オフィスの原状回復、費用相場はいくら?【損しない知識】
オフィス退去時、原状回復の費用に頭を悩ませていませんか?
高額な見積もりに戸惑い、何が適正な原状回復の相場なのか分からず不安を感じている企業担当者は多いはずです。
実績と評判を確認した上で、信頼できる業者選びが重要なポイントとなります。
この記事では、オフィス原状回復の費用相場と、トラブルを避けるための実践的な対策を徹底解説します。
大規模なオフィスほど費用負担が大きくなるため、事前の準備が欠かせません。
高すぎる工事費用を抑え、スムーズな退去を実現するための具体的なノウハウをお届けします。
専門業者と早めに相談することで、予想外の出費を防ぐことができるでしょう。
あなたの不安が、自信に変わる瞬間がここにあります。

オフィス原状回復の費用相場とは
この章では、オフィス原状回復の費用相場について詳しく解説します。
オフィス原状回復の費用相場には主に以下の内容があります。
- 坪単価の基本的な価格帯
- オフィス規模による費用の変動
- ビルのグレードによる価格差
坪単価3〜50万円の相場感
オフィス原状回復の費用は、坪単価で数万円から数十万円と非常に幅広く、一概に相場を示すことは困難です。
これは、オフィスの立地、面積、内装の仕様、設備の状況、契約内容、工事時期など、多くの要因によって大きく変動するためです。
あくまで一般的な目安として、標準的なオフィスでは坪あたり10万円台後半〜20万円台、ハイグレードなオフィスでは30万円以上、シンプルな内装や小規模オフィスでは10万円以下となるケースも見られますが、個別の見積もりで確認することが不可欠です。
そのため、原状回復費用を正確に把握するには、複数の業者から見積もりを取得し、業界相場と比較することが重要です。
事前に詳細な調査を行うことで、予想外の高額請求を防ぐことができるでしょう。
オフィス規模別の費用目安
費用総額も規模によって大きく変動します。
例えば、30坪程度のオフィスで100万円台〜300万円程度、100坪規模で数百万円〜1,000万円を超えるケースも考えられます。
ただし、これは坪単価や工事内容によって大きく変わるため、あくまで大まかなイメージとして捉えてください。
面積が大きくなるほど、工事範囲や撤去物が増え、総額は増加する傾向にあります。
この変動要因は、面積に応じて増える工事範囲、設備の数と複雑さ、撤去や清掃にかかる工数などが挙げられます。
そのため、オフィス移転を計画する際は、規模に応じた適切な予算計画を立てることが不可欠です。
面積が大きくなるほど、原状回復費用が大幅に増加する可能性があるため、早めの準備と正確な見積もり取得が重要となります。
ビルグレード別の相場比較
オフィスビルのグレードによって、原状回復費用は大きく異なります。
オフィスビルのグレード(※一般的にA/B/Cなどで分類されますが、定義は様々です)によっても費用は変動する傾向があります。
一般的に、グレードの高いビル(Aクラスなど)は使用される建材や設備の質が高く、求められる原状回復のレベルも厳格なため、坪単価が比較的高くなる(例:30万円以上)ことがあります。
一方、標準的なビル(Bクラス、Cクラスなど)では、坪単価が相対的に抑えられる(例:10万円台〜20万円台)傾向が見られますが、築年数や管理状態にもよります。
この違いは、内装材の質、設備の複雑さ、そしてメンテナンス基準の厳格さによって生じます。
高グレードのビルほど、使用されている内装材や設備のレベルが高く、原状回復の際の基準も厳しくなる傾向があります。
そのため、入居時にビルのグレードを十分に理解し、退去時の費用を事前に予測しておくことが賢明です。
グレードの高いビルほど、原状回復にかかる費用が高額になることを念頭に置き、予算計画を立てることが重要です。
内装特殊性が費用に与える影響
オフィスの内装に特殊な仕様や設備を導入すると、原状回復費用は大幅に上昇します。
特殊な内装や設備(例:システム天井、OAフロア、造作壁、特殊な電気・空調設備など)を導入した場合、その撤去・復旧には専門技術や特別な処理が必要となり、標準的な工事に比べて坪単価が数万円から十数万円程度、あるいはそれ以上増加する可能性があります。
これは、特殊な材料の撤去と復旧に専門的な技術が必要となり、追加作業が発生するためです。
