原状回復費用は敷金から?負担割合と損しない交渉ポイント
「賃貸の退去時、敷金はいくら戻る?」
「原状回復費用を敷金から不当に請求され、敷金が全額戻ってこないのでは…」と不安になっていませんか。
正しい知識は、あなたの敷金を守るために重要です。
この記事では、国のガイドラインや民法改正に基づき、借主の負担範囲を徹底解説します。
フローリングの傷やエアコン清掃といった具体例から、壁紙の変色やカビによる汚れなどのケース、敷金なし物件で費用が足りない場合や、敷金との相殺ルールまで網羅しています。
この記事を読めば、退去時のトラブルを回避し、敷金の全額返還や適正な金額で納得して敷金を受け取れるはずです。
目次
敷金と原状回復の関係性とは?
賃貸物件を退去する際、敷金と原状回復の関係は最も重要な知識の一つです。この章では、両者の基本的なルールと、なぜこれらがセットで語られるのかを解説します。
- 敷金の法的定義と返還される仕組み
- 原状回復義務の基本的な考え方と借主・貸主の負担区分
- 2020年民法改正による明文化のポイントとその意義
敷金の役割と返還時期
敷金の役割は、家賃の滞納や借主が部屋に与えた損害の修理費用を保証するための担保金です。
したがって、退去時に特別な問題がなければ、原則として借主に返還されるべきお金であることが法律で明確に定められています。
2020年4月に施行された改正民法により、敷金は家賃などの支払いを担保する目的で預けられる金銭と定義されました。
これにより、以前は地域や慣習によって解釈が曖昧だった敷金の性質が、全国共通の法的なルールとして統一されたのです。
具体的には、借主が家賃を滞納してしまったり、不注意で設備を壊してしまったりした場合、貸主はその修理や補填にかかる費用を敷金から差し引くことができます。
この精算は、借主が物件を完全に明け渡した後に行われます。
貸主は未払いの家賃や原状回復費用などを計算し、その合計額を預かった敷金の総額から差し引きます。
そして、残った金額が最終的に借主の指定口座へ返還されるという流れになります。
つまり、敷金は貸主が自由に使えるお金では決してなく、あくまで万が一の債務を保証するために預かっている金銭という関係性を理解しておくことが、退去時の認識のずれを防ぐために不可欠です。
出典:e-Gov民法
原状回復義務の基本的な考え方
原状回復義務の基本的な考え方とは、借主が故意や過失によって部屋に与えた損傷を元に戻すことであり、普通に生活する中で自然に生じる損耗まで修繕することではありません。
この区別を正しく理解することが、敷金から差し引かれる費用を適正に判断する上で極めて重要になります。
法律では、借主が負担する義務の範囲を明確に定めています。
具体的にどのような損傷がどちらの負担になるのか、以下の表でその違いを確認しましょう。
| 貸主負担となるケース (通常損耗・経年変化) |
借主負担となるケース (故意・過失など) |
| 家具の設置による床やカーペットのへこみ | 飲みこぼしなどを放置したことによるシミやカビ |
| 日光による壁紙やフローリングの色あせ・変色 | タバコのヤニによる壁紙の黄ばみや臭い |
| テレビ裏などの電気ヤケによる壁の黒ずみ | ペットによる柱や壁の傷・臭い |
| 画鋲やピンなどの小さな穴 | 掃除を怠ったことによるキッチンの油汚れや浴室のカビ |
| 時間の経過による畳の変色やすり切れ | 重い物を落としてできた床の傷やへこみ |
このように、原状回復の義務はあくまで通常の使用を超える範囲の損耗に限られます。この負担区分の考え方が、敷金から差し引かれる費用の算出根拠となるのです。
2020年民法改正による明文化のポイント
2020年の民法改正における最大のポイントは、これまで慣習やガイドラインに頼っていた敷金と原状回復のルールが、正式な法律として明文化されたことです。
これにより、借主の権利が以前よりも明確に保護されるようになり、全国で統一された基準で判断されるようになりました。
改正以前は、国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が存在していましたが、これには法的な拘束力がありませんでした。
そのため、地域や不動産会社によっては独自の解釈がなされ、敷金の返還をめぐるトラブルが絶えなかったのです。
しかし、この民法改正によって、敷金の法的な定義や原状回復義務の範囲が法律の条文として具体的に示されました。
