【保存版】原状回復の工事を完全攻略!費用・トラブル・裏ワザ全解説

2025年04月29日(火)

賃貸物件やオフィスの退去時に、

「原状回復工事の範囲がわからない」

「設備の修繕義務が誰にあるのか不明確」

「工事費用が高すぎないか不安」とお悩みではありませんか?

本記事では、原状回復工事とは何か、法的義務について、A/B/C工事区分の違い、費用負担の考え方などを詳しく解説します。

また、光回線やドコモ光などのネット工事(通信設備)の原状回復についても触れ、水回りなどの設備に関する原状回復義務の範囲についても触れていきます。

さらに、業者選定のポイント、見積もりの適正価格、保険適用の可能性、修繕費や勘定科目の扱いまで幅広く紹介。

ガイドラインに基づいた原状回復工事施工目安単価も掲載し、クーリングオフの可否や「工事しない」選択肢についても言及します。

この記事を読めば、オーナーとのトラブルを避けながら、適正価格で満足のいく原状回復工事を実現できるでしょう。

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原状回復工事とは?基本知識と範囲

この章では、退去時や移転時に必要となる原状回復工事について、基本的な知識と範囲を紹介します。

原状回復工事を理解するために知っておくべき主な内容は以下の通りです。

  1. 原状回復工事の定義と法的根拠
  2. 原状回復と現状回復(原状復帰)の違い
  3. 貸主と借主の責任範囲
  4. 契約書の確認ポイント

原状回復工事の定義と法的根拠

原状回復工事とは、賃貸契約が終了し、入居者が退去する際に、物件を借りた当初の状態に戻すために行う工事のことです。

この義務は日本の民法に根拠を持っており、民法第621条では「賃借人は、賃借物を原状に復して返還する義務を負う」と定められています。

ただし、この条文の続きには重要な例外があり、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗」や「賃借物の経年変化」については原状回復義務から除外されています。

つまり、日常的に普通に使用していて生じる自然な劣化や経年変化については、借主は修復する義務を負わないということです。

例えば、日照による壁紙の色あせ、家具を置いたことによる床のへこみ、エアコンなどの設備の経年劣化は、原則として借主の原状回復義務の対象外となります。

国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)も、この考え方を基本として居住用物件における原状回復の判断基準を示しています。

原状回復工事は一般的に、現地調査から始まり、計画策定、施工、完了検査という流れで進行します。

原状回復と現状回復の違い

「原状回復」と「原状復帰」(または「現状回復」とも呼ばれます)という言葉は似ていますが、少し意味合いが異なる場合があります。

原状回復は法律上の概念で、賃貸借契約終了時に借主が物件を借りた時の状態に戻す義務を指します。

一方、原状復帰(現状回復)は、原状回復と同様の意味で使われることがありますが、建設業界では、実際に行われる工事内容を指す場合もあります。

特にテナント物件においては「スケルトン戻し」という言葉もよく使われます。

これは内装や設備をすべて撤去し、コンクリート打ちっぱなしの状態に戻すことです。

店舗やオフィスなどの商業施設では、多くの場合このスケルトン戻しが原状回復として求められますが、必ずしも全ての商業施設に当てはまるわけではなく、賃貸借契約書や特約によって義務の範囲が定められます。

例えば、飲食店が退去する場合、厨房設備や換気ダクト、ガス配管などをすべて撤去し、借りた時の状態に戻す必要があるとされることが一般的です。

これに対して、居住用物件では壁紙の張り替えや床の修繕など、比較的軽微な工事が中心となりますが、こちらも契約内容によって大きく異なります。

専門家とのコミュニケーションをスムーズに行うためにも、これらの用語の違いを理解しておくことが重要です。

貸主と借主の責任範囲

原状回復の責任範囲は、基本的に「誰の責任で生じた損傷か」という観点から判断されます。

借主は自分の故意や過失、通常の使用を超える行為によって生じた損傷について原状回復義務を負います。

具体的には、飲み物をこぼしてできたシミ、ペットによる引っ掻き傷、タバコのヤニ汚れ、画びょうを超える大きな穴などが該当します。

一方、通常の使用による損耗や経年劣化については、貸主が負担するのが原則です。

以下の表に、貸主と借主の責任範囲を示しました。

貸主(オーナー)負担

借主(テナント)負担

日照による壁紙の色あせ

飲み物をこぼしてできたシミ

家具による床のへこみ(通常使用)