斬新で機能的な内装は魅力的に見えますが、将来の原状回復費用を事前に検討することが重要です。
特殊な内装を導入する際は、その美しさや機能性だけでなく、退去時に発生する可能性のある高額な原状回復費用も併せて検討しましょう。
相場に幅がある理由
オフィス原状回復の費用相場には大きな幅があり、これは契約内容、利用状況、材料や労働コストの変動など、多様な要因によって生じます。
例えば、長期間の入居によって設備が劣化すれば費用は高くなり、土日や夜間の工事は人件費が割増しになります。
また、ビルオーナーが指定する業者がいる場合、競争原理が働きにくく価格が高止まりする傾向があります。
そのため、原状回復費用を適正に抑えるには、複数の見積もりを比較し、透明性の高い業者を選択することが重要です。
さらに、契約書の内容を丁寧に確認し、不明な点があれば事前に管理会社に確認するなど、慎重な対応が求められます。

原状回復費用が高額になる主な要因
この章では、オフィス退去時の原状回復費用が想定以上に高額になってしまう主な要因について解説します。
原状回復費用を押し上げる要因には主に以下の内容があります。
- 指定業者の利用義務による競争原理の欠如
- ハイグレードビルにおける厳格な原状回復基準
- 時間外・休日工事の割増料金
- 特殊な内装や設備の撤去・復旧コスト
- 資材価格や廃棄物処理費用の変動
指定業者が決められている場合
多くのオフィスビルでは、退去時の原状回復工事を「指定業者」に依頼することが契約で義務付けられています。
この指定業者制度は、ビル全体の管理体制との連携をスムーズにし、一定の工事品質や施工レベルを確保するメリットがある一方で、テナント側にとっては大きなデメリットも存在します。
競争原理が働きにくいため、見積もり金額が市場相場と比較して割高になる傾向が見られることがあります。
一般的に20〜30%程度と言われることもありますが、ケースバイケースです。
また、原状回復工事の施工においては、実際の必要性を超えた範囲を提案することもあります。
指定業者は「ビルの仕様に精通している」という理由で、実は不要な工事項目まで盛り込むケースも少なくありません。
また、多くの場合、指定業者は元請けとして工事を受注し、実際の作業は下請け業者に発注するため、その中間マージンが費用を押し上げています。
あくまで一例ですが、東京都心の60坪オフィスで指定業者から580万円の見積もりに対し、別の業者から380万円の見積もりが提示されたケースもあります。
このような高額見積もりに対しては、詳細な内訳を確認し、不明点は積極的に質問することが重要です。
また、国土交通省のガイドラインを根拠に、指定業者以外への依頼も交渉してみる価値があります。
ハイグレードビルの厳しい基準
築築年数が浅く、グレードの高いオフィスビルほど原状回復の基準が厳しく設定されています。
グレードの高いビルでは坪単価30万円〜40万円、場合によっては50万円を超えるケースも見られ、これは標準的なビルの坪単価10万円台〜20万円台と比較して高額になることがあります。
この大きな費用差は、使用されている内装材や設備自体が高級かつ高価であることが主な理由です。
ハイグレードビルでは「引き渡し時と同等の状態」という基準が厳格に適用され、床材の特殊コーティングや高級壁材の復旧など、細部にわたる原状回復が求められます。
例えば、丸の内や大手町などの超一等地にある築浅のビルでは、大理石の床材や特殊加工された壁材の復旧に莫大なコストがかかります。
あくまで一例ですが、40坪のハイグレードオフィスで、特殊な床材や設備の復旧に高額な費用がかかり、総額で坪単価40万円を超えたケースも報告されています。
ハイグレードビルへの入居を検討する際は、将来の原状回復費用も含めた長期的なコスト計算を行うことが重要です。
工事時間帯の制限による割増
オフィスビルの多くでは、他のテナントへの影響を最小限に抑えるため、騒音や振動を伴う原状回復工事は営業時間外(夜間や休日)に行うよう制限されることがあります。
この時間帯制限が原状回復費用を大幅に押し上げる要因となっています。
夜間や休日の工事では、作業員への割増賃金(例:夜間で25〜30%増、休日で35〜40%増など、業者規定による)や、ビル管理人の立会費(例:1回数万円程度)、その他追加費用が発生し、人件費が大幅に増加(例:25〜50%程度)することで、工事総額が大きく上昇する可能性があります。