例えば、敷金は物件を明け渡した後に返還義務が生じることや、通常損耗や経年変化については借主が原状回復義務を負わないことなどが、誰の目にも明らかなルールとなったのです。
この法改正は、トラブルが起きた際の判断の優先順位も明確にしました。
最も優先されるのは法律であり、次に賃貸借契約書に定められた特約、そしてガイドラインは契約内容を解釈する上での参考資料という位置づけになります。
この民法改正によって、敷金と原状回復の関係性がより公平で透明性の高いものとなり、借主は正当な根拠に基づいて貸主と交渉できるようになったのです。
出典:e-Gov民法
敷金から原状回復費用が差し引かれる仕組み
退去時の費用精算において、敷金から原状回復費用がどのように差し引かれるのかを知ることは重要です。この章では、費用の見積もりから敷金が実際に返還されるまでの具体的な手順と計算方法を解説します。
- 原状回復費用の見積もりから確定までの具体的な手順
- 敷金からの差し引き計算方法と負担割合の決め方
- 差し引き後の返還・追加請求の流れとタイミング
原状回復費用の見積もり・確定方法
原状回復費用は、退去の立会い後に貸主側が専門業者へ見積もりを依頼して算定するのが一般的な手順です。
この見積もりは、借主が負担すべき損傷、つまり故意や過失によって生じた部分の修繕にかかる費用を正確に把握するために行われます。
立会いの時点では、あくまで損傷箇所の確認が中心であり、その場で具体的な金額が確定することはほとんどありません。
貸主や管理会社は、立会いで確認した内容に基づき、リフォーム業者や清掃業者といった複数の専門業者から見積もりを取得します。
その後、各業者から提示された見積もり内容を比較検討し、最も妥当な金額をもって、借主が負担する原状回復費用を最終的に確定させます。
ここで重要なのは、見積もりの内容を借主自身が確認できるという点です。
後日送付される敷金精算書には、どの箇所の修繕にいくらかかったのかという費用の内訳が記載されています。
もし提示された見積もり金額に疑問を感じた場合は、遠慮なくその算出根拠について説明を求められます。
敷金からの差し引き計算方法
敷金からの差し引き計算は「返還額=敷金総額-(原状回復費用+未払い家賃等)」の基本計算式に従って行われます。
この計算で最も重要な要素が、経年劣化を考慮した負担割合の考え方です。
建物や設備は時間の経過と共に価値が減少するため、損傷させた場合でも新品価格の全額を負担する必要はありません。
負担割合は、その設備の耐用年数と入居期間によって決まります。国土交通省のガイドラインで示されている主な設備の耐用年数の目安は、以下の表の通りです。
| 設備・内装 | 耐用年数 |
| 壁紙(クロス)、クッションフロア | 6年 |
| カーペット、畳床 | 6年 |
| 流し台 | 5年 |
| エアコン、ガスコンロ | 6年 |
| 便器、洗面台 | 15年 |
これを例に計算方法を説明します。
もし張り替えに6万円かかる壁紙(耐用年数6年)を汚してしまったとします。あなたの入居期間が3年だった場合、壁紙の価値は半分になっていると見なされるため、あなたの負担割合も50%となり、負担額は3万円になります。
入居期間が6年を超えていた場合、その壁紙の価値は1円と見なされるため、理論上の負担額も1円となるのです。
差し引き後の返還・追加請求の流れ
原状回復費用が確定し、敷金からの差し引き計算が終わると、最終的な精算手続きへと進みます。
退去立会いから敷金が精算されるまでの一般的な流れと期間の目安を、以下の表にまとめました。
| 段階 | 時期(退去後) | 主な内容 |
| 1. 費用確定 | 約1~2週間 | 貸主側が業者見積もりを基に原状回復費用を確定させる。 |
| 2. 精算書通知 | 約2週間前後 | 貸主から敷金精算書が郵送などで届く。 |
| 3. 精算完了 | 約1ヶ月後 | 【敷金が残る場合】 指定口座へ差額が振り込まれる。 【費用が不足する場合】 指定された期日までに不足分を支払う。 |
まずは貸主から送付される敷金精算書の内容をしっかり確認することが重要です。
もし精算書の内容に納得がいかない点があれば、その場ですぐに同意せず、まずは貸主や管理会社へ連絡し、疑問点について説明を求めましょう。
話し合いで解決しない場合は、国民生活センターや消費生活センターといった公的な相談窓口を利用することもできます。
原状回復の負担範囲と法的ルールとは?
