。

「原状回復義務を超える」とはどの程度を言う?

賃貸物件に限らず、建物の壁や床は、時間の経過とともに劣化・損耗(経年劣化・通常損耗)します。ハウスクリーニングなどの原状回復にかかる費用が貸主負担となっているのは、あらかじめ経年劣化や通常損耗を想定して賃料を設定していると考えられるからです。

しかし、すでに述べたように、賃貸借契約にハウスクリーニングに関する特約が加えられていれば、原状回復義務を超える部分について、借主に請求することができます。

A. 賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの(経年劣化・通常損耗)
B. 賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用等による結果とは言えないもの)
A(+B) 基本的にはAであるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの

国土交通省の原状回復ガイドラインに基づけば、「原状回復義務を超える」とは、BまたはA(+B)に該当する事例となります。例えば、

  • 賃借人の喫煙によるクロス等の変色や臭い
  • 賃借人が風呂・トイレ・洗面台などの清掃を怠ったために生じたカビや黒ずみ、水垢
  • 賃借人が所有するクーラーの水漏れを放置したことによる壁の腐食

など、「借主の故意・過失・善管注意義務違反及びその他通常の使用方法を超える損耗・毀損」については借主負担とすることができるのです。

ただし、繰り返しになりますがこの内容を借主が承知し、費用を負担する意思を表示した上で契約をしていることが前提です。無断で敷金から差し引くことはできません。

原状回復はどの範囲まで必要か

経年劣化・通常損耗とは

原状回復は退去する賃借人が「入居した時の状態に戻す」ことですが、すでに述べたように、

  • 日照による畳やカーペット、クロスの色あせ
  • 家具や電化製品の設置による床のへこみやカーペットの設置跡
  • 壁にポスターなどを貼ったピンの跡

などの経年劣化・通常損耗は除外されます。
すると問題になってくるのが「どの程度を原状回復とするか」ということです。

例えば、壁にボード交換など、修理が必要なほどの瑕疵があった場合、借主が「入居時からあった」と主張すれば「あった」「なかった」と水掛け論になる恐れがあります。こうしたトラブルを防ぐために、借主だけでなく貸主も契約時の賃貸物件の状態を画像や記録に残しておくとよいでしょう。

ハウスクリーニング特約には金額を明示する

また、特約が適用されるには、「暴利的でないこと」という要件があります。ハウスクリーニング特約をつける場合には、相場に見合った金額を設定し、契約時に借主に明示することが必要です。

ハウスクリーニングの費用は業者によって差がありますが、1平方メートルあたり1,000円前後が一般的です。相場より明らかに高い金額で設定すると、特約自体が無効となる恐れがあるので、貸主は注意しましょう。契約書に「借主は退去時にハウスクリーニング費用として〇〇円を支払う」など、と特約内容と金額を具体的に記載しておくと、借主・貸主の認識のずれを防ぐのにも有効です。

まとめ

ハウスクリーニング費用は貸主負担が原則です。

しかし、契約時にハウスクリーニング特約をつけておくことで、借主が非常識な使い方をしていた場合にまで負担しなくてはならないというリスクを軽減できます。

そのためには、契約書にハウスクリーニング特約を謳い、借主・貸主双方が確認・合意した上で賃貸契約を結ぶことが重要です。

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