あくまで一例ですが、都内のあるビルでは、日中工事の見積もり400万円に対し、夜間・休日工事になったことで520万円(約30%増)になったケースがあります。
また、夜間・休日工事は作業効率も下がりやすく、通常2週間の工期が4週間に延び、その分の管理費・諸経費も増加して総額が1.5倍になったケースもあります。
このような割増を避けるには、3〜4ヶ月前から退去計画を立て、十分な余裕をもったスケジュールを組むことが有効です。
特殊内装や設備の撤去費用
特殊な内装や設備がある場合、その撤去・復旧費用により、原状回復費用が標準的なオフィスと比べて大幅に増加する(場合によっては50〜100%以上になる)可能性があります。
システム天井(5〜10万円/坪追加)、OAフロア(8〜15万円/坪追加)、特殊壁紙(3〜5万円/坪追加)などの内装や、特注の空調システム、セキュリティ設備などを撤去して元の状態に戻すには、専門的な技術や知識を持つ作業員や特殊な機器が必要となります。
また、特殊な内装材は廃棄処分費も高額になり、復旧用の材料調達も難しく費用がかさみます。
あくまで一例ですが、特殊な内装を施した60坪のオフィスで、通常300万円程度の費用が650万円にまで増加したケースもあります。
特に水回りを改修した場合は原状回復に特に高額な費用がかかり、キッチンスペースの撤去だけで100万円以上かかったケースも報告されています。
オフィスの内装計画段階から将来の撤去コストを考慮したデザインや設備選定を行うことが重要で、すでに特殊内装がある場合は次のテナントが内装をそのまま利用できる「居抜き」での退去交渉も効果的な選択肢となります。
資材価格と処分費の高騰
近年の建設資材価格や人件費、産業廃棄物処理費の上昇は、原状回復費用を押し上げる大きな要因です。
特に都心部では、廃棄物処理費が工事費全体のかなりの割合(例:10%前後)を占めることもあります。
この背景には、原材料価格の上昇、建設業界の人手不足による人件費増加、環境規制の強化による廃棄物処理コストの上昇などがあります。
壁紙や床材などの内装材は石油製品を原料としているものが多く、原油価格の変動に左右されやすいという特徴もあります。
さらに、東京オリンピック後も続く都心部の再開発ラッシュにより建設需要が高まり、工事の人件費や資材調達コストが上昇しています。
これらの上昇に対応するには、見積書の廃棄物処理費の内訳を詳細に確認し、適正価格(1.5〜3万円/坪が目安)かどうかをチェックすることが重要です。

契約における原状回復義務の範囲
この章では、オフィス退去時に直面する原状回復義務の範囲について詳しく解説します。
原状回復義務の範囲を正確に把握することで、不要な費用負担を避け、適正な原状回復工事を実現するための重要なポイントを紹介します。
- 賃貸借契約書における原状回復条項の確認ポイント
- 通常損耗と借主負担の区別の方法
- スケルトン戻しが必要かどうかの判断基準
- 国土交通省の原状回復ガイドラインの効果的な活用方法
契約書確認の重要ポイント
オフィス原状回復費用の適正化には、賃貸借契約書の詳細確認が最初の重要な取り組みです。
契約書によって原状回復の範囲は大きく異なり、スケルトン状態までの回復が必要な場合と壁紙の張替え程度で済む場合では、費用に数百万円もの差が生じることがあります。
確認すべき重要項目としては、「原状回復」に関する条項の内容です。
具体的には、通常損耗や経年変化の取扱い(負担区分)、借主が行った造作や変更に関する取り扱い、原状回復工事の範囲(例:スケルトン返し義務の有無)、敷金・保証金からの控除に関する規定などを確認します。
特に注目すべきは2020年4月の民法改正です。
改正後は契約内容によっては経年劣化部分が貸主負担となる原則がより明確化されましたが、オフィス賃貸では特約により借主負担とされるケースも依然として多いため、契約時期と特約の有無・内容の確認が重要です。
契約書の文言が曖昧だったり専門用語が理解しにくい場合は、不動産会社やビル管理会社に積極的に確認し、重要な回答は書面で残しておくことをおすすめします。
また入居時には、現状を写真や動画で詳細に記録しておくことで、退去時の過剰な要求に対する有力な交渉材料となります。