退去時のトラブルを防ぐためには、原状回復の負担範囲を定めた法的ルールを正しく知ることが不可欠です。この章では、どのような損傷が借主の負担となり、何が貸主の負担となるのか、その明確な境界線を解説します。
- 借主負担となる原状回復の具体的な範囲と判断基準
- 貸主負担となる経年劣化の範囲と実例
- 原状回復の基準となる国土交通省ガイドライン
借主負担となる原状回復の範囲
借主が原状回復の費用を負担する範囲は、自身の不注意や通常とは言えない使用方法によって生じさせた損傷に限られます。
これは、賃貸物件を管理する上で求められる「善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)」を怠った場合に発生する責任と考えると分かりやすいでしょう。法律やガイドラインでは、借主負担となる損傷をその原因別に分類しています。
| 損傷の原因 | 具体的な例 |
| 故意・過失 |
|
| 通常以上の使用 |
|
| 手入れ不足 |
|
これらの例に共通するのは、借主の少しの注意や日常的な手入れによって防げたはずの損傷であるという点です。このような損傷の修繕費用は、敷金から差し引かれるものです。
貸主負担となる経年劣化の範囲
貸主が原状回復の費用を負担する範囲は、時間の経過と共に自然に発生する建物の劣化や、普通に生活していれば生じてしまう軽微な損耗です。
これらは経年劣化や通常損耗と呼ばれ、その修繕費用は借主が毎月支払う家賃の中に含まれていると法的に解釈されています。したがって、これらの修繕費用を退去時に借主へ別途請求することは原則として認められていません。
| 損耗の種類 | 具体的な例 |
| 経年劣化 |
|
| 通常損耗 |
|
| 次の入居者確保のため |
|
ただし、ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用などは、賃貸借契約書の特約によって借主負担と定められている場合もあるため、契約内容の確認は必要不可欠です。
国土交通省ガイドラインの内容
原状回復の負担範囲を判断する上で最も重要な法的ルールとなるのが、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。
このガイドラインは、賃貸人と賃借人のトラブルを未然に防ぎ、もし発生した場合でも円滑な解決を図ることを目的として作成されました。
裁判所の判例などを基に作られており、実際のトラブル解決の場でも重要な判断基準として広く活用されています。
ガイドラインの核となる考え方は、前述した借主負担と貸主負担の範囲を明確に区分することです。そして、その判断基準として経過年数、つまり時間の経過によって物の価値が減少するという概念を具体的に示している点が非常に重要です。
2020年の民法改正により、このガイドラインで示されてきた考え方の多くが法律として明文化されました。
これにより、ガイドラインは単なる指針ではなく、法的な裏付けを持つ重要な基準としての位置づけがより強固になったのです。
敷金不足・敷金なしの場合の対処法
退去時に原状回復費用が敷金を超えてしまったり、そもそも敷金がない物件だったりする場合の対処法を知っておくことは大切です。この章では、追加の支払いが発生した際の適切な対応手順と、敷金なし物件特有の注意点を具体的に解説します。
- 敷金が原状回復費用に足りない場合の具体的な対処法と交渉術
- 敷金なし物件の退去費用の仕組みと注意点
- 貸主からの追加請求への適切な対応手順と確認方法
敷金が原状回復費用に足りない場合の対処法
原状回復費用が預けた敷金の額を上回り、不足分を追加で請求された場合でも、まずは冷静にその内容を確認することが対処法の第一歩です。
請求書が届いたからといって、慌ててすぐに全額を支払う必要はありません。借主には、請求された費用の内訳と算出根拠について、貸主側へ詳細な説明を求める権利があります。
まず行うべきは、送られてきた敷金精算書や請求書に記載されている項目を一つひとつ丁寧にチェックすることです。
もし不明な点や、あまりに高額だと感じる項目があれば、その部分の見積書や作業前後の写真といった客観的な資料の提示を求めましょう。
特に重要な確認ポイントは、経年劣化による負担割合の減額が適切に行われているかという点です。
例えば、耐用年数が6年の壁紙を全面張り替える費用が10万円だったとして、入居期間が4年だった場合、借主の負担は残存価値である3分の1、約33,000円が上限となるはずです。
もし10万円全額が請求されていれば、それは明らかに過大な請求であり、交渉によって減額を求めることができます。
