オフィス・事務所の原状回復義務はどこまで?借主の範囲やガイドラインについて解説

2019年07月02日(火)

住宅用賃貸とオフィス・事務所用賃貸では、義務付けられている原状回復の範囲が異なります。
このルールを知らず、住宅用のマンションやアパートを借りる感覚でオフィスや事務所を借り、退去時に原状回復の範囲で賃貸人とトラブルになるケースも少なくないようです。
今回はオフィス・事務所の借主の原状回復義務の範囲や、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について解説します。
オフィス・事務所用賃貸の原状回復トラブルを未然に防ぐためにも、賃貸オフィス・事務所の原状回復のルールを理解しておきましょう。

賃貸オフィス・事務所の原状回復と一般の居住用住宅の原状回復の違い

一般の居住用住宅での原状回復の範囲

貸主の負担 賃借人の負担

経年劣化や通常使用による損耗

・日照などによる壁の変色
・設備の交換やリフォーム
・自然災害による破損
・下地ボードの張替えが必要のない程度の画びょう穴
・冷蔵庫やテレビなどによる後部壁面の黒ずみ
・家具設置による床やカーペットのへこみや設置跡

通常の使用を超える損傷

・壁のタバコのヤニ汚れ
・下地ボードの張替えが必要な画びょう穴
・結露を放置したことで発生したカビやシミ
・借主の不注意による壁や床の水漏れや色落ち
・煙草による焦げ跡
・家具を移動したときになどに生じた壁や床の引っかきキズ
・水回りの水垢、カビ等
・ガスコンロや換気扇の油汚れ

居住用住宅の場合、生活をしていく上で自然と起こりうる通常損耗や月日の経過による経年劣化を補修するための費用は賃借人に請求されず、賃貸人の負担となります。ただし、上表に記載した通常の使用を超える損耗の補修については、原状回復の費用を負担する義務が発生します。

オフィス・事務所での原状回復の範囲

貸主の負担 賃借人の負担

経年劣化や通常損耗

※ただし、契約書の原状回復特約に記載がある場合はこの限りではない

契約書の原状回復特約に記載された範囲

・テナント内のパーテーションの撤去
・カーペットの貼り替え
・壁クロス(壁紙)の張替え、塗装
・天井ボードの回復、補修、交換
・配線も含む照明の撤去、回復、清掃、管球の交換
・床下配線の撤去
・配電盤の変更の回復
・窓、ブラインドの回復、清掃

オフィス・事務所の原状回復は、基本的に賃借人が100パーセント負担することが義務づけられています。たとえば契約締結時に事務所がスケルトン状態であれば、移転時や退去時には元のスケルトン状態に戻す必要があります。通常使用や経年劣化による損耗も含めてすべて、借りた時点の状態にまで復旧しなければなりません。

オフィスの原状回復範囲は、特約による定義が重要な意味をもつ

平成12年12月27日の東京高裁の判決で、オフィスビルの原状回復工事の費用は賃借人の使用方法によって大きく異なり、損耗の状況によって相当な高額となる可能性があるため、賃貸人の負担とすることが相当とされています。

また、住宅用賃貸では賃借人と賃貸人との間に明確な力関係が存在する(立場の弱い賃借人が保護される)のに対し、オフィス・事務所用賃貸は賃貸人も賃借人も事業者であることから、両者の力関係に大きな差がないと考えられるため、原状回復工事の範囲は契約内容に基づくことが妥当であるとされています。

したがって、オフィス・事務所用賃貸の原状回復範囲は、特約による定義が重要な意味を持ちます。特約に通常使用や経年劣化と見られる損耗も原状回復範囲と定義することで、賃貸人に原状回復の義務を負わせることができるのです。

オフィス・事務所の原状回復が借主負担になる理由

住宅用賃貸の場合、賃借人によって住居の使用方法は大きく変わらず、どの程度の損耗や劣化があるのかの検討がつきやすいため、賃料にあらかじめ通常損耗や経年劣化の原状回復費用が含まれています。

しかし、オフィス・事務所用賃貸の場合は賃貸人の事業規模や業種によって使用方法が大きく変わります。

事業用は業種により損耗のレベルが大きく異なることや、内装・レイアウトの変更も賃貸人側で行うことがほとんど。住居用と違ってどの程度の損耗や劣化があるのかの予想がつきにくいため、あらかじめ賃料に原状回復費用を組み込むことができません。

したがって、通常損耗や経年劣化のレベルを予想できないことから、オフィス・事務所用賃貸の原状回復費用は賃貸人側の100%負担、並びに内装・レイアウトをすべて元通りにするように契約書に特約を設けているのです。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」はオフィスの原状回復にも適用される?

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸人と賃借人の原状回復トラブルの未然防止と円滑な解決を図るため、原状回復の費用負担の一般的な基準を示しています。

ただし、ガイドラインはあくまでも住宅用賃貸に適用されるもので、オフィス・事務所用賃貸には基本的に適用されません。前述したとおり、オフィス・事務所用賃貸の場合は契約書の原状回復に関する特約が効力を持つからです。

退去時になって「原状回復の範囲について知らなかった!」とならないように、契約書の原状回復特約には必ず目を通すようにしましょう。

マンションオフィスなど、小規模な事務所は例外となることも

原状回復ガイドラインはオフィス・事務所用賃貸に適用されませんが、例外的にマンションオフィスなどの小規模な事務所の場合は、住宅用賃貸と変わらないという前提のもと、ガイドラインが適用された判例があります。

マンションオフィスやSOHO物件であれば、たとえ事業用に借りたとしても、使用方法も損耗も一般的な住宅用物件と大きな相違はありません。物件を退去するときに通常損耗や経年劣化の補修も負担するよう求められたときは、ガイドラインに沿って基本的なルールを確認されることをおすすめします。

状回復工事にかかる期間の目安

オフィス・事務所の原状回復工事の期間は、50坪~100坪で2週間~3週間が目安です。マンションオフィスやSOHO物件など小規模事務所の場合は1週間程度を見積もっておくと良いでしょう。

原状回復工事がスケルトン状態に戻すまでか、内装を仕上げた状態にするかで必要な期間が変わってきます。内装を仕上げる場合には、1ヶ月以上かかる場合もあるため、実際の原状回復の工期に注意して退去日までのスケジュールを立てることが必要です。

まとめ

オフィス・事務所の原状回復については、契約書の原状回復に関する特約が大きな意味を持ちます。原状回復ガイドラインや消費者契約法も、事業用賃貸では適用されないことに注意が必要です。

ビルオーナーや管理会社との間で原状回復工事に関するトラブルを未然に防ぐためも、事前に契約内容を確認しておきましょう。

オフィス・事務所の原状回復は、事業者様にとって大きな負担となる場合もあります。そのため、適正価格で品質の高い原状回復工事を提供する業者選びが重要です。

当社はお見積りのご連絡をいただきましたら、無料のお見積り即時対応、適正価格で原状回復工事をご提供いたします。

「退去まで時間が限られている」「なるべくコストを抑えたい」という方もおまかせください!

東京・神奈川・千葉を中心に年間1,000件以上の施工実績を持つ当社が、企業のご担当者様、会社経営者様の原状回復に関するお悩みにスピーディーに信用第一の施工で真摯にお応えします。

まずはお電話かメールにてお気軽にご相談ください。

  |