通常損耗と借主負担の区別
通常損耗とは、日常的な使用で生じる建物の損耗や経年劣化のことで、原則として借主負担ではありません(民法第621条)。
しかし、オフィス契約では特約によって「通常損耗も借主負担」とされているケースが多いのが実情です。
この特約の有効性については争いになることもあります。
通常損耗と判断される具体例としては、国土交通省のガイドライン等で示されているように、家具設置による床のへこみや跡、壁紙の通常使用による日焼け(変色)、画鋲の跡などが挙げられます。
通常の使用を超えるもの、例えば重量物を落とした跡や、大量のポスター掲示による変色などは特別損耗と判断される可能性があります 。
一方、喫煙による壁紙の著しいヤニ汚れ、設備の不適切な使用による破損、貸主の承諾なしに行った改造や増設などは、借主の故意・過失や用法違反による特別損耗として、明らかに借主負担となります。
退去前の打ち合わせでは、通常損耗に該当する箇所を具体的に指摘し、それらの修繕費用が見積もりに含まれていないか確認することが重要です。
国土交通省のガイドラインを印刷して持参すると交渉の助けになりますし、入居時と退去時の状態を比較できるよう写真記録を活用しましょう。
特約があっても広範囲すぎる原状回復要求は法的に問題がある可能性もあるため、必要に応じて専門家に相談することも検討すべきです。
スケルトン戻しの判断基準
スケルトン戻しとは、内装や設備をすべて撤去し、コンクリート打ちっぱなしの状態まで戻す最も厳しい形態の原状回復です。
オフィスビルでは一般的に壁紙や床材がある状態までの回復で済むことが多いですが、契約内容によってはスケルトン戻しが求められることもあります。
スケルトン戻しが必要かどうかの判断基準としては、賃貸借契約書での明記が最も重要です。「スケルトン渡し・スケルトン返し」といった条項があれば、原則として義務を負います。
特に入居時がスケルトン状態だった場合や、物件の種類(例:商業ビルや路面店など)、テナントが大規模な改装を行った場合なども、スケルトン戻しを要求される可能性が高まります。
スケルトン戻しが必要な場合、費用は通常の原状回復と比べて1.5〜2倍程度になることが一般的ですが、築年数が経過したビルでは現実的な復旧範囲を交渉できる可能性もあります。
次のテナントが決まっており、内装を引き継ぎたい意向がある場合は、「居抜き」での引き渡しをオーナーに交渉するのも効果的な費用削減策です。
国交省ガイドラインの活用法
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、不当な請求から自社を守る交渉を有利に進めるための根拠となります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、法的拘束力はないものの、賃貸借契約における原状回復の考え方や費用負担のあり方を示した重要な指針であり、裁判例でもしばしば参考にされています。
特に、通常損耗・経年変化と、借主の故意・過失等による損耗を区別する際の基準が示されています。
ガイドラインを活用した実例として、築10年のオフィスで壁紙全面張替えを要求されたケースで「経年変化による壁紙の色あせは通常損耗」として交渉し、汚れの目立つ箇所のみの部分補修で合意できたケースがあります。
また、床材の全面張替え要求に対し「5年以上使用の床材は通常の摩耗が認められる」として費用の半減に成功した事例などがあります。
ガイドラインを効果的に活用するには、退去前の打ち合わせや交渉時に印刷したガイドラインを持参し、見積書の各項目がガイドラインに照らして適切かどうかを確認することが重要です。
通常損耗に該当する項目はガイドラインの該当ページを示しながら交渉し、特約があっても社会通念上不合理な要求には再考を求めましょう。
ガイドラインを具体的な交渉の場で積極的に活用することで、不当な要求を減らせる可能性が高まります。

原状回復費用を削減する方法
この章では、オフィス退去時の原状回復費用を効果的に削減するための実践的な方法について紹介します。
原状回復費用を適正化し、不要な出費を抑えるための対策には主に以下の内容があります。
- 見積書の内容を正確に分析し適正価格かどうかを判断する方法
- 複数の業者から相見積もりを取得して競争原理を働かせる手順