敷金なし物件の退去費用の考え方
敷金なし物件は、入居時の初期費用を大幅に抑えられるという大きな魅力です。
しかし、これは退去時に支払うべき費用が免除されるわけではなく、単に支払いのタイミングが後ろにずれているだけ、という考え方を理解しておくことが極めて重要です。
敷金がある物件であれば、原状回復費用やハウスクリーニング代は預けた敷金の中から差し引かれます。
一方で、敷金なし物件の場合は、これらの費用を退去時に実費で、かつ現金で一括して支払う必要があります。これが敷金なし物件の基本的な仕組みです。
そのため、退去時にはある程度のまとまった出費が発生することをあらかじめ想定し、計画的に準備しておく必要があります。
敷金なし物件を選ぶ際には、この退去時の費用負担について、契約前に必ず確認しておくことが注意点です。
貸主からの追加請求への対応手順
貸主から敷金を超える追加請求を受けた際の対応手順は、段階を踏んで冷静に進めることが不可欠です。
最初の対応手順は、請求内容の書面による詳細な説明を求めることです。
電話や口頭での説明だけでなく、必ず敷金精算書や請求書、そしてその根拠となる見積書を送付してもらいましょう。
次の手順は、その書類と賃貸借契約書、そして国土交通省のガイドラインを照合することです。
契約書に記載のない項目が請求されていないか、特約の内容が法律やガイドラインの考え方から大きく逸脱していないかを確認します。
もし納得できない点や不当だと思われる請求が見つかった場合は、その具体的な箇所と理由を明確にして、貸主や管理会社に書面で通知します。
当事者間の話し合いで解決が難しい場合は、最終的な対応手順として、国民生活センターや各自治体の消費生活相談窓口といった第三者機関へ相談することを検討します。
原状回復でトラブルになりやすいポイントは?
原状回復に関するトラブルの多くは、いくつかの特定のポイントに集中する傾向があります。この章では、トラブルの火種となりやすい入居時、退去立会い時、そして契約書確認時の3つの場面に焦点を当て、具体的な予防策と対処法を解説します。
- 入居時の物件状況確認で見落としがちな重要ポイント
- 退去時立会いでトラブルを避けるための具体的な注意事項
- 不当請求を防ぐための契約書確認方法と対処術
入居時の物件状況確認の注意点
原状回復トラブルを未然に防ぐために最も重要なポイントは、入居時の物件状況を正確に記録し、貸主側と共有しておくことです。
退去時に発見された損傷が、元からあったものなのか、それとも入居中についたものなのかを客観的に証明する証拠を残すことが、将来の自分を守ることにつながります。
多くの賃貸契約では、入居時に「現況確認書」という書類が渡されます。
この書類の作成を疎かにしてしまうと、退去時に元からあった損傷の修理費用まで請求されてしまうという、最も典型的なトラブルに巻き込まれる原因となります。
物件の鍵を受け取ったら、荷物を運び込む前に、部屋の隅々まで注意深く確認する時間を必ず確保しましょう。
発見した損傷や不具合は、大小にかかわらず全て現況確認書に記入し、さらに日付のわかる状態でスマートフォンのカメラなどで撮影しておきます。
この現況確認書と写真は、定められた期限内に必ず不動産会社へ提出し、その控えを契約書と共に大切に保管しておくことが、トラブル回避の基本です。
退去時立会いで気を付けること
退去時の立会いは、原状回復の費用負担を最終的に確定させるための非常に重要な話し合いの場です。
この場で安易に同意や署名をしてしまうと、後から覆すことが困難になるため、十分な準備と冷静な対応が求められます。
立会いを成功させるためのポイントは、事前準備を万全にしておくことです。当日は、入居時に作成した現況確認書の控えと撮影した写真を必ず持参しましょう。
立会い当日は、管理会社の担当者などから指摘された損傷箇所について、一つひとつ丁寧に確認していきます。
もし、その場で提示された修繕内容や費用負担に少しでも納得できない点があれば、絶対にその場で合意書などに署名をしてはいけません。
必ず、「見積もり内容を一度持ち帰って検討したい」旨を伝え、後日、詳細な内訳が記載された見積書を送付してもらうように依頼しましょう。
不当請求を避けるための契約書確認方法
原状回復に関する不当な請求の多くは、賃貸借契約書に記載された「特約条項」が根拠となっています。
法律やガイドラインの原則よりも契約書の内容が優先される場合があるため、契約内容を事前に正確に理解しておくことが、トラブルを避けるための最も確実な方法です。
特に注意して確認すべきポイントは、借主の負担を通常よりも重くする可能性のある特約です。