ペットによる引っ掻き傷

設備の経年劣化

タバコのヤニ汚れ

雨漏りなどによる天井のシミ

画びょうを超える大きな穴

日常的に生じる壁の小さな傷

原状回復目的の清掃費用

エアコンなどの設備の自然故障

テナント設置の設備の撤去・復旧

床タイルの自然剥がれ

壁の落書きやステッカーの跡

クロスの自然はがれ

通常の使用方法を超えた設備の破損

注意: 契約書の特約により、上記の一般原則とは異なる負担区分が定められている場合があります。特に商業物件では、通常損耗も借主負担とする特約が一般的です。

しかし、商業物件(オフィスや店舗)の場合は、居住用物件と比べて借主の責任範囲が広くなる傾向があります。

特に、テナント契約では「A工事(甲工事)」「B工事(乙工事)」「C工事(丙工事)」という3つの区分で責任範囲が定められることが一般的です。

A工事(甲工事)は建物の躯体や共用部分に関する工事で、オーナー(貸主)が費用を負担し、発注も行います。

B工事(乙工事)はテナント(借主)専有部分の設備(空調、防災、分電盤までなど、建物全体に関わるもの)に関わる工事で、テナント(借主)が費用を負担し、オーナー(貸主)指定の業者が実施します。

C工事(丙工事)はテナント(借主)専有部分の内装工事で、テナント(借主)が費用負担・業者選定を行います。

ただし、これらの区分の具体的な範囲や定義は物件やオーナーによって異なるため、契約前に工事区分表などで詳細を必ず確認しましょう。

賃貸借契約書の確認ポイント

原状回復に関するトラブルを避けるためには、賃貸借契約書の内容を事前にしっかり確認することが最も重要です。

契約書は原状回復の義務範囲や費用負担を定める最も重要な法的文書であり、特約の有無によって責任範囲が大きく変わることがあります(民法の原則よりも特約が優先される場合があるため特に注意が必要です)。

確認すべき主なポイントとしては、まず「原状回復」の定義と具体的な範囲が明記されているかチェックしましょう。

特に「スケルトン戻し」などの用語が使われている場合は、その具体的な意味を確認することが大切です。

次に、工事区分(A/B/C工事)の詳細と各区分の費用負担者が明確にされているか確認します。

また、「通常損耗」の扱いに関する特約の有無も重要です。

居住用物件であっても、特約によって通常損耗の修繕費用が借主負担となる場合があります。

その他、ハウスクリーニング費用の負担者、敷金の精算方法と返還条件、原状回復工事の業者選定権(借主が業者を選べるか)なども確認すべきポイントです。

契約内容に不明点や不安がある場合は、必ず契約前に貸主や管理会社に質問し、必要であれば回答を書面で受け取るなどして、納得してから契約することをおすすめします。

特に商業物件など契約内容が複雑な場合は、弁護士などの専門家に相談することも有効です。

また、契約によっては、退去時の費用負担に関する認識の齟齬を避ける目的で、参考資料として原状回復工事施工目安単価が添付されたり、特約で特定の単価基準について言及されたりする場合もあります。

そのため、契約書本体だけでなく、関連する添付書類や特約の有無・内容も注意深く確認しましょう。

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原状回復工事の工事区分と費用負担

この章では、原状回復工事の工事区分と費用負担について紹介します。

原状回復工事の工事区分と費用負担は主に以下の内容があります。

  1. A工事/B工事/C工事の区分と各負担者
  2. 各工事区分における業者選定のポイント
  3. 費用を効果的に削減するための方法
  4. 工事区分表の確認方法と契約前の注意点

区分

別称

工事内容

費用負担者

業者選定権

A工事

甲工事

建物の躯体や共用部分に関する工事

オーナー(貸主)

オーナー

B工事

乙工事

テナント専有部分のうち建物全体に関わる設備工事

テナント(借主)

オーナー

指定の業者

C工事

丙工事

テナント専有部分の内装工事

テナント(借主)