- ビルオーナーや管理会社との効果的な交渉テクニック
- 内装をそのまま引き継ぐ「居抜き退去」の実現方法
- 工事範囲を最小限に抑えるための具体的な交渉ポイント
見積もりの適正性チェック方法
原状回復工事の見積書を受け取ったら、まず全体の費用を坪数で割った「坪単価」を計算し、自社のオフィスがあるエリアやビルのグレードに応じた坪単価の相場と比較してみましょう。
東京23区の平均相場は約25万円/坪ですので、これを基準に判断できます。
次に工事項目ごとの必要性をチェックします。
特に壁紙や床材の全面交換は、築5年以上なら部分補修で対応できる可能性があります。
廃棄物処理費は数量と単価の内訳を確認し、地域の相場と比較します。
管理費・諸経費(現場管理費、一般管理費など)は、一般的に総工事費の10%〜20%程度が目安とされますが、工事規模や内容により変動します。
工事項目に重複がないか(壁紙撤去と下地処理が別項目で二重計上されていないか)、使用する資材のグレードが入居時と同等かどうかも確認しましょう。
不明な点や高額に思える項目があれば、具体的な作業内容や単価の根拠を質問することが大切です。
特に施工方法や使用材料の詳細についても確認し、過剰な仕様になっていないかチェックしましょう。
見積書の精査によって大幅な費用削減が可能になりますが、専門知識がない場合は、原状回復に詳しい第三者(建築士や内装業者など)にセカンドオピニオンを求めるのも有効です。
実際に60坪オフィスで「全面壁紙張替え」の費用を部分補修に変更し、70万円削減できた事例もあります。
以下にチェックリストを示します。
確認項目 |
チェックポイント |
注意点・目安 |
坪単価 |
総額÷坪数で算出、相場と比較 |
エリア、グレード等で変動大。あくまで参考値。 |
工事範囲・項目 |
契約上の義務範囲と一致しているか?不要・過剰な項目はないか? |
通常損耗分が含まれていないか確認。 |
数量・単価 |
各項目の数量(㎡、個数等)と単価は妥当か? |
図面と照合、他社見積もりと比較。 |
資材・仕様 |
入居時と同等グレードか?不必要なグレードアップはないか? |
品番等が明記されているか確認。 |
廃棄物処理費 |
内訳(品目、数量、単価)が明記されているか? |
地域の相場と比較。 |
諸経費 |
現場管理費、一般管理費等の割合は妥当か? |
一般的に総工事費の10%~20%程度が目安だが変動あり。 |
重複計上 |
同じ作業内容が別項目で計上されていないか? |
例:「壁紙撤去」と「下地処理」など。 |
不明点 |
疑問点は必ず業者に質問し、明確な回答を得る。 |
回答は記録に残す。 |
複数業者からの相見積もり取得
原状回復費用を適正化する最も効果的な方法は、複数の業者から相見積もりを取得することです。
これは指定業者がいる場合でも必ず行うべき作業です。
指定業者の見積もりは市場相場よりも高くなる傾向があるため、第三者の業者から見積もりを取得することで適正価格を把握し、交渉の材料とすることができます。
相見積もりを取得する際のポイントは、以下の3つです。
- 少なくとも3社以上に依頼すること
- 賃貸借契約書や図面を提示し、同じ条件・範囲で見積もりを依頼すること(詳細な仕様書があれば尚良し)
- 必ず現地調査を行ってもらい詳細な内訳(項目、数量、単価)が記載された見積書を依頼すること
指定業者以外の利用については、契約書の規定が優先されるのが原則ですが、見積もり内容の妥当性について交渉したり、工事内容によっては分離発注(例:内装工事は指定業者、什器撤去は別業者など)の可否を相談したりする余地はあります。
相見積もりの取得は退去の3〜4ヶ月前から始め、結果を整理して項目ごとの価格比較表を作成することで交渉力が高まります。
法律上も「指定業者強制は不当条項」とされる場合があり、適切な交渉によって指定業者以外への依頼や、少なくとも価格の適正化が可能になるのです。
オーナーとの交渉テクニック
ビルオーナーや管理会社との交渉は、原状回復費用削減が重要です。
交渉の基本は「感情ではなく事実に基づく話し合い」です。
入居時の写真や動画を示しながら経年劣化と通常損耗を区別し、国土交通省のガイドラインを根拠に「この状態は通常損耗に該当します」と具体的に指摘しましょう。