代表例が、「ハウスクリーニング費用」に関する特約です。本来ハウスクリーニングは貸主負担が原則ですが、特約で借主負担と定められているケースは非常に多く、これは法的に有効と判断される可能性が高いです。
また、「敷金償却」や「敷引き」と呼ばれる特約にも注意が必要で、部屋の状態に関わらず、退去時に敷金の一部または全部を返還しないという内容の特約です。
もし契約内容に不明な点や、あまりに一方的に不利だと感じる特約があれば、契約を結ぶ前に不動産会社に説明を求め、必要であれば内容の修正を交渉することも可能です。
退去手続きの流れ・タイムラインの具体例
賃貸物件からの退去をスムーズに進めるためには、手続き全体の流れと時間軸を把握しておくことが大切です。この章では、解約の申し入れから敷金の返還が完了するまでの一連の手順を、具体的なタイムラインに沿って解説します。
- 解約予告から退去日決定までの一連の手続き
- 退去前に必要な清掃・荷物整理の効率的な方法
- 退去立会いから敷金返還までの詳細プロセス
解約予告から退去日決定までの流れ
退去手続きは、まず貸主への解約予告から始まります。
この初動を契約書のルール通りに正しく行うことが、余計な費用を発生させないための重要なポイントです。
| やること | 時期の目安 | 重要なポイント |
| 賃貸借契約書の確認 | 退去を決めたらすぐ | 「解約予告期間」が1ヶ月前か2ヶ月前かなどを正確に把握する。 |
| 解約予告(退去届の提出) | 退去日の1~3ヶ月前 | 電話連絡だけでなく、必ず書面で提出し、記録を残すことが重要。 |
| 引越し業者の手配 | 退去日の1~2ヶ月前 | 複数社から見積もりを取り、早めに予約することで費用を抑えられる。 |
| ライフライン等の手続き | 退去日の2週間~1ヶ月前 | 電気・ガス・水道・インターネット等の移転または解約手続きを行う。 |
解約予告期間を守らない場合、退去後も家賃を支払う義務が生じることがあるため、退去を決意した日にまず契約書を確認する習慣をつけることが大切です。
退去前の清掃・荷物整理のポイント
退去前の部屋の状態は、敷金の返還額に直接影響します。
特に、日常の清掃を怠ったと見なされる汚れは原状回復費用として請求されやすいため、計画的な整理と清掃が費用削減につながります。
| やること | 時期の目安 | 重要なポイント |
| 不用品の処分計画・手配 | 退去日の1ヶ月前から | 粗大ごみは自治体への予約が必要なため、収集日を確認し早めに手配する。 |
| 重点箇所の清掃 | 退去日の1週間前から | キッチン、換気扇の油汚れ、浴室やトイレの水垢・カビは特に念入りに行う。 |
| 備品の確認・準備 | 退去日前日まで | 入居時に貸与された鍵、エアコン等のリモコン、各種取扱説明書をまとめる。 |
プロレベルの完璧な清掃は求められませんが、少なくとも善管注意義務を果たしていたと見なされる状態にしておくことが理想です。
退去立会いから敷金返還までの手順
退去立会いは、敷金の精算額を確定させるための最終確認の場です。
立会い当日の対応と、その後の手続きの流れを正しく理解しておくことで、冷静に交渉し、納得のいく精算を目指すことができます。
引越しを終えてから敷金が返還されるまでの流れは、以下の通りです。
| やること | 時期の目安 | 重要なポイント |
| 退去立会いの日程調整 | 退去日の2週間前まで | 荷物をすべて搬出した後の日時で、管理会社と調整する。 |
| 退去立会い | 引越し当日または後日 | 入居時の書類や写真を持参し、その場で安易に書類へ署名しない。 |
| 敷金精算書の確認 | 退去後1~2週間 | 郵送で届く精算書の内容を精査し、疑問点は必ず問い合わせる。 |
| 敷金返還・追加費用支払い | 退去後約1ヶ月 | 指定口座への入金を確認、または不足分があれば期日までに支払いを行う。 |
立会いでは、指摘された損傷が自分の責任によるものか、経年劣化によるものかを冷静に判断する必要があります。もし請求内容に納得できない場合は、その場で署名せず、必ず詳細な見積書を後日送ってもらうように依頼しましょう。
原状回復を敷金で対応するメリット
入居時に支払う敷金は、退去時において借主の金銭的な負担を軽減するという重要なメリットを持っています。この章では、敷金を預けておくことで、退去時にどのようなメリットがあるのかを具体的に解説します。
- 退去時に費用負担が軽減される
- 追加の現金支払いを避けられる
退去時に費用負担が軽減される
敷金がある物件の最大のメリットは、退去時に発生する原状回復費用を、その場で現金で支払う必要がないという点です。