テナントが

選定可能

工事の範囲とオーナー負担の内容

商業物件における原状回復工事は、費用負担者と実施主体によって大きく3つに区分されます。

まず「A工事(甲工事)」は、建物の躯体部分や共用部分に関わる工事で、オーナーが全額負担し、発注も行います。

具体的には、ビルの外装修繕、共用エレベーターの改修、共用トイレの設備更新などが該当します。

これらは建物の資産価値を維持するための工事であるため、テナントが費用を負担することはありません。

ただし、テナントが誤って共用部分を損傷させた場合は、A工事として修理されても、その費用はテナントに請求されることがあるので注意が必要です。

A工事はテナント(借主)が直接関わることは少ないものの、物件内の共用部分に不具合を発見した場合は、速やかにオーナー(貸主)や管理会社に報告する義務があります。

賃貸借契約上、善管注意義務があると考えられます。

特に老朽化した設備や安全性に関わる問題は、早めの報告が重要です。

賃貸契約を結ぶ際には、どの範囲がA工事に該当するか、必ず確認しておきましょう。

工事の概要と業者選定の注意点

B工事(乙工事)とC工事(丙工事)は、どちらもテナント(借主)が費用を負担しますが、業者選定の権限が異なります。

B工事は、テナント専有部分のうち建物の基本設備に影響を与える工事で、空調設備の設置・撤去、防災設備の移設、電気配線の復旧などが含まれます。

これらは建物全体の機能や安全性に関わるため、オーナーが指定する業者が施工します。

テナントには業者選択の自由がないため、相見積もりによる価格競争が働かず、費用が割高になりがちで、トラブルが生じやすい部分です。

一方、C工事(丙工事)は、テナント専有部分の内装工事で、壁紙の張り替え、床材の交換、間仕切りの設置・撤去などが該当します。

これらは建物の基本設備に影響を与えないため、テナントがオーナーの承認を得た上で、自ら業者を選定できます。

C工事は複数の業者から見積もりを取得し、価格や工期を比較検討できるため、コスト削減できる部分です。

業者選定の際は実績や評判も重視しましょう。

工事の内容と費用削減のポイント

原状回復工事の費用を抑えるためには、いくつかの効果的な方法があります。

まず、繁忙期(一般的に3月、4月、9月、10月と言われている)を避けて退去することで、業者の稼働率が下がり、工事費用が抑えられる傾向があります。

次に、特にC工事(丙工事)については、必ず複数の業者(3社以上が理想的)から見積もりを取得し、内容と価格を比較することが重要です。

見積書は項目ごとに詳細な内訳を確認し、不明点や高額な部分は質問・交渉しましょう。

また、自分でできる範囲の清掃や軽微な修繕を行えば、プロの手間を減らし、費用を節約できます。

さらに、次のテナントが決まっている場合は、「居抜き」での引き渡しを提案するのも有効です。

現在の内装や設備をそのまま次のテナントが使用できれば、スケルトン戻しのための大規模工事が不要になり、大幅なコスト削減につながります。

B工事をC工事に変更できないか交渉することも、場合によっては可能です。

いずれの方法も、早めの計画と情報収集が大切です。

工事区分表の見方と解釈

工事区分表は、どの工事がA工事(甲工事)/B工事(乙工事)/C工事(丙工事)に該当するかを具体的に示した重要な資料です。

この区分はビルやオーナー(貸主)によって異なることがあるため、契約前に必ず確認する必要があります。

工事区分表を見る際のポイントは、まず自分のビジネスに関連する設備や内装が、どの区分に分類されているかを確認することです。

例えば、飲食店であれば厨房設備や排気設備、美容院であれば給排水設備などが重要になります。

また、「電気設備」の場合、分電盤までの配線工事はB工事、分電盤以降の配線や照明器具の設置・撤去はC工事とされることが一般的です。

工事区分表に不明点があれば、契約前にオーナーや管理会社に質問し、書面で回答を得ることをおすすめします。

明確な工事区分表がない場合は、提示を求めるか、独自に一覧表を作成して合意を取り付けておくことで、将来のトラブルを防げます。

契約更新時に区分が変更されることもあるため、更新時も必ず確認しましょう。

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物件タイプ別の原状回復工事の特徴

この章では、物件タイプ別に異なる原状回復工事の特徴について紹介します。

物件タイプ別の原状回復工事の特徴には、主に以下の内容があります。

  1. オフィス物件特有の原状回復工事の範囲と費用
  2. 店舗・商業施設における業種別の原状回復事例
  3. 賃貸住宅に適用される原状回復ガイドラインとその内容
  4. 光回線やネット工事に関する原状回復の対応方法

オフィスの原状回復工事の注意点

オフィス物件の原状回復工事では、「借りた時の状態に戻す」という基本原則が適用されますが、居住用物件とは異なる注意点があります。

一般的に、オフィス物件では入居時に設置した間仕切りやカーペットの撤去、壁や天井の装飾や加工の元の状態への復旧、入居後に整備した電気や通信配線の撤去などが原状回復の対象となります。

また、オフィス物件では通常の使用による損耗や経年劣化についても、借主(テナント)が負担する特約が付されているケースがあるため、契約書の内容を詳細に確認することが重要です。

費用面では、小規模オフィス(50坪未満)では坪単価3万円から7万円程度、中規模オフィス(50坪~200坪未満)では6万円~11万円程度、大規模オフィス(200坪以上)では8万円から15万円程度が相場が相場とされています。

ただし、これらはあくまで目安であり、物件のグレードや状態、契約内容、工事の詳細によって費用は大きく変動します。

高級ビルや特殊な内装がある場合は、坪単価が20万円を超えることもあります。

セットアップオフィスの場合は、「原状」が借りた時の状態を指すため、会議室や受付スペースの間仕切り壁などはそのまま残せる場合もありますが、カーペットや壁紙の張り替えなどは必要になることが一般的です。