相見積もりの結果を提示して「市場相場はこの程度です」と説明し、全面張替えではなく部分補修で十分な箇所を具体的に提案することも有効です。
交渉は退去の3ヶ月前から始め、十分な時間的余裕を持って進めましょう。
強硬な態度ではなく、協力的な姿勢で「Win-Win」の解決策を模索する姿勢が、円満な合意につながりやすくなります。
交渉の結果、当初の見積もりから大幅な減額に成功するケースもあります。
特に、壁紙や床材の張替え範囲を見直すことで、大きなコスト削減につながる可能性があります。
交渉の経過や合意内容は、後々のトラブルを防ぐためにも、必ず書面に残しておくこと忘れないようにしましょう。
居抜き退去の提案方法
次のテナントが内装をそのまま利用できる「居抜き退去」は、原状回復費用をほぼゼロにできる可能性がある最も効果的な方法です。
この提案が通りやすいのは、以下のようなケースです。
- オフィス市場の空室率が高く、テナント誘致に時間がかかりそうな時期・エリア
- 比較的新しい内装や、汎用性の高いオフィスレイアウトの場合
- OAフロアやシステム天井など、次のテナントにもメリットのある設備が整っている場合
居抜き退去はビルオーナーにとっても、次のテナントをより早く誘致できる、新たな内装工事期間を短縮できるというメリットがあります。
提案の際は退去の3〜6ヶ月前から交渉を始め、内装の汎用性や設備の価値を写真付きの資料で説明し、「居抜き物件」としての広告メリットを具体的に提示しましょう。
原状回復費用の見積もりを取得し、双方のコスト削減効果を数字で示すことも効果的です。
例えば、スタンダードな間仕切り設計のオフィスで、本来かかるはずだった原状回復費用が免除された例や、設備が充実したオフィスで早期に次のテナントが決まり、数百万円単位の費用負担がなくなった事例などが報告されています。
契約書に原状回復義務が明記されていても、オーナーとの合意があれば変更可能です。
工事範囲の見直し交渉
原状回復工事の範囲を適切に見直すことで、費用を大幅に削減できる可能性があります。
見積もりでは、予防的に「全面」の工事が提案されることも少なくありません。
しかし、賃貸借契約や民法の原則に基づけば、借主が負担すべきは、主に故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗(特別損耗)部分の修繕です。
経年変化や通常損耗による劣化は、特約がない限り原則として貸主負担となります。
特に削減効果が期待できる交渉ポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 壁紙:全面張替えではなく、汚れや傷が目立つ部分のみの部分補修やクリーニングに変更する。
- 床材(カーペットタイル等):全面交換ではなく、汚損・破損した部分のみの部分交換や、高頻度で使用したエリア(例:通路)のみの交換に限定する。
- 天井:全面塗装ではなく、汚れや傷のある箇所のみのタッチアップ(部分塗装)に変更する。
- クリーニング:専門業者による全体クリーニングは必要でも、特定の箇所(例:エアコン内部)の分解洗浄などが契約上の義務を超えていないか確認する。
例えば、壁紙の全面張替えを部分補修に変更したり、床材の張替え範囲を限定したりすることで、数十万円単位での費用削減が実現できるケースがあります。
見積書の「全面」工事項目を洗い出し、実際の損耗状態を写真で記録して部分的な対応で十分な箇所を特定し、具体的な代替案を提案することが重要です。
この交渉は指定業者の場合でも十分可能で、入居時の状態と比較できる写真があれば説得力が大幅に高まります。

スケジュール管理と資金計画
この章では、オフィス退去時の原状回復工事における効果的なスケジュール管理と資金計画について紹介します。
適切な計画を立てることで、二重家賃の発生を防ぎ、資金負担を最小限に抑えるためのポイントを解説します。
- 原状回復工事の標準的な期間と効率的な進め方
- 二重家賃支払いを回避するための具体的な対策
- 敷金・保証金からの控除額予測と返還額の計算方法
- トラブル防止のための工事完了検査のチェックポイント
工事期間の目安と進め方
オフィスの原状回復工事にかかる期間は、規模や内装の複雑さによって大きく異なります。
一般的に100坪未満のオフィスであれば、実作業だけで2週間から1ヶ月程度が目安です。