引越しは何かと出費がかさむ時期であり、新居の契約費用や引越し業者への支払いなど、まとまったお金が必要になります。
そのような状況で、さらに退去する物件の修繕費用を現金で用意するのは、経済的に大きな負担です。
しかし、敷金を預けていれば、原状回復にかかる費用はまずその敷金の中から充当、つまり相殺されることになります。
例えば、原状回復費用が5万円かかったとしても、10万円の敷金を預けていれば、退去時に新たな現金を支払う必要はなく、むしろ差額の5万円が返還されます。
敷金は、将来発生する可能性のある原状回復費用を、家賃の前払いのような形で分割して積み立てていると考えることもできます。
追加の現金支払いを避けられる
敷金は、予期せぬ高額な原状回復費用が発生した際に、追加の現金支払いを避けられるというリスクヘッジのメリットも持っています。
特に、長期間住んでいた物件や、子供が小さかったりペットを飼っていたりした場合、自分たちが思っている以上に部屋に損傷を与えてしまっている可能性があります。
もし退去時に高額な原状回復費用が請求された場合、敷金がなければその全額を自己資金から捻出しなければなりません。
しかし、敷金があれば、たとえ原状回復費用が高額になったとしても、まずはその敷金の範囲内で費用が処理されます。
例えば、敷金を15万円預けている物件で、原状回復費用が12万円の場合、借主は追加で現金を支払う必要はなく、敷金から12万円が差し引かれ、残りの3万円が返還されます。
このリスク回避効果は、敷金なし物件の初期費用の安さというメリットと比較検討する際に、非常に重要な判断材料となるでしょう。
原状回復を敷金で対応するデメリット
多くのメリットがある敷金ですが、契約内容によっては借主にとって不利に働くデメリットが存在します。この章では、敷金が期待通りに返還されないリスクや、追加請求が発生するケースについて解説します。
- 敷金が返還されないリスクがある
- 追加請求が発生する場合がある
敷金が返還されないリスクがある
敷金に関する最大のデメリットは、賃貸借契約書に「敷金償却」や「敷引き」といった特約が含まれている場合、預けた敷金の一部または全部が返還されないリスクがあることです。
この特約は、借主が部屋をどれだけきれいに使用したかに関わらず、退去時に敷金から一定額を機械的に差し引くという内容のものです。
例えば、契約書に「敷金のうち1ヶ月分を償却する」という記載があれば、たとえ原状回復費用が全くかからなかったとしても、家賃1ヶ月分の敷金は自動的に貸主のものとなり、借主には返還されないのです。
このリスクを回避するためには、賃貸借契約を結ぶ前に、契約書の特約事項の欄を隅々まで確認し、敷金償却や敷引きに関する記載がないかを必ずチェックすることが不可欠です。
追加請求が発生する場合がある
敷金は退去時の費用負担を軽減するメリットがありますが、原状回復費用が敷金の額を上回った場合や、契約内容によっては、デメリットとして追加請求が発生する場合があります。
敷金はあくまで預かり金であり、借主が負担すべき費用の上限額を保証するものではないという点を理解しておくことが重要です。
追加請求が発生する最も一般的なケースは、借主の故意や過失による損傷が大きく、その修繕費用が預けた敷金の金額を超えてしまう場合です。
さらに、注意が必要なのは、前述した敷金償却特約と原状回復費用が二重で請求される可能性があることです。
契約内容によっては、敷金償却はあくまで礼金的な性質のものとされ、それとは別個に原状回復費用を請求される場合があります。
このようなデメリットを避けるためには、入居中に物件を丁寧に使用し、大きな損傷を与えないように心がけることが基本です。
まとめ
本記事では、賃貸の退去時にトラブルとなりがちな敷金と原状回復について解説しました。
最も重要なポイントは、借主が負担する「故意・過失による損傷」と、貸主が負担する「経年劣化・通常損耗」の線引きを正しく理解することです。
この基準は国土交通省のガイドラインで明確に定められており、敷金から不当な原状回復費用を請求されるトラブルから身を守るための知識となります。
また、原状回復費用が敷金から差し引かれる仕組みや、費用が足りない場合の対処法、敷金なし物件の注意点を理解することも重要です。
退去立会い前には、この記事の内容とご自身の契約書を再度確認し、落ち着いて交渉に臨みましょう。そうすることで、敷金トラブルを避け、納得のいく形で新生活をスタートできるはずです。
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