オフィス原状回復の範囲はどこまで?経年劣化と通常損耗

2018年02月21日(水)

オフィスを退去する際、賃借人(借主)には物件に入居したときの状態に戻す原状回復義務が生じます。その原状回復工事の過程で、借主と貸主の間で起こりがちなトラブルに、「どこまでを原状回復の範囲とするのか」「どこからが経年劣化・通常損耗とするのか」という問題があります。

今回は、原状回復工事で起こりがちなトラブルを回避するために、原状回復と経年劣化・通常損耗の意味や範囲、工事費用を負担すべき対象者について解説していきます。

経年劣化は原状回復の範囲に含まれる?

経年劣化・通常損耗の範囲とは

経年劣化とはその名のとおり、長年の使用によって建物の壁や床が変色したり、汚れてきたりすることです。また、雨風や温度・湿度によるものだけでなく、通常の方法で使い続けたことによる摩耗や損耗は通常損耗に含まれます。

たとえば、次のような場合は経年劣化・通常損耗に当てはまります。

  • 日焼けによるフローリングやクロスの色あせ
  • ドアのネジやヒンジが錆びてスムーズに動かない
  • テレビや冷蔵庫を置いていた壁の黒ずみ
  • 家具の設置による床やカーペットのヘコミ
  • 壁に空いた画鋲の穴(程度による)

例として挙げたものは、日々の生活のなかで最低限の注意をはらい、きちんと掃除をしていても発生する劣化や損耗です。入居していた間についた物件の損耗が経年劣化・通常損耗に当てはまるのか、それとも故意についたものなのか、退去前にしっかりと把握しておく必要があります。

経年劣化の修復費用は「貸主が負担」が基本

結論から言うと、経年劣化や通常損耗の修復費用は、基本的に貸主側が負担することになっています。なぜなら、物件の賃料には、経年劣化や通常損耗の修復費用も含んだ金額が設定されていると考えられるからです。

ただし、あくまでも一般論であって、契約内容によっては借主側に原状回復費用の負担が生じる場合があることは留意しておく必要があります。

トラブルを防ぐために入居時に確認すべき点

契約書・特約をしっかり確認しておく

先ほど触れたように、何を経年劣化・通常損耗と見るかは、入居時に交わした契約の内容によります。契約書によっては、「経年劣化によって生じた損耗は、借主側が原状回復工事の費用を負担する」と記載されている場合もあるのです。

とくにオフィスの場合は住宅と違い、事業の内容に合わせて内装工事をしたり、不特定多数の人が出入りしたりします。実際にオフィスとして利用した物件の原状回復工事は、経年劣化や通常損耗も含めて、貸主側の義務としているケースも少なくないようです。

そのため、入居時には必ず契約書に目を通し、退去時の注意事項に納得したうえで契約するようにしましょう。後になってトラブルに発展する可能性が無いとも言い切れません。

入居時の室内の状況を確認しておく

原状回復工事のトラブルを避けるためには、入居後すぐに室内の状況を確認しておくことも大切です。キズや汚れのなかには、入居前にすでにあったものも含まれますので、見るべき場所は多岐にわたります。

入居時には壁や床に汚れやキズがないかチェックし、あった場合は写真に撮っておくなどして証拠を残しておきましょう。また、設備を使っていないのに不具合があった場合は、貸主に報告することも必要です。

まとめ

本来の賃貸契約では、物件の経年劣化・通常損耗は借主側の負担すべきものとされています。

しかし、オフィス契約の場合は契約内容が第一に優先されるため、一般的には経年劣化や通常損耗と見られる損傷も、借主側が原状回復義務を負わなければならないケースも少なくありません。

後々の原状回復工事のトラブルを避けるために、契約時には契約内容や特約にもしっかりと目を通し、借主側と貸主側で経年劣化・通常損耗の認識共有をおこなうことが大切です。

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