工事前の準備(見積もり取得、業者選定、契約、官庁申請等)や工事後の清掃・検査まで含めると、全体で1ヶ月〜2ヶ月程度かかることも珍しくありません。
工事内容にもよりますが、見積もり取得・比較(現地調査含む)に1〜2週間、業者決定・契約締結・工事準備に1週間程度、実際の解体・撤去・復旧工事に1〜2週間、清掃・オーナー立会検査に数日と、トータルで1ヶ月〜1.5ヶ月程度見ておくのが一般的です。
工事を効率的に進めるポイントは、解約通知とほぼ同時に、退去の3〜6ヶ月前(契約の解約予告期間による)から準備を始めることです。
複数の作業(見積もり依頼、業者選定、引っ越し準備など)を並行して進められる工程表を作成し、関係者(工事業者、引っ越し業者、ビル管理会社など)と共有しましょう。
また、工事に影響する備品や機器の移動・撤去計画を事前に立て、ビル管理会社とも早めに連携してエレベーター使用や搬出入経路、作業可能時間帯を確認しておくことが重要です。
特に夜間や休日のみ作業可能な場合は、工期が延びることを考慮し、1週間程度の予備日を設けておくと安心です。
二重家賃を回避するコツ
オフィス移転時に最も避けたいのが、新旧オフィスの家賃を同時に支払う「二重家賃」状態です。
これを回避するためには、契約終了日から逆算したスケジュール管理が不可欠です。
二重家賃が発生しやすいケースとして、以下のようなものが挙げられます。
- 旧オフィスの明け渡し日と新オフィスの入居開始日を近接させすぎている。
- 業者選定や見積もり取得に時間がかかり、原状回復工事の開始が遅れる。
- 工事中に予想外の損傷(例:床下の隠れた問題)が見つかり、工期が延長する。
- 完了検査で指摘事項があり、手直し工事が必要になる。
例えば月額家賃100万円のオフィスで原状回復工事が1ヶ月延びると、それだけで100万円の分となります。
さらに新オフィスの家賃も発生していれば合計で200万円もの追加負担が発生する可能性があるのです。
これを防ぐには、以下の項目に注意しましょう。
- 余裕を持ったスケジュール:新オフィスの入居開始日より少なくとも1ヶ月前には旧オフィスの原状回復工事に着手できるよう、退去準備を開始します。
- 早期の業者決定:解約通知後、速やかに見積もり取得と比較検討を行い、工事業者を早期に決定します。
- 並行作業の検討:時間がない場合は、ビル管理会社と協議の上、旧オフィスの備品搬出と並行して一部工事を進めたり、夜間・休日の作業を組み合わせたりすることも検討します。
- 契約条件の交渉:可能であれば、新オフィスの契約開始日(フリーレント期間含む)を調整したり、旧オフィスの契約期間について交渉したりすることも有効です。
特に重要なのは、備品搬出前から見積もり取得や業者選定を進めておくことで、実作業期間を最小限に抑えることができます。
敷金・保証金の戻り額計算
オフィス退去時には、入居時に預けた敷金・保証金から原状回復費用が差し引かれ、残額が返還されます。
敷金・保証金の返還額は、契約内容(償却費の有無や割合など)や原状回復費用の額によって大きく異なります。
返還額を最大化するためには、契約内容を確認し、適正な原状回復費用に抑えることが重要です。
敷金からの控除対象は主に原状回復工事費用ですが、未払い家賃や共益費、その他の損害賠償金なども含まれることがあります。
例えば、適切な交渉により原状回復費用を数十万円〜数百万円削減できれば、その分返還額が増えることになります。
敷金返還額を最大化するためには、契約書に記載された敷金・保証金の扱いと控除ルールを事前に確認し、複数の見積もりを取得して適正価格を把握しましょう。
通常損耗に該当する項目は借主負担でないことを主張し、敷金から控除される前に見積書の内容を精査することが重要です。
また、退去前に未払い費用がないか確認し、工事完了確認書には「以後の追加請求は行わない」との文言を入れておくと安心です。
工事完了検査の重要ポイント
原状回復工事の完了後に行われるオーナー立会いの検査は、敷金精算の基準となるだけでなく、追加請求リスクを防ぐ重要な機会です。
この検査では契約で定められた原状回復義務が適切に履行されたかが確認され、新たな問題点が発見されると追加工事や費用が発生する可能性があります。