店舗・商業施設の原状回復事例

店舗や商業施設における原状回復工事は、業種によって大きく異なります。

特に飲食店の場合、厨房設備やガス配管、排気ダクトの撤去など、特殊な設備の復旧が必要となるため、工事費用が高額になりやすいと言えます。

一般的に商業施設では「スケルトン戻し」と呼ばれる、内装や設備をすべて撤去してコンクリート打ちっぱなしの状態(建築時の状態)に戻すことが求められます。

契約によっては、共用部分までスケルトンにすることが求められる場合もあるため、注意が必要です。

費用相場としては、非飲食店の場合で坪単価3万円から10万円程度です。

飲食店の場合は厨房設備等の撤去・復旧があるため5万円から20万円程度(特殊な設備やスケルトン戻しの場合、さらに高額になることも)が目安です。

ただし、これも物件や工事内容によって大きく異なります。

テナント契約では、特約により、通常損耗や経年劣化を含めて、退去時の原状回復費用はテナントが全額負担することが多いので、契約書を必ず確認しましょう。

一方で、次のテナントが決まっている場合には、「居抜き物件」として内装や設備をそのまま引き継ぐことができれば、原状回復工事を大幅に削減できる可能性があります。

これは特に飲食店から飲食店、美容院から美容院などの同業種への引き継ぎで実現しやすいため、退去が決まったら早めにオーナーに相談してみると良いでしょう。

賃貸住宅の原状回復ガイドライン

賃貸住宅における原状回復は、国土交通省が定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html)に基づいて判断されることが一般的です。

このガイドラインでは、借主は故意・過失による損傷や通常の使用を超える損耗についてのみ原状回復義務を負うという考え方が基本となっています。

具体的には、飲み物をこぼしたシミ、ペットの引っ掻き傷、タバコのヤニ汚れなどが借主負担となる典型的な例です。

一方、日照による壁紙の変色、家具の設置による床のへこみ、設備機器の経年劣化など、通常の使用による損耗や経年変化は貸主の負担となります。

ただし、賃貸契約書に特約がある場合は、その内容が優先されることがあるため、契約書の確認が重要です。

居住用物件の原状回復費用は、間取りによって異なり、1Kやワンルームであれば5万円から10万円程度、ファミリー向けの3LDK以上では30万円から50万円程度が相場となります。

退去時には必ず立ち会いを行い、原状回復が必要な箇所について貸主または管理会社と合意を得ることが、トラブル防止につながります。

光回線・ネット工事の原状回復

インターネット回線や光回線の工事に関連する原状回復も、退去時に考慮すべき重要なポイントです。

これらの工事では壁や床に穴を開けたり、建物内に配線を通したりするため、退去時には適切な撤去や復旧が必要になります。

ドコモ光やNTTフレッツ光などの大手通信事業者の場合、契約解約時に撤去工事を依頼することができますが、壁や床の穴などの修復は別途必要となることが一般的です。

これらの修復費用は、借主(テナント)の負担となることが多いようです。

特に商業物件では、独自のLAN配線や通信設備を設置していることが多く、これらの撤去・復旧はC工事として扱われることが多いため、テナント負担で対応する必要があります。

一方、マンションやアパートなど集合住宅の場合、建物にあらかじめ配線設備が整っているケースでは、撤去の必要がないこともあります。

光回線やネット工事に関するトラブルを避けるためには、入居前に配線工事の可否と退去時の復旧要件を確認し、工事を依頼する際には撤去条件も事前に確認しておくことが重要です。

退去が決まったら早めに回線事業者に連絡し、撤去工事のスケジュールを調整しましょう。

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原状回復工事の費用相場と見積もり

この章では、原状回復工事の費用相場や見積もりの取得方法について紹介します。

原状回復工事の費用相場と見積もりには、主に以下の内容があります。

  1. さまざまな物件種類別の費用相場
  2. 適正な見積もりを取得するためのチェックポイント
  3. 信頼できる原状回復工事業者の選び方
  4. 原状回復工事に保険が適用できる条件
  5. 会計上の勘定科目と適切な経理処理

物件種類別の費用相場一覧

原状回復工事の費用は物件の種類、規模、工事内容によって大きく異なります。

オフィスの場合、小規模(50坪未満)では坪単価3万円から7万円程度、中規模(50~200坪)では6万円から11万円程度、大規模(200坪以上)では8万円から15万円程度が相場です。