特に注意すべきケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 壁や床の細かな傷や汚れが「検査で新たに発見された」として、追加の修繕を要求される。
- 設備の動作確認が不十分で、退去後に「故障が判明した」として修理費用を請求される。
- 共用部分(廊下、エレベーターなど)の損傷が「テナントの搬出入時に生じたものだ」として修繕費を請求される。
検査を成功させるためには、必ず自社担当者と可能であれば工事業者も立ち会い、検査前に自社でプレチェックを行って問題箇所を事前に把握・対応しておくことが大切です。
検査時には確認項目を明確にしたチェックリストを準備し、検査結果を「工事完了確認書」として文書化してオーナー・管理会社の署名を得ましょう。
この確認書には「本書の確認をもって原状回復義務を完了とし、以後の追加請求は行わない」などの文言を入れ、検査時の状態を写真や動画で記録しておくことでトラブルを防止できます。

原状回復トラブルの対処法
この章では、オフィス退去時に発生しやすい原状回復に関するトラブルへの対処方法を紹介します。
原状回復トラブルには主に以下の内容があります。
- 高額な見積もりや不当な工事範囲の問題
- 追加請求のリスク
- オーナーとの交渉難航
- 予期せぬ費用負担
高額請求への対応策
オフィス原状回復における高額請求は、多くの中小企業が直面する悩みです。
まず、見積もりの妥当性を見極めることが重要となります。
東京23区の平均坪単価は25万円/坪を基準に、提示された見積もりを慎重に確認しましょう。
重複している工事項目や、過剰な修繕提案がないかチェックすることで、不当な請求を防ぐことができます。
管理費や諸経費が総額の15%を超えていないかも確認するポイントです。
複数の業者から相見積もりを取得することで、価格の適正性を客観的に判断できます。
国土交通省のガイドラインを参考にしながら、根拠のない高額請求に対して毅然とした態度で交渉することが大切です。
専門家への相談タイミング
原状回復トラブルで最も効果的な対策は、早期に専門家に相談することです。
法律や不動産に関する専門的な知識は、個人の経験だけでは限界があります。
見積もりを受け取った直後が相談の最適なタイミングです。
都道府県賃貸住宅協会での無料相談や、法テラスでの契約書解釈相談、不動産専門弁護士への事前相談は、トラブル回避につながります。
経験豊富な専門家は、状況に応じた効果的な交渉戦略を提案してくれるため、リスクを最小限に抑えることができます。
書面による証拠を事前に準備しておくことで、より説得力のある相談が可能となるでしょう。
追加請求を防ぐ証拠保全法
オフィス退去時の原状回復工事完了後、予期せぬ追加請求を受けるトラブルを防ぐためには、事前の準備と完了時の手続きにおける徹底的な記録と文書化(証拠保全)が非常に重要です。
4K以上の高解像度で写真や動画を撮影し、詳細な現状を記録することが重要です。
検査立会時には、専門家監修のチェックリストを活用し、漏れなく状況を確認しましょう。
特に注意すべきは、完了証明書に追加請求を禁止する条項を明記することです。
退去前に現状を徹底的に記録し、将来起こりうるトラブルの芽を事前に摘むことができます。
明確な証拠は法的交渉における最強の武器となり、不当な追加請求から身を守ることができます。
交渉が難航した場合の対応
オーナーとの交渉が難航した場合でも、冷静かつ戦略的なアプローチが解決につながります。
感情的にならず、事実と根拠に基づいた交渉を心がけることが大切です。
内容証明郵便の活用や、紛争解決調停の検討も有効な手段です。
交渉の記録を丁寧に保存し、必要に応じて中立的な第三者を交えた対話を検討しましょう。
最終手段としては、裁判所を通じた解決も選択肢の一つです。
重要なのは、冷静さを失わず、法的根拠に基づいた対応を心がけることです。

まとめ
オフィス原状回復の費用相場は坪単価3〜40万円と幅広く、適正価格の判断には慎重な確認が必要です。
見積もりの内容を詳細に分析し、複数業者から相見積もりを取得することで、不当な請求を回避できます。
契約書の確認と通常損耗の範囲を理解し、交渉することで、効率的かつ経済的な原状回復工事が可能となります。

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