内装のグレードや特殊な設備(サーバー室など)の有無によって、50万円程度になることもあります。

特に高級ビルや特殊な内装がある場合は、坪単価が20万円を超えることもあります。

店舗・商業施設では、一般店舗(飲食店以外)の場合、30坪以下で坪単価3万円から7万円、31坪以上で3万円から10万円程度です。

飲食店は、厨房設備や排気ダクトなどの特殊設備があるため、坪単価5万円から20万円と高額になり、特殊な内装や設備がある場合は、50万円を超えることもあります。

また、スケルトン戻しが原則となることが一般的です。

居住用物件では、間取りによって費用が変わり、1Kやワンルームで5万円から10万円程度、2LDK・3DKで10万円から30万円程度、3LDK以上で20万円から50万円程度が一般的です。

費用は、壁紙や床材のグレード、設備の状況によって変動します。

また、故意・過失による汚損・破損の程度によっても費用は変わります。

これらの費用相場はあくまで目安であり、物件の状態や地域、内装のグレード、工事の詳細内容によって変動します。

適正な費用を把握するためには、複数の業者から見積もりを取ることが大切です。

賃貸人と賃借人の間で費用の妥当性について共通認識を持ち、トラブルを未然に防ぐためにも、一般的な市場価格や、参考として示されることがある原状回復工事施工目安単価(例えば、壁紙の張替え1㎡あたり〇〇円~〇〇円といった情報)と比較検討することが役立ちます。

以下の、物件種類別の費用相場一覧表も参考にしてください。

物件タイプ

規模・種類

坪単価(目安)

特記事項

オフィス

小規模(50坪未満)

3〜7万円

内装グレード、特殊設備により変動

中規模(50〜200坪)

6〜11万円

高級ビルでは20万円超も

大規模(200坪以上)

8〜15万

店舗・商業施設

一般店舗(30坪以下)

3〜7万円

飲食店以外

一般店舗(31坪以上)

3〜10万円

飲食店以外

飲食店

5〜20万円

厨房設備や排気ダクト等により高額化

賃貸住宅

1K・ワンルーム

総額5〜10万円

間取りによって変動

2LDK・3DK

総額10〜30万円

壁紙や床材のグレードにより変動

3LDK以上

総額20〜50万円

故意・過失による汚損の程度で変動

見積もり取得時のチェックポイント

原状回復工事の見積もりを取得する際には、いくつかの重要なチェックポイントがあります。

まず、最低でも3社以上の業者から見積もりを取ることで、相場感を把握し、不当に高額な請求を避けられます。

見積書は項目ごとに詳細な内訳を確認し、「一式」などの曖昧な表記ではなく、工事内容(例:壁紙の品番、㎡数)、数量、単価が明確に記載されているかをチェックしましょう。

特に面積や数量が実測値に基づいているか、使用する材料や仕様が明記されているか、単価が相場と比較して適正かなどを確認することが重要です。

提示された単価が、公平性を確保する観点から、一般的な原状回復工事施工目安単価や市場の相場と照らして著しく高額でないかを確認することも重要です。

また、廃棄物処理費や養生費、諸経費などの付随費用も含まれているか確認し、後から追加請求されないようにしましょう。

見積書に不明点や疑問点があれば、必ず質問して納得するまで説明を求めることが大切です。

B工事(テナント負担だがオーナー指定の業者が施工)の場合でも、見積内容の詳細な説明を求める権利はあります。内訳や単価の根拠などを確認し、遠慮せずに質問しましょう。

見積もりは契約の基礎となる重要書類ですので、内容をしっかり理解した上で契約を結ぶことが必要です。

原状回復工事業者の選び方

信頼できる原状回復工事業者を選ぶことは、工事の品質とコストに大きく影響します。

業者選定のポイントとして、まず過去の実績を確認しましょう。

特に、自社の物件や業態と同種の物件での施工経験や実績が豊富かどうかは重要な判断材料です。

可能であれば、過去の施工事例の写真や、実際に施工した物件を見学させてもらうなどして、業者選定の参考にしましょう。

次に、第三者からの評判や口コミも参考になります。

オーナーや管理会社、不動産業者などから紹介を受けるのも一つの方法です。

現地調査の際の対応も重要で、物件を詳細に確認し、質問に丁寧に答えてくれる業者は信頼性が高いといえます。

見積書の透明性も大切で、詳細な内訳がありわかりやすく説明してくれる業者を選びましょう。

アフターフォロー体制も確認し、工事後の不具合にどう対応するかを事前に確認しておくことをおすすめします。

また、適切な保険に加入しているか、必要な資格を持っているかなども確認しておくと安心です。

後々のトラブルを防ぐためにも、価格だけで判断するのではなく、これらの要素を総合的に評価して業者を選ぶようにしましょう。

特にC工事(テナントが業者を選べる工事)では、慎重な業者選定が費用対効果の高い工事につながります。

保険適用できるケースと条件

原状回復工事の中には、特定の条件下で保険が適用できるケースがあります。

一般的に保険が適用される可能性があるのは、予期せぬ事故や災害による損傷の修復です。

例えば、テナント原因の火災による内装・設備の損傷、給排水設備の故障による水漏れ被害、台風などの自然災害による損傷などが該当します。

これらの場合、加入している火災保険や施設賠償責任保険の補償内容によっては、修復費用の一部または全部がカバーされる可能性があります。

ただし、通常の使用による損耗や退去時の原状回復義務に基づく一般的な工事は、保険の対象外となるケースがほとんどです。

保険を適用するためには、事故発生時の速やかな報告、損害状況の写真記録、修理見積書の取得など、適切な手続きを踏む必要があります。

保険適用の可能性を検討する場合は、まず加入している保険の補償内容を確認し、保険会社または代理店に相談することをおすすめします。

可能性がある場合は、工事前に保険会社の承認を得てから進めるようにしましょう。

原状回復工事の勘定科目と経理処理

原状回復工事の費用を会計処理する際には、適切な勘定科目を選択することが重要です。

一般的に、退去時の原状回復工事費用は「修繕費」として処理されることが多いようです。

壁紙や床材の張り替え、天井や壁の補修、設備の撤去・復旧などの比較的小規模な工事がこれに該当します。

修繕費は発生した年度の経費として全額損金算入が可能です。

一方、工事の規模が大きく資産価値を高める場合は「資本的支出」として扱われることもあります。

また、会計基準によっては「資産除去債務」として認識するケースもあります。

これは建物の解体や大規模な内装撤去など、契約上必ず発生することが明確な将来の支出が対象です。

この場合、将来発生する費用の見積額を現在価値に割り引いて負債計上し、資産計上額を減価償却していきます。

原状回復工事の経理処理に迷った場合は、税理士や会計士に相談することをおすすめします。

特に大規模な工事や特殊な契約条件がある場合は、税務上のリスクを避けるためにも専門家のアドバイスを受けることが重要です。

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原状回復工事の進め方とスケジュール

この章では、原状回復工事の効率的な進め方とスケジュール管理について紹介します。

原状回復工事の進め方とスケジュールには主に以下の内容があります。

  1. 原状回復工事の一連の流れと事前準備の重要性
  2. 物件種類別の適切な工事期間の目安
  3. 季節要因を考慮した効率的な工事計画の立て方
  4. 各段階での立会いポイントとトラブル回避策

工事の流れと必要な準備

原状回復工事は計画的に進めることで、費用削減とスムーズな退去が可能になります。

まず退去予定が決まったら、2~3ヶ月前を目安に賃貸借契約書を確認し、原状回復の範囲や義務について再確認しましょう。

次に管理会社やオーナーに退去予定を連絡し、原状回復についての認識合わせを行います。

この段階で物件の現状を写真や動画で記録しておくことも重要です。

その後、複数の工事業者(理想的には3社以上)から見積もりを取得し、内容と費用を比較検討します。

業者選定後は、工事内容、期間、費用などを明記した契約を交わし、工事スケジュールを確定させます。

工事開始前には、必要に応じて搬出する備品や設備の整理も行っておきましょう。

特に大型の設備や什器は処分方法も含めて事前に計画が必要です。

また、電気・ガス・水道・インターネットなどの契約解除手続きも忘れずに行い、光回線などの撤去工事が必要な場合は、原状回復工事のスケジュールに組み込んでおくことが大切です。

準備段階で時間をかけることで、後のトラブルや追加費用を大幅に減らせます。

契約解除から引き渡しまでの期間

原状回復工事にかかる期間は、物件の種類や規模、工事内容によって大きく異なります。

一般的な目安として、居住用物件(1K~2DK)では、簡単なクリーニングや部分補修であれば数日、壁紙や床材の大規模な張り替えが必要な場合でも1~3週間程度で完了することが多いようです。

オフィスの場合、小規模(50坪未満)であれば2週間~1ヶ月、中規模(50~200坪)であれば1~2ヶ月、大規模(200坪以上)では1~2ヶ月以上かかることもあります。

店舗や商業施設、特に飲食店は厨房設備や排気ダクトなどの特殊設備の撤去が必要なため、1ヶ月以上かかるケースも珍しくありません。

また、これらの工事期間とは別に、業者選定や見積もり取得にも2週間~1ヶ月程度の期間を見込んでおくべきです。

賃貸契約には通常、解約予告期間(一般的に1~6ヶ月)が定められていますので、この期間内に原状回復工事を完了させる必要があります。

余裕を持ったスケジュール設定が重要で、特に大規模な物件や複雑な工事が必要な場合は、予想外の問題発生も考慮して工期に20~30%程度の余裕を持たせることをおすすめします。

繁忙期を避けた工事計画の立て方

原状回復工事は、不動産業界の繁忙期を避けて計画することで、コスト削減やスムーズな進行が期待できます。

一般的に繁忙期は1~4月(特に3月末~4月初めの年度替わり)と9~12月(特に企業の半期決算時期)です。

この時期は引っ越しや移転が集中するため、工事業者の稼働率が上がり、費用が割高になりがちです。

また、希望の日程で業者を確保するのも難しく、工事品質が低下するリスクもあります。

逆に、閑散期である5~8月や1月中旬~2月に工事を行えば、業者の選択肢が広がり、見積もり金額が10~20%程度安くなる可能性があります。

工事の品質も向上し、急な変更にも柔軟に対応してもらいやすくなります。

退去日が自由に選べる場合は、閑散期に合わせて計画するのが賢明です。

ただし、事業上の都合で繁忙期に退去せざるを得ない場合は、特に早めの計画立案と業者確保が重要です。

繁忙期に工事を行う場合は、通常よりも3~4ヶ月前から業者選定と見積もり取得を始め、2ヶ月前には契約を締結しておくことが望ましいでしょう。

トラブルを防ぐための立会いポイント

原状回復工事のトラブルを防ぐためには、各段階での適切な立会いが不可欠です。

まず工事開始前の立会いでは、現状の損傷状況や汚れを確認し、原状回復が必要な箇所をオーナーや管理会社と合意しておきましょう。

この時点で現状の写真や動画を撮影し、記録として残すことも重要です。

大規模な工事の場合は、途中経過を確認する中間検査も有効です。

工事の進捗状況、当初計画との相違点、追加工事の必要性などを確認し、早めに問題点を洗い出して対応策を協議します。

そして最も重要なのが工事完了後の最終検査です。

工事内容が契約通りに完了しているか、仕上がりの品質に問題はないか、細部まで丁寧にチェックしましょう。

不具合があれば即座に指摘し、修正を依頼します。

立会い時には、オーナーや管理会社だけでなく、工事業者も同席してもらうと、認識の違いによるトラブルを防げます。

合意事項はすべて書面に残し、完成状態も写真や動画で記録しておきましょう。

最終検査で引き渡しの合意をする際は、後日の追加請求がないことを確認し、書面で合意を得ておくことが安心です。

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原状回復費用を抑える実践的な方法

この章では、原状回復費用を効果的に抑えるための実践的な方法について紹介します。

原状回復費用を抑える実践的な方法には主に以下の内容があります。

  1. 自分で対応可能な清掃や簡易補修の範囲と方法
  2. 居抜き物件としての引き渡しによる大幅なコスト削減策
  3. A/B工事からC工事への切り替え交渉の進め方
  4. 原状回復工事が不要となる条件と契約上の注意点

自分でできる清掃と簡易補修

退去前に自分でできる範囲の清掃や簡易補修を行うことで、原状回復費用を効果的に削減できます。

特に水回りの清掃は、プロに依頼すると数万円かかることもありますが、自分で行えば洗剤代だけで済みます。

キッチン、浴室、トイレなどを徹底的に磨き上げることで、ハウスクリーニング費用を節約できるだけでなく、オーナーや管理会社からの印象も良くなります。

また、壁の小さな穴(ピンホール程度)は市販のパテで埋めることができますし、フローリングの軽微な傷は専用の補修キットで対応可能です。

エアコンのフィルター清掃や窓ガラス・サッシの拭き掃除も自分でできる作業です。

ただし、壁紙の張り替えや床材の交換など専門的な技術が必要な作業は、素人が行うとかえって悪化させる恐れがあるため注意が必要です。

自分で清掃や補修を行う際は、退去の2〜3週間前から計画的に始め、適切な洗剤や道具を使用しましょう。

作業前後の写真を撮影して記録しておくのも良いでしょう。

どこまで自分でできるか迷う場合は、事前にオーナーや管理会社に確認することをおすすめします。

以下に、自分でできる作業、専門業者に依頼すべき作業を示しました。

自分でできる作業

専門業者に依頼すべき作業

水回り(キッチン、浴室、トイレ)の清掃

壁紙の張り替え

窓ガラス・サッシの清掃

床材の交換・補修(大規模)

エアコンフィルターの清掃

天井や壁の大規模な修繕

ピンホール程度の壁の小さな穴の補修

電気配線の工事

フローリングの軽微な傷の補修

排水管・給水管の工事

タンスなどの家具や小物の搬出

内装の構造変更・復旧

シンプルな照明器具の取り外し

業務用設備の撤去・復旧

粗大ゴミの分別と処分手配

スケルトン戻し工事

簡単なステッカー跡の除去

安全性に関わる設備の工事

棚やカーテンレールの取り外し

専門知識が必要な設備の修繕

注意: 自分で行う場合でも、オーナーや管理会社に事前確認することをお勧めします。不適切な清掃・補修はかえってコストが増える場合があります。

居抜き物件交渉のコツと事例

「居抜き物件」として次のテナントに内装や設備をそのまま引き継ぐ方法は、原状回復費用を大幅に削減できる効果的な手段です。

特に飲食店の厨房設備や美容室のシャンプー台など、特殊な設備を必要とする業種では大きなメリットがあります。

同業種への引き継ぎが最も成功しやすいですが、異業種であっても内装のイメージが合えば実現可能です。

居抜き交渉を成功させるには、まず退去を決めたら早い段階でオーナーや管理会社に相談しましょう。

自分の業界ネットワークを活用して次の入居者を探す、不動産仲介業者に「居抜き可」として情報を掲載してもらうなどの方法があります。

設備や内装の詳細情報(設置年数、状態、仕様など)を写真付きで提供し、その価値を金額で示すことも重要です。

うまく交渉できれば、飲食店の場合、坪あたり20〜50万円もの原状回復費用を節約できる可能性があります。

また、オーナーにとっても空室期間の短縮というメリットがあるため、原状回復費用の一部を値引きする形で次のテナントに還元する提案をすれば、三者にとってWin-Winの関係を構築できます。

早めの準備と柔軟な対応が居抜き交渉成功のカギです。

工事への切り替え交渉術

原状回復工事では、B工事(テナント負担・オーナー指定業者)をC工事(テナント負担・テナント選定業者)に切り替える交渉に成功すれば、同じ工事内容でも20〜30%程度のコスト削減が可能になります。

B工事はオーナー指定の業者が行うため価格交渉の余地が少なく、割高になりがちです。

一方、C工事はテナントが業者を選べるため、複数業者から見積もりを取得して比較検討できます。

切り替え交渉を成功させるポイントは、まず工事区分表を詳細に確認し、切り替え可能性のある項目を特定することです。

次に、信頼できる実績のある業者をあらかじめ複数確保しておきましょう。

オーナーの懸念(品質や安全性など)を理解し、それを解消するための提案を用意することも重要です。

例えば、空調設備の撤去・移設では、適切な資格を持った業者であればテナント側で選定できるよう交渉する、電気配線の復旧では電気工事士の資格を持つ業者であれば問題ないことを提案するなどの方法があります。

コスト削減額を明確に示し、それがオーナーにとっても間接的なメリットになることを説明できれば、交渉が成功する可能性が高まります。

すべてのB工事をC工事に切り替えるのは難しいかもしれませんが、一部でも実現すれば大きなコスト削減につながります。

原状回復工事しない選択肢と条件

特定の条件下では、原状回復工事を行わないという選択肢もあります。

例えば、建物の老朽化による解体予定がある場合、オーナーが次のテナント向けに全面リノベーションを計画している場合、オーナー都合での退去(立退き)の場合などは、原状回復義務が免除または軽減される可能性があります。

また、同じオーナーの別物件へ移転する場合や、当初から長期契約(10年以上など)で原状回復義務を軽減する特約が含まれている場合も、工事が不要になることがあります。

実際の事例では、築40年のビルでオーナーが翌年の解体を予定していたため、内装の原状回復義務がすべて免除されたケースや、オーナーが次のテナント向けに全面リノベーションを計画していたため、原状回復不要で合意できたケースなどがあります。

この可能性を探るためには、オーナーや管理会社と早い段階で率直に相談し、物件の今後の予定について情報を集めることが大切です。

建物の築年数や周辺の再開発計画なども参考になります。

契約書の特約や例外規定も詳細に確認しましょう。

完全に免除されるケースは多くないかもしれませんが、交渉によって一部の工事が不要になる可能性は十分にあります。

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まとめ

原状回復工事とは、賃貸物件退去時に借主が物件を元の状態に戻すことを指しますが、その工事費用の負担区分や範囲は契約内容によって大きく異なります。

A工事(オーナーが費用負担・業者選定する躯体・共用部工事)、B工事(借主が費用負担しオーナー指定業者が行う設備関連工事)、C工事(借主が費用負担・業者選定する内装工事)の区分を理解し、賃貸借契約書を確認することが重要です。

適正な費用相場を把握し、複数業者から見積もりを取得してチェックすることで、不必要な出費を抑えられます。

また、退去日から逆算したスケジュール管理を行い、繁忙期を避けるなどの工夫も工事費削減に効果的です。

事前に管理会社との打ち合わせや写真撮影などの証拠確保を行い、居抜き交渉など柔軟な選択肢も検討することで、工事費の削減につながり、トラブルなく満足度の高い原状回復を実現できます。

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